映し空を歩く






傘を叩く手応えが無くなった。

どうやら、雨が落ちるのを止めたらしい。


少しずつ雲が薄くなって

青空が所々に顔を出し始めた。


まだ傘を差していたいのだけれど

変だと思われるだろうか。


青空を映した水溜まり。

そこに足を入れると映し空が波紋で歪んだ。


昔は勢い良く水溜まりを踏んで

水を弾いては母に怒られたな。


そんなことを思い出してしまう。

今は私の隣に誰もいない。


もう少しだけ傘を差して

水溜まりの上を歩いていこうか。


お気に入りの傘をくるりと回す。

私が歩いてきた水溜まりの空が歪んでまた戻った。


空を見上げる。

歪まない空は雲を少しだけ残しつつ

晴天に向かっていた。


そんな空に虹が掛かる。

珍しくはっきりと七色見えた。


あの上を歩いてみたい、そう思って

私は虹が映った水溜まりを踏んでみる。

   

            「映し空を歩く」

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