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【限りなく蓮根に近いゴボー】

「先生!今日はお料理にまつわるお話をいくつかしていただいた後で調理開始ということで、年末スペシャルですね!」

「あ、そうなん。どうでもいいけど」

「先生!聞くところによると世界のいろんな食材を食べてきたとか」

「まあね。こんな仕事してるからね。いろいろ食べることには食べたよね」

「この食材は予想に反しておいしかったってものはありますか?」

「そうね。イグアナなんかおいしかったよね」

「イグアナ!イグアナってあのトカゲみたいなやつですか?」

「そうそう。あのトカゲみたいな。あれはおいしかったなあ」

「味的にはどんな感じなんです?」

「さっぱりしてる」

「さっぱり。さっぱりとしていながら旨みもある感じですか?」

「そうね。味的には濃厚ではないけど食べ続けられる味っていうかね。限りなく鶏肉に近い味」

「あぁ、爬虫類って鶏肉っぽいっていいますよね」

「まあね、鶏肉や言っといたらいいみたいなとこはあるよね。鳥なんか時間遡ったら限りなく恐竜に近い始祖やからね。恐竜言うたら昔はトカゲかワニかって言われてたくらいやから限りなく近くはあるよね」

「先生、そのイグアナはどこで食べたんですか?」

「あれはどこやったかなー。南米、南米や。そうそう、ペルーの山奥入ったとこで、限りなくボリビアに近いペルーやったかなー」

「ボリビアとペルーの国境沿いまで探検してきたわけですね!イグアナどうやって食べたんですか?」

「現地名は知らんけどね、よくね、英語圏ではサテーって言ってね、東南アジアの串焼きみたいなん全部サテーや。スパイスやらの効いたやつ。ガイドさんがアメリカ人やったから」

「へぇー、サテーですか。初めて聞きました。串で刺して焼くんですか?」

「そやね。でも東南アジアみたいにスパイスたくさんって感じよりはシンプルに焼いてから香りの強い野菜のソースをかけて食べる感じやったね。限りなく焼き鳥に近いサテーやな」

「先生、さっきからその限りなくの言い回しなんですか?」

「え?なんのこと?」

「まあ、気付いてないならいいんですけど」

「そうそう、3日くらいかけて山奥まで入って、帰りは大雨やらなんやらで1週間くらいかかって。撮影クルーもみんな汚い格好でね!ああいった思い出もいいものだよね!」

「それは大変でしたね!」

「ほんと大変でこれほんまに帰れんのかなって!後半なんかみんな限りなく山賊に近いクルーみたいになっててね!もうすぐ海に出ますからって話になってから2日くらい彷徨ってね!飯あらへんからそこらへんの鳥やらなんやら捕まえて『これ限りなくイグアナに近い味がするー』って言いよるやつもいたりね!逆やろって!いつのまにイグアナが基準になっとんねんって!ようやく海に出た時の感動っていったらすごかった!もうね!海の色が限りなく透明に近いブルーでね!あれはほんまきれいやったなー!」

「いや、先生それそのまんまやないですか」

「ん、なんの話なん?」

「気付いてないんやったらいいですけど」

「じゃあ今日のクッキングいこか!気分乗ってきた!」

「先生お願いします!」

「今日はね、きんぴらのちょっと変わったの作ろうかと思います!」

「きんぴらおいしいですよね!日持ちもしますし常備菜にピッタリ!先生、どんなきんぴらですか?」

「今日のきんぴらはこの牛蒡!これを使って作っていこうか思います!」

「これは変わった牛蒡ですね!丸みが強いと言うか、丸いですね」

「そう、これね、蓮根そっくりなんです。こうやって切るとね、中も蓮根みたいに穴あいてて。でも味は牛蒡なんです」

「先生、これはなんて言う牛蒡なんですか?」

「なんやと思う?」

「なんやと思うって、難しいなー」

「当たらんでもいいやん!言ってみて!」

「難しいなー。蓮根みたいな牛蒡ですよね、えー」

「めぼしついとるんやろ?言ってみてよ!」

「わかりました!ヒント沢山ありましたよね!わかりました!」

「なになに?」

「限りなく蓮根に近いゴボー!!」

「は?」







【完】





本日も【スナック・クリオネ】にお越しいただいき、ありがとうございます。 席料、乾き物、氷、水道水、全て有料でございます(うふふッ) またのご来店、お待ちしております。