見出し画像

ギグ・ワーカーをめぐる保障や規制の動き

コロナ禍で外出を自粛するようになってから、街中でUber Eatsの配達員をよく見かけるようになりました。また、景況が悪化する中で副業への注目も高まっており、いわゆるギグ・ワーク(自分の好きな時間・空いた時間を使って仕事を請け負い収入を得る働き方)は例外の位置付けから働き方の一形態へと移行しているような印象です。

そこで今回は、こうした働き方に関する議論を整理したいと思います。

1 厚生労働省「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」

厚生労働省は、雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会を設け、フリーランサー等の働き方についてのルールメイキングについて議論をしています。同検討会は2019年6月に中間整理を取りまとめました。

中間整理では、下記のような点が重要な論点であり、これらの点について法律等のハード・ローによる対応かガイドライン等のソフト・ローによる対応が適切かといった点も含めスピード感を持って検討を進めていくとしております。

・契約条件の明示、契約の締結・変更・終了に関するルールの明確化等
・報酬の支払確保、報酬額の適正化等
・就業条件
・紛争が生じた際の相談窓口等
・仕事が原因で負傷し又は疾病にかかった場合等の支援(セーフティネット関係)

2 日本労働法学会

2019年10月の学会で「ギグエコノミー下の就労者に対する法的保護について」というテーマでワークショップが開かれ、Uber Eatsを例にギグ・ワークに関する発表がされました。

そこでは、配達員の法的保護として、①プラットフォーム型のギグ・ワーカーについて画一的に労働者とみなす、②プラットフォーマー規制により対応する、③個別法ごとに労働者を定義するという三案を提示した上、②が適切だろうという話がされました。

3 保護・規制の在り方について

私見としても、②プラットフォーマー規制により対応する、というのが適切だろうと考えています。

ギグ・ワーカーを労基法上の労働者とみなすのは、1件いくらの単価型の受注業務であることや諾否の自由があることから無理があるでしょうし、また契約の内容等テクニカルな対応で回避できるようになってもしまうことから、適切ではないでしょう。事実上諾否の自由がないのではといった話は、契約類型の問題ではなく、依存度や地位の優越性の問題であり労働者性において重視すべき事由ではないと考えます。

また、個別法ごとに定義するとすれば働き方が多様化していくたびに漏れが出ることになり対応が追い付かず現実的ではありません。

プラットフォームの運営上、適切な保護・規制は何かという議論に注目していく必要があります。この点では上記検討会における特に契約条件の透明化とセーフティ・ネットの設計が重要になるでしょう。個人事業者と企業間で労働者性が論点となるのは、多くの場合で事業者が傷病になったケースで労災保険の適用を欲するケースになります。

このような紛争は、ギグ・ワーカー向けの保障制度ができることで回避できるのでこの点の充実を期待しております。

また、規制の在り方として、厚生労働省として職安法的な規制を目指していくのか、経済産業省で別途設計しているデジタル・プラットフォーム規制に近づけていくのかという方向性が残ると思われます。この点、縦割りの影響で、適用関係が複雑怪奇なものとなることがないように願っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?