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カツ丼について

少し前のことになります。

カツ丼についてです、カツ丼について思うことを綴りたい

というのも私は今とてもお腹が空いていて、それは昨日から続いていて、食材は冷蔵庫にあるし、少し歩けば何か食べさせてくれるお店もあるのですがそれでも私は食を絶ってきました。満腹の状態でカツ丼についての思いを表現することはとても難しいことのように思えたのです。そう、昨日から私はカツ丼について考えていて、カツ丼に想いをはせる、美味しいカツ丼を想像する、そういった行為のためには私はその妄想へ空腹を捧げなければ扉の鍵を開けることすら許されない。鰻屋さんやパン屋さんの上のアパートに住む学生さんくらいの精神状態に自分を持っていかないと。

2年です。前回カツ丼をいただくまでに約2年ほど費やしました。カツ丼屋さんは入りづらいし、トンカツ屋さんのカツ丼も私のカツ丼ではない、そう、お蕎麦屋さんのカツ丼、それが私の理想のカツ丼。食べたいと思っていてもなかなか機会を得ることができなかった。

何が違うの?

空腹を押さえつけながら私は冷静でなければならない、空腹を支配しなければ

よく道路沿いにあったりするカツ丼屋さん、ずっと昔に食べたカツ丼をよく覚えてる。おいしいんですよ、提供時間は短いし出来立てで美味しかったのです。でも私はそのカツ丼にストーリーを感じなかった。勇気を出してちょっとアウェイ感のあるお店で食すカツ丼はいささかスリリングではあったけれど、私は完食することができなかった。カツ丼が主役の店のカツ丼に、夜誰かに伝えたくなるような興奮を得られなかった。

次はトンカツ屋さんね。当然のことながら美味しい揚げたてのトンカツを頂くことができるお店です。おいしいトンカツ屋さんというのはおそらく世界でも最高クラスの美味しいものを食べさせてくれるお店だと私は思ってる。外国の友達にややレアな仕上がりの豚肉を拒絶する人が多いです。分かりますよ、怖いでしょ。私だって怖かった。でも一度ね、豚の海に沈んでごらんなさい。ジャック・マイヨールみたいに立派に意思をしっかり持って豚の海に沈んで、豚の海の底で愛を知ってきなさい。その食感、脂の甘み、豚の肉の繊維の特異な美しさ、ココ・シャネルに嗅がせてあげたいくらいにエレガントな香り、複雑な味の深さはワインの本に出てきそうな表現が当てはまりそうなくらい。ナッツのようなコクとバニラの甘い香りを舌の奥で楽しむうちにホワッと鼻から抜けるそのアロマはムスクのようで、余韻はデーツの深い柔らかさに包まれたかと思うと、練り辛子とソースのスパイシーな香りがぱっと広がって、溶け合わさった豚の肉汁と衣の脂の旨味にしっかりとした輪郭を与えてくれます。でもどうでしょう、そんな美味しいトンカツをカツ丼にしたら?

多くの美味しいトンカツ屋さんはカウンター席がメイン、ちょっと空気がパリッとしててなんだかカツ丼って食べにくいし注文しずらいのね。あくまでトンカツ屋さんはトンカツを食べるところであって、カツ丼を食べる場所じゃないのかも。トンカツが美味しくて、出汁や卵とのバランスを欠いてる印象。でもトンカツ屋さんに何回も言ったことがあるわけではないので、もっと勉強が必要。カツ丼も美味しいトンカツ屋さんもたくさんあるに違いない。

お蕎麦屋さんのカツ丼ね、最後に持ってきたのは起承転結の結の部分、昔ながらのお蕎麦やさん兼いろんな料理出しますってスタイルのお蕎麦やさんのカツ丼。そば一筋うちにゃ蕎麦しかねえょって店にはカツ丼はないかもしれない。でもだいたいのお蕎麦やさんにカツ丼はある。そして私にとって最高のカツ丼もそこにある。

お蕎麦やさんにはステキな出汁があります。お店に入ると出汁の香りが漂ってます。優しいです。その美味しい出汁をカツに程よく吸わせてさらに卵でとじます。揚げ物なのにこんなに優しいお料理、誰が考えたのか。とにかく優しいです。菜の花畑みたいに柔らかで滑らか。

お蕎麦屋さんは大好きで、機会があればどんどん行きたいけど、お蕎麦やさんだからかやっぱりおそばを作ってもらうことが多いのです。だからカツ丼に出会うにはとことん空腹でなければならないのです。何人かで言ってシェアするのもいいかもしれないけれど、カツ丼はだれかを気にすることなく独占したい。左手で丼を包んで。蓋を開けて三つ葉でも乗ってたらきっとその日は大吉の日、あぁ、長くなった。空腹もどこかへ行ってしまった。

写真は昔撮ったトンカツ屋さんのカツ丼




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クリオネ
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