三歳児の問い
「どうして時間は経っちゃうの?」
最近の息子はそんなことを聞いてくる。
どうやら時の流れが解せないらしい。
ことの発端は、近所にある老朽化した一軒家を息子が目に止めたことから始まる。「どうしてあのお家は壊れているの?」
わたしは答えに詰まったけれど、難しく考えずとも、人と人との会話のように、気軽に話せばいいやとこう答えた。
「時間が経っちゃったからだよ」
その答えに納得がいったのかいってないのか、多分いってないだろうけれど、彼はなにか壊れたものを発見するたびに、どうしてこれは壊れているの? と尋ねたあと、「時間が経っちゃったから?」と問いを重ねるようになった。
しかしまだまだ。三歳児の好奇心を侮ってもらっては困る。問いは続く。ここで冒頭に至る。
「どうして時間は経っちゃうの?」
さて、これは考えたことがなかった。
どうして時間は経つのだろう。
息子がつたない言葉で主張するには、時間が経つから遊びをやめなくちゃいけない、寝なくちゃいけない、おまけに物は壊れてしまう。悪いことずくめではないか。その事実に気づいてしまった彼は、
「時間いやだ!」
とまで言い出す始末。
どうして時間は経ってしまうのか。分からないけれど、今日はネットでこんなものを見つけた。
子ども向けのページだから、漢字にルビまでふってある。残念ながら、問いの答えはここには書いていないけれど、まるで詩集の一ページにでもなりそうな、神秘的な世界が広がっているのを堪能させていただいた。
時間というのはほんとうに不思議な存在だ。
わたしは時間について考えるとき、神や仏の存在に思いを馳せる。
始まりもなく、終わりもない存在。
目には見えない存在。
けれどたしかに、そこにあるもの。
なぜ時間が経つのかは分からないけど。
時間がなければ、わたしたちはこの世にはいない。チョコも、パソコンも、ありとあらゆる命も、ここには存在しない。
そう考えるとき、時間とは、わたしたちの生みの親だとも言えるのではないか。
そんな敬虔な気持ちが生まれる。
時間が経つのはいやなこと。
かなしいこと。つらいこと。
けれど時の流れとは、とても偉大なものだよ。
大人になれば、きっとそれがわかるから。
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