月に鯉、青い夜
春先の晩。
月は大きく真ん丸。
蒼白く照らす月明かりに、庭の池が反射する。
まるで、大きな鏡みたいだ。
縁側から、外へと降りた。
春だというのに、とても寒い。
それでも、月に魅せられた。
丸いお月様は、蠱惑的だ。
色んな気持ちを掻き乱す。
しばらく、じぃっと空を眺めた。
ぱしゃ。
池の鯉が、水音を立てる。
こちらも見なさいと、急かされたようで
なんとなく可愛らしいなと感じた。
池に水を引く水路に、手を入れてみた。
里山から流れてくるそれは
体の芯まで冷やすようで、それでいて清らかだ。
もう一度、月を見上げた。
青白い月夜が、雲ひとつなく冴え渡っている。
『月に鯉、青い夜』
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