DEPRESSED

溺れたい。
静寂の白波に、
皮膚も肉も骨までも拐われて。
靴だけ残して何になるのだろうか。
バラバラになった人体が、
くすんだ色をした浜に打ちあげられる頃、
誰からも忘れられしこの意識のみが
錆びた錨よろしく深海の果てまで沈みこむ。

なんて心地よい。
これが終焉の地だ。

バンドエードに浮かぶ真紅の池。
穴釣りをして首を傾げる小人。
そこには何もないのだから。

溺れたい。
息ができなくなって、
涙も出しきって、
うすら笑いを浮かべようとすると、
口から住人の深海魚が溢れた。
全てを赦し、
海面に映る満月を仰ぎたい。

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