見出し画像

転職することにした

 30歳になったので新しいことに挑戦しようと思い、新卒から5年務めた会社を退職し転職することにした。転職活動は大変だったが、業界の異なる多くの怜悧な方々と会話する機会があり非常に刺激を受けた。また、面接を通して自分の客観的な評価を具体的に聞け非常に有意義であった。転職活動の梗概や活動を通して感じたことについてここに記そうと思う。

 記事の最後に自分なりに感じた面接のノウハウと給与の話についてまとめる。金の話はセンシティブなため有料にしてある。いただいたお金はこの辺の本に使わせていただきます。

※サムネは飼っているうさぎ。

転職の契機

 現職で携わっている事業領域に対し、現職より自分の専門知識を活かせる可能性のある場を見つけたから、というのが大きい。次点で、一生を付き添ってくれる妻をはじめとする自分の家族にはいい暮らしをしてもらいたいので、なりふり構わず給料を上げようと考えたから。最後に、ここまで FPS に多く人生を割いてきたが、やり込みたいと思っていた Halo: Infinite が爆死し今後もうゲームを真剣にやりこむことはないと感じ、ワークライフバランスを見直そうと考えたから。

 今の会社ではソフトウエアエンジニアとして5年ほど、大学時代からの専門知識を活かしながら機能開発をしてきた。入社以来常に上司に恵まれ、大企業の割に融通無碍に仕事ができる環境を用意してもらえたと思う。そのおかげで2年目から自分が企画した機能を、自らが中心となって開発しリリースまで漕ぎ着けた。その機能は社内でかなり評価していただき、ティザーサイトまで作ってもらって、さらに国際学会・国内学会でも複数回発表する機会までいただけた。開発以外でも特許出願や、機能開発の基礎研究として有名大学と共同研究を行い、その成果がトップカンファレンスに採択されたりと(大学側が優秀すぎてたいした貢献はしてないが)、幅広い経験と実績を得られ非常に充実していた。この辺りの活動により在籍期間ほとんどに渡って高評価だったので、同世代と比較し額の差はわずかだが昇給も早かったと思う。このまま在籍してたら昇格もほぼ最速でできただろうという自信もある。

 また、業務の対象である事業領域が自分の生活と強く結びついていたため、とにかく自分ごととして考えやすく「こんなことができたらおもしろくないか」など、常に考えながら仕事ができるのは魅力的で単純に楽しかった。

 一方で、対象とする事業領域はその業界の中では限られた範囲であったため、他の領域で自分の知識が活かせるのではないか、今とは別の領域で自分の知識を活かしてもっといろいろなことができないだろうかという思いを感じていた。そしてトドメに、今年4月に世界と経済があれこれしている中、これ給料上がったのか?という誤差レベルの昇給額を見て転職するかとなった。

スケジュール

 全体の日程としては以下のようにおおよそ3ヶ月近くかかった。

4月中旬〜4月末

 転職サイト登録と、エージェントと面談しつつ応募する企業の選定。並行して履歴書・職務経歴書など応募に必要な書類の作成。

 エージェントとの面談は各会社とも2回ずつ行い、初回は自分の仕事や就きたい仕事などこちら側の好みを提示し、今後紹介してもらう仕事の方向性を決めた。自分の場合はソフトウエアエンジニアをメインとして、その他の職種も興味ありということで、専門領域さえあっていればエンジニアに囚われることがないようにと伝えた。
 2回目の面談では、紹介してもらった求人の中からどれに応募するかの相談と書類の添削を行った。

5月〜7月初旬

 GW 直前に書類を提出し、5月初旬に書類選考の結果がたくさん返ってきた。そこからエージェントとの模擬面接を皮切りに順次面接を消化していった。
 5月中旬から6月末までの平日約40日間、ほぼ毎日どこかと面接していた。

6月末〜7月中旬

 このあたりから内定が出始めた。内定が出たあとは条件面などの相談ができるオファー面談を消化していった。内定はオファー面談が終わると一定期間(たいてい一週間)内に辞退するか承諾して入社するか回答しないといけないため、第一志望の企業の面接はなるべく後ろへ後ろへ持っていった。7月中旬に第一志望の企業の内定を承諾し、入社が確定して終了。

転職エージェントと自己応募

 転職を決意してからは、まず OpenWork に登録しておもしろそうな求人を探しつつ、その企業の評価を見てどこに応募しようかと考えていた。一社、非常におもしろそうな求人があり、自分の経験も活かせそうで、会社の評価も抜群なものがあったので、まずはそこの求人に関してアドバイスを行っている転職エージェントに連絡を取ることにした。

 それ以外のエージェントにも声をかけた。2年ほど前にヘッドハンティングをしてくれたエージェントと、BIZREACH でメッセージをくれた中で一番評価の高いエージェントの2人。
 BIZREACH は企業直接のスカウト意外に様々なエージェントからも声がかかるので、エージェント・企業の両方との繋がりが BIZREACH 一社への登録だけで手に入るのは楽だった。一方あまりに多くのメッセージが来るので、逆に篩にかける面倒くささも感じた。自分の場合、エージェントと企業合わせて200件近いメッセージが飛んできてしまったので、何も考えず当時1番星が多かったエージェントにだけ返信した。

 最終的に以上の3つのエージェントに声をかけ転職活動を始めた。だが、これら3社の基本的なサービスに特に差はなかったと感じる。まず紹介される求人にほとんど差がなかった。「お、これ初めて見た」というような求人に会うのはまれ。サポート内容も書類添削、模擬面接、面接日程調整、メッセージ仲介とか一般的なもの。

 一点、自分の技術的な話や強みをエージェントがしっかり理解できるかはかなり違う。自分の場合はやや特殊な技術分野だったため、エージェントが自分の技術的な強みを理解できていたとは思えなかった。ここは結構大事で、エージェントは応募に際して企業宛に推薦文を出してくれるのだが、自分の技術がわからない人だと推薦文が頓珍漢なことになってしまう場合があるだろう。この推薦文はおそらく書類選考時に効いているので、自分をしっかり理解できるエージェントを見極めて付き合っていく方が、同じ求人に応募するにしても結果がよくなると思う。本気で通過させたいなら推薦文を自分で確認するまでしてもいいかもしれない。

 とは言うものの、自分の場合は当時第一志望だった企業を扱うエージェントが一つしかなかったので選択肢はなく、またマイナビの転職マイページがあまりに使いにくくイライラしてしょうがなかったので切ってしまうなど、暫定的な選び方で選んだ。結局、技術的な強みの理解どうのこうのでエージェントを選ぶことはなかった。

 また、OpenWork や BIZREACH など企業から直接スカウトが来て、エージェントなしで応募するいわゆる自己応募もいくつかした。こうなると日程調整やらを自分ですることになるが、別にたいした手間ではなかった。エージェントを介するメリットの1つに書類の添削や模擬面接がある。たしかに効果的だったが、応募する企業・業界に特化した感じはなかった。結局、一般的な添削と模擬面接であればエージェントは必要ないという人もいるだろうし、その場合はエージェントなしで活動しても何ら問題ないのではないかと思う。はじめての転職の場合は右も左もわからないので、最低1人と付き合ったほうがいいだろうが。

 よいエージェントとの出会いは、転職を始めたときに自分を理解してくれる人を偶然見つけられたらラッキーという程度だと思う。転職エージェントを選ぶのもメッセージのやりとりや転職の方向性の相談など時間がかかるので、エージェント選びに時間をかけるより書類と面接対策に時間を割くほうが明らかに賢い。また、エージェントはものすごくたくさんいるので、なんとなく合わないなと感じたら容赦なく切っていいと思う。

職務経歴書

 応募したい企業を決めた後は書類選考に通す職務経歴書と履歴書を書いた。

 履歴書は素直に書けばそれでよかったが、職務経歴書は勝手がわからなかったのでエージェントによる添削はかなり役立った。書き方は転職エージェントがフォーマットをくれるが、分量やどういった書き方をするかなどは添削してもらうと空気感がわかってよい。また、複数のエージェントに添削を依頼すると異なった視点での添削があり、いいとこ取りをすると洗練されると思う。

 転職活動が終わった今感じるのは、職務経歴書は相当力を入れるべきということだ。これは書類突破のためではなく面接のためだ。面接は基本的に職務経歴書に沿って進んでいく。そのため、面接でどういったことを聞いてほしいか、どういったことをアピールしたいかを計算しながら職務経歴書を書くと、面接を自分のペースで進めることができる。ある程度の質問が想定内のものになるのであらかじめ練っておいた回答を出せるようになるし、書類には書けなかったことも解答から広げれば触れられる機会も出てくる。

 さらに、この自分の聞いてほしいアピールポイントが、企業の求める人材像に一致しているとより効果的になる。質問は同じでも企業によって見ているポイントは大きく異なるので、その企業ではどのポイントを見られるか、そのポイントがなぜ重要なのかを求人票や資料から想定し、ウケそうな自分の強みについて面接で聞いてもらえるよう書類に餌をまいておくことが非常に効果的だったと思う。

 個人的には上の図の赤い範囲の項目を書くようなイメージでいた。応募した職種で求められそうなものを仮定し、それと自分の強みとの共通点+その他の強みを記載するような感覚。面接ではこの赤い範囲をベースにコミュニケーションを重ね、書類に書かなかった範囲を含めて自分をしっかり理解してもらう。

 企業の求めるものはそれぞれ異なるので、受けるすべての企業ごとに別々の書類を用意するのが理想とは思うが、あまりに変えてしまうと管理が面倒だったり、似たような質問に対する回答を洗練させていくといった面接の経験値が溜まっていかないので、やりすぎない程度でいいはず。ちなみに自分の場合は、そんなことを面接前に気付けるわけもなかったので、どの企業もすべて同じ書類を提出した。

書類選考

 最終的に13社応募した。当初応募しようと思った企業は8社ぐらいだったが、少ないと言われたのでエージェントにおすすめされるがまま提出した企業もあった。はっきり言って、断るのも申し訳ないし向こうも時間をかけてくれるので応募しないほうがいい企業もあった。その一方で、面接を通してすごく良い企業とわかることもあったので判断が難しい。

 結果11社通った。落ちた2社のうち1つは未経験業界であり経験不足が理由だった。もう1社は、修士号の種類が応募資格を満たしていないことが原因だった。向こうの求める専門領域は今の職務のメインではあるが、自分の修士号は種類が異なるため落ちたようだった。この辺はエージェントの推薦文でフォローしてもらえればなんとかなったのかもしれなくもない?となんとなく思っている。

 書類選考を通過するとすぐ一次面接の調整に入るので、内定受諾期間を揃えるためには一気に書類を応募する必要があった。中には固定日程の面接もあったりするので、応募のタイミングはしっかり考えたほうがよい。その辺含めてエージェントが調整してくれるものだと思ったらそうではなく、転職マイページで応募ボタンを押したらすぐ応募されてしまったので、日程調整に難航する企業もあったりして無駄な心労があった。

面接

 コーディングインタビューやスライドを用いた技術面接もちらほらあったが、基本は普通の面接だった。11社書類が通り平均して3次面接まであったので全部で30回ほど、内コーディングインタビュー2回、技術面接1回。最初の面接が始まった5月半ばから7月1日までの1ヶ月半の間、ほぼ週5で面接、中には1日2社面接するなどしていてかなり疲弊した。ただ、幸いなことにほとんどすべての面接がオンライン実施だったのでなんとか消化できた。これがオフライン実施だったら相当厳しかったろうと感じる。「面接は対面のほうが会社の雰囲気わかっていいな」とコロナ禍の転職活動には二の足を踏んでいたが、実際にやってみたらオンライン主流で断然よかった。ちなみにオフライン面接は2回でどちらも最終面接だった。

 面接の中身だが、普通の面接は職務経歴や将来のキャリアパス、志望動機など一般的なもので、職務経歴書と志望動機がしっかり練ってあれば特段困る質問はないと感じる。

 一般的な面接では大きく2つのポイントで応募者が見られていたと思う。1つ目は応募者の職務経歴とそれに伴う強みだ。職務経歴書に沿ってどのような仕事をしてきたか、どのように仕事で工夫を凝らしてきたかなどの質問をし、その人の持つ強みや性格・考え方が応募した職務に合っているか・十分な力を持っているかを見られたと感じる。

 先の図を使うとこのようなイメージ。職務経歴書に書いてある部分を取っ掛かりとし自分の強みの詳細を明らかにしていくことで、企業の求める基準・方向に合っているかなどがチェックされていると思う。書類を作り込んでおくと大抵の質問は想定内になるので、このあたりが経歴書に力を入れる理由となる。

 もう1つのポイントは記事の最後に記載する。このもう1つのポイントも非常に重要で、面接は両方が満たされていないと合格しないと感じた。実際、面接で唯一落ちてしまった1社からは「強みやスキルは申し分なかったがもう一方のポイントが足りていなかった」とフィードバックがあった。

 最終的に面接で落ちた企業はその1社だけだった。生まれて以来、ありとあらゆる面接に落ちたことはなかったのでかなりショックだった。ただ、やっぱ落ちることもあるのかと本命企業の前に気を引き締めるいい機会にもなった。

コーディングインタビュー

 ソフトウエアエンジニアだったのでコーディングテストやコーディングインタビューもあった。受けた職種的にすべてアルゴリズムの問題だった。宿題タイプのいつ受けてもいいので締切までにやっといてパターンと、面接官からその場で問題を言い渡されて画面共有しながら解くパターンの2つがあった。

 宿題タイプは普通に宿題。テストホスティングサイトでアルゴリズム組んで提出するだけ。Vim を使えなかったことが1番つらかった。

 コーディングインタビュー形式では面接官に問題をその場で言い渡され、ローカルの環境を画面共有しながら解いていった。アルゴリズムの問題だったので、最初に考え方を説明し、コードに落とし込んで実装していく流れで進めた。Big Tech 系のコーディングインタビューの話は聞いていたので、面接官とコミュニケーションを重ねていきながら、細かくステップを確認しコーディングしていくと思っていたのだが、自分の受けたものはそれとは違い冒頭の考え方説明だけでそれ以外はほぼだんまりだった。テスト終了後にアルゴリズムの説明をした際に通らなさそうなケースを指摘され、実際試したら通らなくて「よく一瞬で気づくなあ〜」と結果そっちのけで感心していた。指摘のあとに、なぜこのケースは通らないかの欠陥の説明、どうしてこのケースを見落としたかなどの反省とそれから学ぶべきことなどを説明して面接は終了した。コードの解答は間違っていたが結果は通過だった(ありがたい)。反省とその対策の説明がよかったのではないかと思う、たぶん。

技術面接

 作ったサービスについて資料を用意してプレゼンしろというタイプの面接もあった。幸いなことに実績としてリリース済みのサービスがあったので、内容は全く困らなかった。また、プレゼン素材として開発した機能のティザーサイト、特許、学会発表資料、論文、GitHub リポジトリなど公開済みだったので、これらを総動員して説明した。技術面接は自分の技術についてわかりやすく説明するのが主で、普段の仕事でもやることなのでだいぶ楽だった。

オファー面談

 最終面接を突破すると内定をもらえる。その後に条件などを教えてもらったり、内定をもらえたあとだから聞けるような質問(残業時間の実態とか)ができる機会として、オファー面談が設定される。

 個人的に、なぜ自分は合格したのか?というのを必ず聞くようにしていた。評価されたポイントはほぼ共通だったが、企業毎にその比重は大きく違っており、その会社の社風が反映されているようでとても興味深かった。

 求人票上は英語不問でも英語を評価してくれる企業が多かったのはちょっと意外だった。やはり英語はできるに越したことはない。

内定受諾期間

 大抵の企業はオファー面談から1週間以内に内定受諾するかどうか決めるように言ってくる。たまに、他の会社と悩んでいるなら全然待ちますよ、他に聞きたいことが出てきたら現場の人間と再度面談する機会も設定しますよ、など言っていただける企業もあって暖かい企業もあった。このあたりでも会社の印象って変わるなと思う。

 内定を辞退させていただくとき、エージェントを介しているとエージェントがいい感じにお断りを入れてくれる。ここがエージェントを介することの一番いい点だと思う。内定辞退はかなり心苦しいので、エージェントが間に挟まると気が楽になる。

総括

 こうして文章に起こして振り返ってみると、改めて大変だったという感想が1番大きい。1ヶ月以上毎日面接したのはさすがに疲弊した。ただ、結果がよかったので今となってはよい思い出。また、面接を通して出会ったたくさんの聡明な方々から高い評価をいただき、尋常でないほど自己肯定感が上がった。新しいところでも精一杯仕事をがんばっていきたい。

以下に面接のもう一つのポイントと年収について記す。

ここから先は

1,302字 / 1画像

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?