夏のあの日を




故郷の空が夕焼けの日に染まる。

水平線に落ちる大陽が、水面を耀かせた。


堤防を歩く君とその後ろを着いていく私。


君にとっては、住んでるだけの町で

なんの思い入れもないんだろうね。


私にとっては、大好きな町。

そして、ここは私の一番好きな場所。


君への言葉が溢れ出す。

でも、それは届かない。


届きもしない願いを私は叫ぶんだ。


………


ねぇ、あなたのことが好き。

好きなの。


○…ごめん。

 

…知ってるよ。

ずっと 前から、知ってた。

でも言わないと。

あなたはきっと遠くに行くから。


○…うん、遠くにいくよ。

 会えないくらい、ずっと遠く。


ねぇ、もしあなたが…。

違うっ、この言葉じゃない!

君には大事な人がいるんだもんね。

…いってらっしゃい。

大好きな、君。


○…ごめん。

 さようなら。

 行ってきます。


…………


あの日の夢を見た。

ただ、ただ懐かしい。

青臭くて、真っ直ぐで…。

そんな青春のあの日を夢に見たんだ。

…君は元気ですか?

あなたが愛した人に、思いは届きましたか?

午前四時の空に、そう問いかけた。


返事があるわけもなく、まだ静かな町を見た。

きっと、もう二度と会うことのない君が

どうか幸せでありますように。


            「夏のあの日を」

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