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省エネ基準の計算方法:2021年4月から計算方法が変わりました

省エネ基準外皮平均熱貫流率(UA値)平均日射熱取得率(ηA値)の計算方法が2021年4月から一部変更になりました。(技術情報 Ver.3系)

なお、旧計算法(技術情報 Ver.2系)は経過措置として2022年3月まで使用することができます。

計算に関する主な変更点は以下の二つです。
窓の取得日射熱補正係数の計算方法が変更になりました。

また、土間床・基礎断熱の計算方法が変更になりました。

取得日射熱補正係数

従来は詳細計算法と簡略計算法、定数がありましたが、新計算方法では詳細計算法が削除され簡略計算方法と定数となりました。
また、日除け効果係数斜入射特性から求める方法が追加されました。

詳細計算法が削除されたことにより、取得日射熱補正係数は安全側で計算されることになるため、基準をクリアしづらくなります。
日除け効果係数と斜入射特性から計算するためには、日除け効果係数を専用のホームページでデータを入力して計算しなければなりません。
これを一つ一つの窓に対して行うのは手間と時間がかかります。

土間床・基礎断熱

土間床・基礎断熱の計算方法は大幅に変更になりました。
従来土間床・基礎断熱は一つの部位として計算していましたが、基礎壁土間床外周部に分けて計算します。
また、従来日射熱取得率は計算する必要はありませんでしたが、基礎壁は日射熱取得率を考慮しなければなりません。
(土間床外周部は日射は考慮する必要はありません)

土間床外周部の線熱貫流率計算方法は簡略化されているため、条件によっては安全側に計算され、基準をクリアしづらくなる可能性があります。
土間床・基礎断熱は当面従来の計算方法が使用できます。
これは現在のところ経過措置とは異なり期限は設けられておりません。
従来の計算方法の方が様々な断熱方法などに対応できるため、条件にもよりますが従来の計算方法の方が有利に計算できる可能性があります。

その他の変更点

熱貫流率補正法(簡略計算法)
簡易な熱貫流率の計算方法である熱貫流率補正法が削除されました。

面積比率法
面積比率法で熱貫流率を計算する場合、以下の面積比率が削除されました。
・軸組構法において柱・間柱間に断熱し付加断熱する場合の外壁の面積比率
・枠組壁工法においてたて枠間に断熱し付加断熱する場合の外壁の面積比率
・木造においてたるき間に断熱し付加断熱(横下地)する場合の屋根の面積比率

窓・ドアの熱貫流率
省エネ基準のテキストにあった窓・ドアの熱貫流率一覧が変更になりました。

なぜこの時期に計算方法を変更?

2021年4月から省エネ性能の説明義務制度が始まりましたが、これに合わせて省エネ基準の計算方法も変更になりました。
建築士は説明義務制度の対応だけでも大きな負担がかかるのに、なぜこの時期に計算方法まで変更したのでしょうか。

以前から省エネ基準の計算はあまり行われておらず、建築士でも計算に慣れていない方が多くいらっしゃいます。
計算方法が変更になれば一から勉強しなければなりませんので、建築士の方たちの負担はさらに大きくなります。

今回の計算方法の主の変更点は従来あった詳細計算法の削除です。
単に詳細計算法を削除されてしまえば、計算は安全側になってしまいますので、基準はクリアしづらくなります。
簡易に計算する目的のためにモデル住宅法などが用意されているわけですから、標準計算の詳細計算法を削除する必要があるのかは疑問です。

それとも計算方法の変更は、基準値を厳しくしなくても安全側に計算することで、実質的な省エネ性能アップを狙っているのでしょうか。

個人的な意見になりますが、経過措置の2022年3月までは従来の計算方法で計算した方がいいのではないかと思っています。


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