俺の秋はGOING UNDER GROUNDに任せることにしている

(この記事は2017年9月のMash-Room Magazineの記事をリライト・追記したものです)

風と稲穂の指定席へ座る
上映間近の茜空
半袖じゃちょっと寒くなってきたな
待ちぼうけいつも僕のほうだ

GOING UNDER GROUND-トワイライト

みんなも「この季節はこれを聞く!」なんて音楽があるでしょう。ない人は作るといいよ。1年がとても豊かになるから。
僕の場合、7月はbloodthirsty buchersの『7月』だし、8月はRIP SLYMEの『楽園ベイベー』だし

そんで9月はこのGOING UNDER GROUND(以下GUG)の『トワイライト』なわけなんです。
今日はGUGラブな話をいっぱいしようと思ってますよろしくお願いします。
(2017年当時は9月が「半袖じゃちょっと寒くなってきたな」なのに2023年はやっと10月の今にこれを聞きたくなる、気候変動なのか時の流れを感じますね)

GUG、バンドとしては中堅いやそれ以上のキャリアのバンドで、ブーム期で言うならアジカンエルレバンプなんかと一緒。
みんながアジカンエルレバンプを聞いていた中、僕が一番入れ込んでいたのはGUG。中学からずっと聞いてる。

中学時代のクソ田舎少年だった自分が入り込めたのにも理由があって、今思うとこのバンドの歌詞は全部「童貞の田舎少年が初恋した」とか「初めて地元を離れた」とかなんかもう青臭くて聞く人によっては酸っぱさすら感じるほどの青があるからだった。


出会い

初めてGUGを知ったのはこの映像

今思うと「涙のち三ツ矢サイダー」の入れ方が強引でウケる。

このCMの右下の「ゴーイングアンダーグラウンド」って書いてあるのをメモしてお母さんにお願いして車で連れてってもらったGEOでアルバムをレンタルして聞いた。ちょうどアルバムレンタルがその店で始まったくらいじゃなかったかな。
もう、わかるでしょ?恐ろしいまであるほどの爽やかさ。
サンボマスター山口氏が「情熱青春メガネデブ」ならGUG松本氏は「爽やか田舎青春メガネデブ」だったワケよ。ちなみにどちらも歌詞は童貞っぽいです。いいおっさんですけどどっちも。

あと有名な曲つったらこれかな?ユビートとかにも入ってたし。
(ユビートを引き合いに出してるのも2017年って感じ)

ちなみにこの曲、キーボードが脱退して最初のシングル曲なんだけど思いっきりピアノ入っててまだバンド歴長くない俺はビックリしました。サポートって概念がわかんなくて。

僕が使ってるギターにRickenbacker360ってあって、初めて手にしたとき「うわGUGの松本さんと同じリッケンの黒だ!(松本氏は330だけど)」とテンション上がった。
当時はくっらい歌詞にシャウトとノイズを乗せて歌ってたものだから、周りからしたら「なんでお前がそんな爽やかバンドを?」となってた。
あとからLOSTAGEとRadioheadの憧れで〜なんてそれっぽいルーツでリッケンを選んだみたいなことを言った記憶があるけど、ファーストインプレッションはGUG松本。
これで俺も爽やかにローコードをクランチでかき鳴らして歌うと思った。

まあつまりそんなに入れ込んでるバンドなんですよ。GUGは。

今は?(2017年当時)

昔聞いていたバンドを今でも全部追わなくなった、なんてことはあっても不思議なことじゃないと思うんですがどうですかね。
僕はGUGを新曲を必ず聞くバンドにはならなくなった。昔のアルバムを繰り返し聞くバンドになってた。
いくら中学の俺が好きだったとしても今の自分がやりたい&聞きたい音楽のド真ん中ではなくなったなとちょっと自分の冷たさに驚いた。

そんでまぁ9月になったのでトワイライトを聴き、「そういや今この人たちはどうなったんだろう」と思ったわけです。

老けたな〜〜〜〜17の俺も25(当時)になるんだしそうなるよな〜
童貞爽やかボイスは健在。

しかし一番驚いたのは支持率の低さ。
これ5月に発表された曲なんだけど、再生数は1万ちょっと。
べらぼうに少ない。

2年前(つまり2015年)、石川県のロックフェス「ミリオンロックフェス」に来てたので見に行ったんですけど無料ステージ(結構小さい)で集客もほどほどだったのを思い出した。
キャリアはアジカンバンプくらいあるのに、この支持率の低迷加減。ファンとしては切ないし悲しい。

曲こんなにいいのに。

ポップなロックの進行を、松本氏の爽やかボイスを活かすような構成で、歌モノとしてとてもいい出来になってる。と今なら分析できる。当時は「なんかいいな」って思ってたけど今ならわかる。
ギターが邪魔しないし、ポップソングとして良好な音してる。
歌詞もいつまでたっても青くて、逆にそんなバンドはいないんじゃないか?back numberだって失恋引きずりバンドだったのが今では「君を大切にするよ」を色んな方式で歌うバンドになったし。

センチメンタルエクスプレスGUG

僕はGUGを聞くと、あの秋の乾いた稲穂の匂いを思い出します。っていうか香る、どっかから香る。

すげえ切なくなる。駅で電車を待つ初恋のあの人の横顔とか、弟と喧嘩したときに家にいるのが気まずくて外に出て庭で見た空とか、初めて隣の市に1人で電車で行ったときに降りた駅のホームとか、色んなものが頭に浮かぶ。

秋の郷愁に、GOING UNDER GROUNDなんていかがでしょうか。そんな記事でした。

今は?(2023年)

と、ここまでが2017年の僕の記事です。
中学3年の自分も、25歳の自分も、2023年31歳の自分も、GUGを秋に聞こうとしているのが自分で言うのもなんだけどとても素敵だな。
ずっと好きなバンドで、これからも応援したいバンドです。

と、言いつつ。
じゃあ2017年〜2023年の動きを積極的に追っていたかと言われればそれは…
正直、やっぱり昔から好きなアルバムを繰り返し聞くに至っている。
といわけで、今回も最新アルバムを聞いてレビューしてみよう。

1,潮騒
丁寧で澄んだアルペジオから始まる一曲。1バース歌い終わったあとに展開していくかと思いきやそのままアルペジオにコーラスが重なって静かに展開していく。サビ展開と思わしきところもあえての大きな広がりを見せるわけではなく、大人に、澄んだアルペジオ。不思議とこれはこれでワクワクする。っていうかちょっとCureっぽくないか?洋楽臭さ増してる。

2,ナイトフライト
跳ねたリズムでズンズン進んでいく。こういう曲だと松本氏の声が生きる気がする。この曲もちょっとオールドロックっぽいところはあるけど、松本氏のメロディとスッキリ聞こえる歌詞で日本のバンドだと実感できる感覚がある。奥田民生直系みたいなとこあるしな。
この曲もギターにコーラスのエフェクターかけてる感じする。コーラスハマってる?

3,昼呑み
おじさんタイトル。ベロにぶどうのキャンディー乗せてた少年も今はピータン豆腐ですよ。
突然の符点ディレイに伸びやかギター。歌い方も声も変わってないから少年の感覚で考えちゃうけどお酒の歌詞でもあるという混乱が俺は若干ある君はどう?おじさん歌詞だけど「君としたいこと考えてる」がすごく純粋でキュンとくるから不思議。

4,moon dance
え!?!?!???!?ドリームポップ!???!?GUGが!?!??!
ドリームポップとかインディーロックみたいなことしてる、てかニューウェーブでもある?もしかしてこれムーンライダーズ意識なのか?あんまり詳しくないので詳しい人教えてください。
ここもめっちゃcureっぽい、いやSmithか…?キュアとかスミス感がすごい。
もしかしてこれからのGUGはそういう路線も考えてるのか?

5,ヒロトとマーシー
と、思ったら純な日本語ロック。
歌いまわしもめちゃくちゃ今までのGUGっぽい。
ヒロトとマーシーはヒーローだもんなわかるよ。

6,トンネルボーイ
ブギウギ!?!??!??!今度はブギウギ!?!?
っていうんですかね。めちゃくちゃオールドロック。
でも全然ありえなくないというか、似合うね。これは誰が歌ってる?石原さんか?
ここまででわかったけどかなり自由。GUGは今回自由。本当にパブリックイメージなしに自分たちが面白いと思ったものを演奏している感じがする。
しかもここまでのキャリアで、なんか肩の力が抜けてるというか、強者の遊びでもある。

7,momotaro
桃太郎…?と思ったらカントリーかい!!!!またもやジャンル転換。今回のアルバム、めちゃくちゃジャンルがバラバラ。一枚で色々楽しめるな。
歌詞が桃太郎なのは、なんか、これも強者の遊び感というか。ちゃんといい歌詞を書いてきた人が私小説的な感覚から抜け出した開放感みたいなのがある。でもしっかり「旅立ち」みたいな部分があるのがいいね。GUGらしさでもある。

8,望郷東京2020
フォーク…???
なんかミックスも今までと違う、テープレコードみたいな感じもする。
2020年ということは緊急事態宣言時の気持ちとかもあるのだろうか?
裏の変に空間的な音はなんだ…?こんな音使いするのか…?サイケデリックだ…
「1日中ぶらぶらAMラジオ」が、もし別の人が歌ってたら「嘘つくなし」ってなるが松本氏が歌ってたらなんか本当だろうなって思ってしまう。フォークなのも相まって。
後半、急に分厚くなる。さてはビリー・アイリッシュ好きだな…?
ドラムも歪んでるし、ギターも歪みすぎて潰れてる。なのにテープで録ったような素朴なボーカルはそばにいるのが不思議。やはり松本氏のボーカルのおかげ、もしくは"せい" でジャンルがブレてない感じもある。

9,ビーチパーティー
シューゲか?みたいな鋭いギターからのイントロ。これもコーラスかかってる。リバーブも。もしかしてシューゲとかやっぱそっちいきたい?
「ビーチパーティー」なのにずっしりとしてる。音が重いわけではなく、一音一音噛み締めている。POGも使ってる?みたいなオルガンギターみたいなアルペジオ。こういうGUGは初めてだ…やはり今作はすごく思い思いに曲を作ってるし、なんでもやってやろうという気概を感じる。

10,根無草のランデヴー
シンセ始まり、ちょっと前のEDMみたいな。やけにパン振りしてるボーカル。ビョークか?今度は。なんでボーカルがずっと左なんだ?
急にチルくなる2番。コーラス、ナカザ以外もしてるな。ナカザが一番上手いで止まってる印象だったけど。
割りと一定のテンションのこの曲で〆。

まとめ
このGUGのアルバム、かなり教科書的なものを感じます。
いろんなジャンルに手出してて、やっぱりキャリアもあるから安定感もあるから聞けるし。
日本語ロックから一歩出て洋楽らしさも取り入れていてかつ、日本語の歌が楽しめる。
結構オススメできるし良いアルバムだなと思います。
あと大人が遊んでる感じみたいなの、俺は好きなんだよね。もちろん出来の良いものを作ろうと本気でやってるんだけど、パブリックイメージを取っ払って好きなものや出したい音を感じて出してる感じ。
ロックバンドのアルバムとして良いアルバムでした。

ちょっとした寂しさも感じるので、「潮騒」「ビーチパーティー」みたいなのがありつつもやっぱり僕にとってGOING UNDER GROUNDは秋のバンドだなって感じました。

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