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コーポレートガバナンスコード改定内容のポイント

「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」からの提言を踏まえコーポレートガバナンス・コードが改訂されましたね。
そこで本記事では、東京証券取引所がマーケットニュースとして記載したコーポレートガバナンス・コードの改訂の主なポイント(※下記URL)に肉付けをする方式でCGコードの改正点の概要を紹介したいと思います。

1. 取締役会の機能発揮

(1)プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討を慫慂)

・経営環境が厳しくなる中で独立社外取締役はより重要な役割を果たすべきとの意見が強まった結果、プライム市場への意向を予定する上場会社は独立社外取締役を3分の1以上選任すべきとされた。

・3分の1未満の会社はその確保が喫緊の課題となる。他方確保済みであっても、ステークホルダーの関心は独立取締役の数から質に移りつつあるため、確保済みだからよいとせず適切な人員を選任できているか、実際にどのように貢献されているかにきちんと意識を向ける必要がある、

(2)指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場企業は、独立社外取締役を委員会の過半数選任)

・指名委員会や報酬委員会の独立性や役割・範囲に疑問が投げかけられたところ、独立性を確保すべき方向に改訂することとなった。

・上記の趣旨から、プライム市場上場企業は、委員会の過半数を独立社外取締役とすべきとされ、かつ委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきとされた。

(3)経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキルと、各取締役のスキルとの対応関係の公表

・取締役会の実効性確保のため、取締役会に対し備えるべきスキルを特定し、かつそれと各取締役のスキルの対応関係の公表をすべきとされた。

・実務上はスキルマトリクスの作成をすることになっていくと考えられ、この際に単なる表だけでなくなぜそのようになっているのかについての説明も付することが好ましいと思われる。

(4)他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任

・取締役会の実効性確保の観点から、他社での経営経験も重視すべきとして、独立社外取締役には他社での経営経験を有する人材も含めるべきとされた。

・経営者不在で士業や学者等のみで構成していた上場企業は、新たな人材の確保の対応が喫緊の課題となる。

2. 企業の中核人材における多様性の確保

(1)管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定

・経営層やこれを支える管理職層においても多様性が確保される仕組みが極めて重要であるとして、多様性に関する考え方等を開示すべきことがCGコードでも要請される。

・実務上は、他社の取組みを参考にしつつ、自社の経営理念・事業特性・業種等を踏まえて策定し公表していくことになろう。

(2)多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表

・同上。

3. サステナビリティを巡る課題への取組み

(1)プライム市場上場企業において、TCFD 又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実

・投資家と企業の間のサステナビリティに関する建設的な対話を促進する観点から、サステナビリティに関する開示の強化が重要とされ、特に気候変動に関する開示が重視され、その開示の質と量をTCFDと同等レベルで充実させることが求められた。

(2)サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示

・中長期的な企業価値の向上に向けては、リスクとしてのみならず収益機会としてもサステナビリティをめぐる課題への積極的・能動的な対応の重要性が高まっていることを踏まえ、取締役会は中長期的な企業価値向上の観点からサステナビリティについて基本的な方針を策定しすべきこととされた。

・どのように開示するか方法については、自社のウェブサイト掲載等が考えられますが、フォローアップ会議の議論からすると最終的には有価証券報告書への記載まで期待されていることがうかがわれる。

4.上記以外の主な課題

(1)プライム市場に上場する「子会社」において、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置

・支配株主を有する上場会社(上場子会社)においては、少数株主の保護が懸念され少数株主を保護するためのガバナンス体制の整備が重要という指摘を受け、グループガバナンスの在り方についての項目が設けられた。

・具体的には、上場子会社は、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置すべきとされた。

・上場会社においては支配株主の存否を確認し、存在する場合には独立社外取締役の確保や委員会の設置が喫緊の課題となる。

(2)プライム市場上場企業において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進

・上場会社は、株主総会での意思決定のためのプロセス全体を建設的かつ実質的なものとすべく、株主がその権利を行使できる適切な環境の整備と情報提供の充実に取組むことが求められる。

・上記の要請から、プライム市場上場企業は、議決件行使PFを利用可能としかつ開示書類の英語版の開示・提供を行うべきとされた。英文開示が「必要とされる情報」については明らかにされていないが、招集通知と有価証券報告書を中心に検討していくことが考えられる。

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