【学習コミュニティとしての地域-学校の連携・協働】

 本日(というか昨日ですね)、突如として謎の体調不良に襲われ、ひねもすベッドのお世話になっておりました。直近の2週間で、少々はっするし過ぎていたかもしれません、少しペースを落としていきたいと思います。何もせずお休みなさいするのも気が引けましたので、『学校と社会をつなぐ!これからの人づくり・学校づくり・地域づくり』(藤原文雄・生重幸恵・竹原和泉・谷口史子・森万喜子・四柳千夏子、学事出版、2021年)の簡素なレビューをお届けしようかと思い、筆を起こしてみた次第です。どれだけお役に立てるか分かりませんが。

◎本書で訴えられているメッセージ
 読みやすいように、番号を振り分けながらご説明致します(私の主観的な重要度合から判断したため、順不同)。結論から言いますと、ずばり、以下のように整理されます。
 
①子どもたちと大人(教職員、地域の方々等々)との繋がり方を見直す。もっと子どもたちを信じる。
②その上で、子どもたちに社会での自己有用感を高めてもらうような取り組みを、学校と地域とが一体的に展開することの重要性。キャリア教育、さらには教育課程の全ての学びは、地域社会とつながっていることへの認識の深化。
③学校・地域・家庭でできること/でしかできないことを、それぞれの「教育力」や「教育における役割」という観点から再整理すること。それが結果的に学校のスリム化や教職員の働き方改革にもなります。(とにかく今の日本の学校は抱え込みすぎ!何でも自分たちで自己解決しようとし、それが地域との連携・協働を妨げてきた要因にもなってきた)
④校長先生のマネジメントを確固たるものに鍛えることの重要性。「教える人」から「マネジメントする人」へと素早くスイッチする(p.154)。また教職員のマネジメント・スキル(あるいはマネージメント・シップ)を早くから養成する(管理職試験では間に合いません)。「学校・地域の一員としての自身の役割とは何か」を問い続けること。
⑤子どもたち・校長先生を含む教職員の、「問いを立て、省察する力」を高める。特に「その活動を、何のためにやるのか」ということを問い続けることを大切に。もちろん「慣習」も見直す対象にしていく。
⑥地域への参画・地域との連携を活用した活動を展開し続けるためには、教職員の「小さな成功体験」を蓄積することが重要。いっぺんにやろうとしない。(本書では「失敗」という言葉が使われていましたが、ここでこそ「未成功」という視点が活かされるかと思われます)
⑦「自律的な学校経営」(p.151)を行う上で、財政面への意識向上が不可欠→世界を見れば学校の分権化が非常に促進されている事例も多くある。一方で学校・校長の裁量権の拡張は学校間格差にも繋がりかねないため、「学校に裁量権を与えて自律性を高めつつ、現場をサポートしていく」ことの均衡を図ることが必要(p.151)。
⑧学校のみで「教える教育」から、学校を含める地域社会全体で「育む教育」へと転換する(p.62)。
⑨兎にも角にも、学校全体で「地域の多様性」「地域の実情」に対する共通理解を深めることが第一歩。
⑩子どもや大人が互いに学び合い、憩い合う「第三の場」の構築が不可欠。常に「評価」に晒されている子どもや教職員にとって、「評価からフリーになれ」「いつもオープンで、誰かがいる」「場」の形成が喫緊の課題(p.100)。
11.どのような取り組みにおいても、必ず感情を伴わせる。抽象的な理念・理論のみでは人間は動かない。(個人的所感として、新学習指導要領の着実な実施がなかなか進まないのも、この感情面での何かが欠けているから?社会的な趨勢の急激な変化については詳細な記述がなされているので、緊急性は十分伝わってくるけれども…。まだ具体的な実践例の共有が進んでいないのもかんでいる?推測でしかないが)
12.情報の共有→ミッションの共有、があってこそのアクション(p.106)。
13.教育現場と行政間、さらに教育現場内などにおける「縦割り行政」をなくしてゆく。緊急時での「縦割り」化は非常に致命的。無駄な壁は取っ払い、子どもたちの育成したい資質・能力を育てるという共通目標に向かってゆく。
14.「トップダウン効果」と「ボトムアップ効果」の調和を保ちながら、教育長が強力なリーダーシップを、教職員も確固たるマネージメントシップをとってゆく(p.152)。両方が機能している自治体は強い。
15.子どもたちも、立派な「社会的存在」である(p.36)。日本はとにかくその意識が稀薄。だから主権者教育も広まらない。フランスでは子どもは「国家のもの」すなわち「子どもはみんなで育てるもの」だという文脈が通底している(p.37)。「みんなで次世代を育成するという発想」へ(p.36)。
16.地域と学校の関係性を考える上で「子ども観」を共有することは重要。
17.教員は「「学び方」をサジェスチョンして」ナビゲーター・ファシリテーターになろう(p.67)。教員が「先に行って、子どもたちを待っている」状態を変える必要がある。(本来、学習材を創り上げるという観点から言えば、学習者も教員も平等の存在)
18.「裁量」「自由意思」「自己判断」の視点(p.85)
19.「変身資産」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット。「人生100年時代」を言葉として定着させた)の獲得という面から見ても、地域で本気で活動している大人から子どもたちが学び取ることは非常に有意義(p.83)。
20.「説明責任・支援型」→「合意・地域学校協働型」学校運営モデルへの転換(p.11)
21.空間提供・事業・コーティネート(pp.89-91)
 
 …と、大体このような感じでしょうか。
 私も学校と地域間の連携については勉強したいと思っていましたので、この本を読んで非常に様々なことを学ぶことができ嬉しかったです。ご対談なさっている先生方も、パワフルな方々ばかりで、示唆に富むご発言が多く飛び交っていて、その場に居合わせて拝聴していたかのような感覚でした。
 要は「学校がハブとなって、地域のみんなで生きる力を育んでいこう!」というメッセージがコンセプト・メッセージだったように思います。
 
 私自身の経験を振り返ってみても、小学校はかなり地域としての教育力が優れていたところだったな、と感じます。中高はそれほどでもありませんでしたので、非常に孤独感を味わっていたことを覚えています。今のご時世、孤独感や鬱状態・鬱の困難さを抱える子どもたちや大人の方々が急増していますが、このような時だからこそ、教育や学習における地域の意義を再考すべきだと痛感しながら読んでいました。
 
 批判的な事項を挟む余地はありませんが、強いて申し上げるならば、教職員の研修費用を具体的にどのように上げたら良いのか、外国の理論や考え方を日本に取り入れようとする際の留意点、エビデンスや実践例の具体的な蓄積方法、についてもう少しご言及頂きたかったかな、ということでしょうか。とは言え、「社会に開かれた教育課程」「社会とともにある学校」づくりは始まったばかりですので、今後上述の事項にも触れた書籍が登場することに期待したいと思います。
 
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