遂行力のお話――バーンと橋と掌
皆様お久し振りです、舞台照夫です。
今回、知人と少し論争がありました。その議題が「バーンのビート対策は罠の橋か跳ね返す掌か」でした。
私は掌派なのですが、今回はその時の話を思い出しながら、なぜ私が掌派なのかをお話ししたいと思います。
デッキの遂行力
デッキには目標があります。最も大きな目標は勝利ですが、そこへ進むためのカードやプレイングについて、今回は仮に「遂行力」と呼ばせていただきます。
バーンでいえば「生物と火力で20点削る」。そのための遂行力として大量の火力とライフを削ることに特化した生物を詰め込んでいます。
トロンでいえば「ウルザランドを集め高マナカードをたたきつける」。そのために土地をサーチするカードとキャントリファクト、そして相手にたたきつける巨大な脅威が投入されています。
ドレッジでいえば「墓地からのアクションで殺す」。そのために最大限の発掘カードとルーティング、墓地で機能するカードで構成されています。
選択肢の多いデッキにも同じことは言えると思います。ドルイドコンボはサーチする生物の選択肢が多いデッキですが、プランとしては「コンボを決める」「生物によるビートダウン」の二択ではないでしょうか。ルートの多さに定評のある鱗親和も、大きなプランとして「+1/+1カウンターを利用したビートダウン」が存在し、小さなプランに毒殺やバリスタが存在するといった構成なのだと思います。
また、石鍛冶が強いのは、パッケージ採用することで「殴打頭蓋によるビートダウン」という目標と遂行力をデッキ内に付け足しできるからでもあります。
デッキの遂行力は不変のものではなく、対戦相手によって変動します。
トロンはその土地を探すという行動に時間をとられるためバーンに焼き切られることが多いです。
ドレッジは大型生物や豪快な追放カードの多いトロンを苦手としています。
バーンはライフを削るのが至上命題であり、対でのようにライフを回復するドレッジは天敵とも言えます。
相手によって遂行力が上下することを「相性」といいます。今さらですね。
環境に存在するデッキには遂行力しか採用されていないかというとそうではありません。除去やカウンターなどの相手の遂行力を奪うカードも存在し、また相手のカードを予想したケアという要素も出てきます。それが相性のみによるゲーム展開を変化させていきます。しかし、これはあくまで相手の減速、こちらの目標に近づく要素ではありません。過大評価すると自身の遂行力が薄まってしまうことは留意しておかなければいけません。逆に言えば、遂行力の希釈を最低限にしつつ様々な相手の妨害ができるからこそ、モード付呪文は強いとも言えます。
もちろんGB系や青白などのコントロールは存在しますが、これらのデッキは遂行力を奪うという目標が立てられています。そのようなデッキにおいては妨害手段こそが遂行力なのです。
自身の目的が勝利である以上、遂行は何にもまして優先されます。デッキは目標とした動きを押し付けるのが最も強い使い方であり、妨害とは相手の遂行力をこちらの遂行力とペイオフで削っていくことなのです。
プレイと遂行力
バーンを使うとき、生物を焼くか本体を焼くか、といった選択肢はよく出てきます。石鍛冶が次のターン殴打頭蓋を踏み倒して絆魂パンチが始まる、ドルイドと侍臣が揃い無限マナが出る、この攻撃が通ればライフが0になってしまう・・・
様々な場面で生物を焼かなければいけない瞬間が訪れますが、「大体」の場面では本体を焼くほうがいいです。
では、なぜ大体の場面で本体を焼くことが正解といえるのか。それは「バーンがそういうデッキだから」です。
これでは適当過ぎますので説明します。先ほども言ったように、バーンには大量の火力がデッキに投入されています。その基準となる稲妻は「any target」、つまり好きな場所に打ち込めるカードです。ライフを削ってもよし、生物を焼いてもよし、PWを焼いてもよし、と非常に選択肢が多い良カードです。
しかし、バーンというデッキ単位で考えたとき、バーンとは「生物と火力で20点削る」という目標のもとに組まれています。その目標への遂行力として組み込まれている以上、そのように使うのがこのデッキにおける稲妻の最も強い使い方なのです。
選択肢が多いデッキでも同じことは言えると思います。ドルイドコンボのサーチカードはマナさえあればなんでも持ってくることができます。秋の騎士などのカードで柔軟な対応はできますが、結局最も強い動きは「コンボの遂行」「ビートの完遂」という目標に向かった使い方なのです。
目標とした動きを押し付けるのが最も強い動きである以上、乗り手も常にそれを意識してプレイしなければいけません。除去やケアはあくまで相手の減速であり、デッキの目標ではないことに留意しましょう。
サイドボードと遂行力
さて、なぜここまでだらだら長々と今更なことを語ってきたのかといいますと、私たちはサイド構築、そしてサイドボーディングに際しこれらのことを忘れがちになるということです。
サイドボーディングとは、2戦目以降メインの60枚とサイドの15枚を好きに組み替える、たったこれだけの行為です。しかし、たったこれだけの行為がMTGにおいて最も奥が深い要素のひとつと言われています。その理由は、サイドボーディングとは75枚のカードを使ったデッキ構築だからです。
仮にこちらはバーンを使っており、そして対戦相手はドレッジしかいないとわかっているとしましょう。私はサイドボードに黒力戦4安らかなる眠り4流刑への道4トーモッドの墓所3を入れました。これで私の勝ちです。
とはならないことはご理解いただけると思います。それはなぜでしょう。
サイドボーディングに際し、サイドインするカードはもちろん相手に有効なものでしょう。対してサイドアウトするカードは相手にあまり有効でないカードです。
しかし、サイドアウトするカードは確かにメインボードに存在し、確固たる役割を持ってデッキに採用されているはずなのです。それを抜くということは、遂行力の希釈につながると言えます。
もちろん対策は大切です。相手の減速によってこちらの遂行が間に合うゲームも間違いなくあるでしょう。しかし、手段と目的を取り違えてはいけません。あくまで目標は勝利であり、最も強固な勝ち筋はメインデッキにこそ存在するのです。
さて、ここでタイトルにある罠の橋と跳ね返す掌を比較してみましょう。あくまでこの比較はバーンにとってであるということをご留意ください。
・罠の橋
自分の手札枚数を参照し、その枚数以上のパワーを持つ生物は攻撃できなくなるアーティファクトです。
3マナとモダンでは少々重いですが影響力は絶大で、相手の生物全体に影響を及ぼすことが可能です。また、手札が枯渇しがちなバーンとの相性は良好で、毎ターン火力を吐き出し続ければロック状態を維持できます。
有効な相手は部族系や呪禁オーラなど生物で殴るデッキ全般です。縦に伸びる生物や横に広がる展開にも対処できます。また、原始のタイタンや引き裂かれし永劫、エムラクールの攻撃で〆るコンボにもある程度有効です。
しかし、バーンにおいては3マナというのがとにかく重く、引き込んでもそれを設置できるかがわかりません。また、アーティファクトゆえに割られやすく、低パワーで殴る、こちらの手札を増やす、火力でライフを詰めるなどの抜け道も存在します。さらに言えば、相手の盤面やライフには一切触れられないので相手は場の脅威を増やし続けながら橋の突破を狙えます。
総じて、強烈な減速を押し付けることが可能ですが置けば勝ちというカードではない、と言えるでしょう。
・跳ね返す掌
赤白で相手の発生源を選び、それからの本体ダメージを軽減、同値のダメージを相手本体に与えるインスタントです。
こちらのライフを守る性質上、追加の稲妻のらせんのような働きをします。また、相手の威力によって与えるダメージが変わるので、2マナ4~6点火力になることはざらにあります。
さらにこのカードは対象をとらず解決時に選ぶという処理をするため、プロテクションや呪禁に影響されません。さらに言えば選ぶのは発生源なので、生物以外にも本体火力などに対応できます。
しかし、2マナと軽量ながら構えなければ使えず、相手の動きに対応するカードのため能動的に使うことはできません。また、縦に育った生物には効果的ですが、横に広がった軍団には対処しきれません。
こちらはダメージにより勝ちに行けますが、より盤面を選び能動的になる、といった評価になります。
どちらもビートダウンデッキに対しサイドインされ、火力で焼けない中型以降の生物に対して効果的となるサイドです。ここではデッキの遂行力という点で見ていきます。
罠の橋は影響力が大きいのですが、3マナと重くダメージを与えられません。デッキの遂行力とはなりえないのです。
対して跳ね返す掌は、一回きりではありますが相手の攻撃を受け止めかつダメージを与えられます。つまり、デッキの遂行力としてカウントできるのです。
すべてのデッキはメインの動きが最強であり、サイドとはデッキを薄めて妨害をとる行動とすると、妨害になりつつ遂行力になるカードはとても有用なのです。
もちろん環境によってどちらが正解かは変わりますが、遂行力という観点から私は跳ね返す掌推しです。
終わりに
長々だらだらと語ってしまいましたが、言いたいことをまとめると
・デッキの目標と遂行力を理解して構築しよう
・デッキの目標に沿ったプレイをしよう
・デッキの遂行力を損なわないサイドをしよう
これだけです。「ここはどうなんだ」「こんな考えもある」「罠橋のほうが強い」「動画でプレミしてましたよ」などなど、なにかあればお気軽にお声がけください。
それではこのあたりで失礼します。それでは。
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