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TK(凛として時雨)のすすめ
TKというのは、卵かけご飯の略称ではなくて、「凛として時雨」というバンドのフロントマンのイニシャルである。
大学生のころに、TKソロの「fantastic magic」を聴いてからわたしは彼のファンである。文字通り、彼の音楽マジックに引っかかってしまったわけだ。
それからというものの、一年に何度かTKの波が訪れる。狂ったようにTKの曲を聴き漁ってしまう波が。
今は、まさにその第一波に襲われているところだ。
以下、いくつか曲を紹介したい。
アイアムアマノジャクジャックです
怒られて泣きじゃくるんです
数ヶ月まえの話になるが、朝、珍しくテレビをつけたら、子ども向け番組に似つかわしくない歪なイントロが流れ始めて、「TKみたいな曲をつくる人って他にもいるんだな〜」と思った。子どもの世話をしながらなんとはなしに眺めていると、やっぱこれTKだよな? と思い、「TK from 凛として時雨」のクレジットが画面に現れて確信に至った。なんという組み合わせ!
しかし、改めて聞くとこの曲がいい。
まさかTKの「逆さま」好きが、第一次反抗期を迎える幼児の「イヤイヤ」とこうも見事に融合するとは思わなかった。
大嫌いっていう? 好きっていう? 隠したアイラブユー
怒るかな 届くかな 逆さまで会いに来て
ママが大好きなのに、イヤイヤを言ってママを困らせてしまう子どもの葛藤が描かれているようだ。その目線の優しさよ。
これまでTK曲の優しさに幾度となく胸を打たれてはきたが、今回ばかりは特別に沁みた。
この曲を聴いたあと、ぼうっと「P.S. RED I」を聴きはじめたら、なんだか泣いてしまった。子育てで追い詰められると、頭と涙腺がおかしくなるのかもしれない。
世界を睨む不自由の女神よ
支配は失敗だ
この曲は映画「スパイダーマン:スパイダーバース」日本語吹き替え版の主題歌らしい。なにが凄いのか、知識がない自分にはよく分からないけれど、凄すぎてひたすら胸を打たれる。凄すぎて泣くことってあるんだな……。
こちらの「first death」はチェーンソーマンというアニメのために書き下ろされた曲。わたしはチェーンソーマンを見たことがないので、歌詞の意味はさっぱり分からないが、曲自体は好きなのでよく聴いている。そしてなぜか、暑い季節になると聴く頻度が増える。昨年の夏は、この曲と宮城道雄の「日蓮」ばかりを聴いて過ごしていた。
first deathは君に捧ぐから
「死ぬまで君を愛してる」とか、TKにしては珍しい歌詞の言い回しだ。もちろん、アニメの世界観によって引き出された言葉なのだろうが、TKも丸くなったんだなと感じずにはいられない。
個人的にTKの曲の中でもっとも好きなのが「moving on」である。この曲は、「彩脳」というアルバムに収録されている。
離れ離れの星たちは
透明な糸で孤独を分け合う
君は泣いていたの?
今が終わってしまうと
TKの曲って、バンドの方にしても、ソロの方にしても、なに言っているかいまいちよく分からないのに、ふしぎと共感してしまうところが魅力だと思う。
反対に、TKの感性による、おそらく誰も共感できないであろう歌詞も、それはそれで魅力的だが。
お気に入りのUFOでさ
僕の何かを買いに行こうかな
ひたすら自分の中の感覚を追い求めて作られた彼の曲たちは、言葉にし得ない感情や、心の叫び、生きることの悲しみを見事に表していて、今なおファンを魅了し続けている。
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