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中島らも「永遠も半ばを過ぎて」について
「ボクたちはみんな大人になれなかった」の作者である燃え殻さんは、ツイッターで時折り中島らもさんについて呟く。
中島らもさんの小説「永遠も半ばを過ぎて」をまた読み返してる。グダッとテーブルに崩れながら読んでても許してくれる喫茶店にまた来ている。どんなビジネス書よりも安心をくれる小説を一冊もってると結構、不安をやり過ごせたりする
— 燃え殻 (@Pirate_Radio_) August 19, 2016
中島らもさんが残した言葉についても触れている。
中島らもさんが自殺した友人に語った『どんなにぼろきれのような人生であっても一日くらい楽しい事があってそれを胸に生きていけるもんだ』て言葉と字多丸さんの『人は皆、育てば育つほどこんなはずじゃなかったと思いながら死んでく。でも何も無いより生きた方がいいじゃないか』て言葉が突き刺さる夜
— 燃え殻 (@Pirate_Radio_) February 24, 2015
専門の最初の授業で担任は「お前らの人生にロクなことは待っていない」と言い切った。反論はなかった。その担任に言われるまでもなく自覚していたからだ。でも中島らもと大槻ケンヂを読んでた自分は彼らの「それが1日でも生きてて良かったと思う日を抱きしめて生きろ」という言葉を信じてやってこれた
— 燃え殻 (@Pirate_Radio_) July 20, 2017
ちなみに中島らもさんの言葉の全文はこれ。
ただこうして生きてきてみると
わかるのだが、
めったにはない、
何十年に一回くらいしか
ないかもしれないが、
「生きていてよかった」
と思う夜がある。
一度でもそういうことがあれば、
その思いだけがあれば、
あとはゴミクズみたいな
日々であっても生きていける。
燃え殻さんの文章が持つ「どこか気だるい、それでも前進する」感じは、中島らもさんの影響なんかな。
「永遠(とわ)も半ばを過ぎて」を読んだ
「永遠も半ばを過ぎて」を一言で言うと、美しい嘘の物語。
より詳しくいうと、写植屋の波多野、詐欺師の相川、編集者の宇井の3人がお酒と薬に溺れながら、大きな詐欺を仕掛けていく話。
波多野が薬でラリってる間に無意識で書きあげた本のタイトルが「永遠も半ばを過ぎて」。この本をヒットさせるべく、相川の嘘、宇井の編集者としての力を使うというストーリー。
この本は物語というよりも文章全体の切なく儚く美しい雰囲気を楽しむものだった。誰かがこの本を「油性ペンで書いたみたいな小説だった。」と言っているのを聞いて、よく分からんけどそうかもなと思った。
相川の取り憑かれたように没頭し、完璧を求める凄さ
相川は二流三流の詐欺師であるものの、その準備は凄まじいものがある。
詐欺をする時は、"相川"という人物を捨て、他の人物になりきる(と言うより、その人に取り憑かれる感じ)。その為に大量の知識を付けて、なりきるための準備をする。
僕のは演技じゃないんだよ。
例えば台本があって、その通りに喋れと言われても僕にはできない。
うまく言えないんだが、そいつになってしまうんだね。by 相川
自己暗示みたいな感じかな。
波多野のセリフにある、言葉に対する中島らもの思い
言葉を扱う仕事をしている波多野の言葉には、中島らもさんの言葉に対する思いが込められている(気がする)。
孤独というのは「妄想」だ。
孤独という言葉を知ってから人は孤独になったんだ。
抽象的で目に見えないものは全て、言葉があったからこそ生まれたもの。
言葉が生まれると言うことは、この世界に新しい感情、状態、種類が生まれることなのかも。
人は自分の心に名前がないことに耐えられないのだ。
そして、孤独や不幸の看板にすがりつく。
私はそんなに簡単なのはご免だ。
不定形のまま、混沌として、名をつけられずにいたい。
おれは、岩や水の方がうらやましい。
生きているってのは異様ですよ。みんな死んでるのにね。
異様だし不安だし、水のなかでもがいているような感じがする。
だから人間は言葉を造ったんですよ。
卑怯だから、人間は。
名前がないもの、分からないものに対して、言葉を持つ人間はモヤモヤする。
表現することは、人間の欠かせない能力なんだ。
手に入れることは、同時に何かを失うこと
ひとつ手に入れると、ひとつ失うのよ。
何でも手に入れる男は、鈍感なだけ。失ったことは忘れてしまう。
苦しみの感情がないのよ。わかる?
新しいものを手に入れて失ったものの埋め合わせをするという行為は、人間の弱さを表している。
苦しいこと、嫌なことがあったときにそれと向き合おうとせずに、出来るだけ見ないように、感じないようにして負の感情が去っていくのを待ってしまうのが人間の弱さ。
傷ついた痛み、大きく空いた心の穴を、僕ら人間は何かで埋め合わせながら生きていのだ。
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