見出し画像

ダダダイアリー、主に映画。 2020/10/26ー11/11

10月26日
NHKよるドラ「彼女が成仏できない理由」全6回一気見。
幽霊となった漫画家はなぜ成仏出来ないのか。森崎ウィンの出自を生かしたミャンマー人役と高城れにのほんわかぶり。ゆるいコメディと思わせて実にビターな隠し味の効いた桑原亮子の脚本。そしてまさかの展開と結末。脇を固める出演者がどれもキャラが立っていて良いが、特に大女優白鳥玉季の貢献の高さと言ったら。ホントに末恐ろしい。トクマルシューゴの音楽も良かったし、これは予想外の名作だった。

画像1

画像2

キネカ大森にて深田晃司監督「本気のしるし劇場版」鑑賞。
メーテレで放送されたドラマを再編集した劇場版。全話しっかり観てるし手の内全部分かってる筈なのにざわめきが倍増。映画史上最もイラつかせるヒロインに振り回されるヤバ過ぎる232分。長々と一周して元に戻る様なサスペンスフルな東京人間喜劇。参った。
宇野祥平、忍成修吾のそれぞれのらしさ炸裂の活躍も良かった。
自宅で「彼女が成仏できない理由」一気見してからキネカ大森で「本気のしるし劇場版」観たので、偶然にも森崎ウィンDAYになった。

画像3

画像4

10月27日
テレ東特番ドラマ「こどものグルメ」録画鑑賞。
無邪気な好奇心と創意工夫と失敗をいっぱい。片付けなんかしてる暇はない。わんぱくなヒラメキのトキメキ。なにこの可愛さ。ずっと見てられるな。これはレギュラー化してもらいたい。

画像5

画像6

10月29日
バストリオLIVE配信「縄文のはじまりと終わり」鑑賞。
雨音と川音に満ちた多摩に散らばる縄文の始まりと終わり。未完成の映画のエンディングをsportsmenの演奏が引き継ぐという粋な結末が用意された一回こっきりのライブシネマ。面白かった。

画像7

画像8

Webで注文してたエイドリアン・レンカー「ソングス・アンド・インストゥルメンタルズ」CD到着。
Big Thiefのエイドリアンの歌モノとインストの二枚組で構成されたそのまんまなソロ作。森を彷徨い偶然に辿り着いた山小屋とかで流れていそうな音楽。神秘的で芯の強いどこかに連れてかれそうなアコースティック。私は好きだ。

画像9

そして表参道へ。閑静な住宅街の一角のアパートの一室にあるギャラリーDiEGO表参道にて藤嶋咲子個展「Unstoppable Unfolding」鑑賞。
人の顔と頭の上に工場を建設する。グロテスクな退廃かオートマティズムへのアンチテーゼか。アクリルと樹脂で幾つものレイヤーで作られた作品はそんな事よりもただ美しい。実物を直に見ないと伝わりにくいこの凄みと面白み。表参道の路地裏。迷いながらも無事に辿り着いて会期に間に合って良かった。

画像10

画像11

画像12

続いてアップリンク渋谷にてオリヴィア・ワイルド監督「ブックスマート」鑑賞。
先日オリジナルTシャツゲットしたのでそれ着て久々に皆んなに逢いたくなっての3回目。まぁ当たり前だけど皆んな相変わらず元気で嬉し泣き。アイツはイヤなヤツなんかじゃなくてアイツの事を自分はなんも知らなかっただけ。だからいつでも人生を学び続けるんだ。ダサい大人にならない為に。もう下半期ナンバーワン確定。こんな世界で生きるヤングにありったけの希望を託してくれる最高の映画。オリヴィアには感謝しかない。

画像13

ヒュートラ渋谷に移動してパブロ・ラライン監督「エマ、愛の罠」オデッサ上映。
エマに足りないのは音量だ、という事でヒュートラ名物のオデッサ上映で2回目鑑賞。それでもまだ足りなかった。やっぱり爆音上映かな、エマに一番合うのは。レゲトンのポテンシャルはこんなもんじゃないはず。いや良かったけど。

画像14

10月30日
FNSドキュメンタリー「カカ・ムラド~中村哲の信念~」録画鑑賞。
アフガニスタンの乾いた大地に用水路を引き緑地化に成功し65万人の生活を支える基盤を作った中村医師の功績。平和とは観念ではなく実態である。率先垂範をもって範となり人種や宗教の区別なく人と接した中村の生き方を私たちはもっと知って学ばなければならない。ホントの偉人。

画像15

それでまた渋谷のブラックロッジカフェモノクロームへ。
「VIDEOPHOBIA」コラボメニューのモノクロパフェを食べて、取り置きしておいたリンチコーヒー限定バージョンと自立するリンチの自伝を購入。パフェ濃厚で美味しかったし、映画話をまた喋り倒せて楽しかった。

画像16

画像17

その後はユーロスペースにてペドロ・コスタ監督「ヴィタリナ」鑑賞。
光と影の強烈なコントラスト。そこに浮かび上がる色彩。絵画の様な美しさと静けさ。物凄いコスタワールド。間に合って観れて良かったなぁとしみじみとしているうちに暗闇の中から睡魔がやって来てウトウト。マジか。どこかでまたリベンジしたい。

画像18

10月31日
今朝電車の中で母親が亡くなったという報せを受けた時SpotifyからはSPORTSMENの「思いがけないこと」が流れていた。心の準備は出来ていたとはいえ、確かにこんなに早くってのは思いがけないことだったな。

11 月1日
古井由吉「杳子・妻隠」読了。
精神を病む杳子に惹かれる主人公の無意識の病み。妻の隠し持つ性に静かに動揺する妻隠。どちらも密室を中心に展開される内向的で生々しくイヤらしくどこか病的な心理ドラマ。良くこんなにシンドイものを書けるようなぁという好奇心で意外と読み進められた。

画像19

11 月2日
母親の葬儀。
兄の家族と親戚の計7名の身内だけの簡単なお別れ会と納骨。死に目には会えなかったが7日に見舞いに行って様子が分かってたので割と動揺はなかった。思っていたよりは早かったというのはあるが。穏やかな顔をしていたのでまぁ良かったと思う。
夕方までに一通り終わって、帰りにみんなでファミレスで食事。雨が降りそうだったが何とか持ち堪えて帰る頃に漸く降り出した。

画像20

エイモア・トールズ「賢者たちの街」読了。
1937年大晦日のニューヨークから始まるケイティの波乱と輝きと野心に満ちた1年。2度と訪れないあの日々の回顧。決してユーモアを怠らないスマートでタフな文体。一語一句読み飛ばしたくはないマンハッタンの青春の光と影の愛おしさ。既に古典の風格を獲得している大傑作。
付録としてつけられた「礼儀作法のルールおよび交際と会話に品位ある振る舞い」がまたニクイ。細部が効いてる。
これ読んでたら「森の生活」を読み直したくなり、「大いなる遺産」にもアガサ・クリスティにも挑戦したくなるし、キャラが皆んな立ってるからグレタ・ガーウィグとかに映画化して貰いたくもなった。あと主要キャラの1人、イヴのスピンオフも早く読みたい。とにかくなかなか出会う事のないレベルの素晴らしい一冊だった。

画像21

11月3日
今年もTIFF開催。EXシアターにて山中貞雄監督「人情紙風船4Kデジタル修復版」鑑賞。
ボロ長屋に佇む市井の人々のバイタリティと敗者たちの美学。コミカルとシリアスが当たり前に同居するあんなに雨が降ってるのにドライな作品。4Kで鮮やかになり素晴らしかったけど、これが遺作とはつくづく残念だよなぁと改めて思った。もっと景気のいい話で終わりにしたかったろうに。

画像22

画像23

一服する為に入ったドトールコーヒーにて、岡崎京子「ジオラマボーイ☆パノラマガール」読了。
どうでもいいと思える投げやりで退屈な世界でそれでもどうにか生きていく事。虚無と欲望が背中合わせで、青春の焼き直しをする青春の儚さの中で、それでもハミ出る熱情は止められない。映画版のハードルが更に上がったなぁ。楽しみ。

画像24

今年はTIFFとスケジュールが丸かぶりした東京フィルメックス。TOHOシネマズシャンテにてエリア・スレイマン監督「D.I.」鑑賞。
スレイマン監督、脚本、主演による風刺と皮肉が効いたオブビートなコメディ。タチ風の前半は良かったけどパレスチナギャグなんだか笑いが高尚なのか分からない領域に入り込んだ中盤以降から放り出されてしまった感じ。

画像25

帰りに馴染みのロックバーに常連さんから借りてたCD返すついでに軽く一杯。それで最近のお気に入りのSPORTSMENとエイドリアン・レンカーのCDを流してもらう。

画像27

自宅にて若杉光夫監督「風立ちぬ」録画鑑賞。
百恵&友和ゴールデンコンビの第5弾。風立ちぬ、いざ生きめやも。堀辰雄の名作の中に溶け込む2人の息の合ったやり取り。その愛のともしびがやたらに眩しすぎて観てらんなくなった。

画像26

11 月4日
自宅にて小谷承靖監督「ホワイト・ラブ」録画鑑賞。
百恵&友和10作目記念作品。前半に迸る2人の若き色気の発散とスペインロケを敢行した後半の怒涛の展開。全体的に大雑把な仕上がりで2人の仲の良さだけが際立つ作品。羨ましくてやってらんないよな。大林宣彦監督がカメオ出演してた。

画像28

続いて岡本喜八監督「助太刀屋助六」録画鑑賞。
人の敵討ちに勝手に助太刀する助六が自らの親の敵討ちをするハメになった1日をほぼリアルタイムで描く喜八版「真昼の決闘」。カラッと抜けの良いテンポ感と山下洋輔のジャズの調べ。喜八の遺作に相応しい痛快な一本だったな。

画像29

六本木に移動してTIFF上映。TOHOシネマズ六本木にて小山駿助監督「初仕事」鑑賞。
カメラマン山ちゃんの初仕事は思いがけないとんだ大仕事だった。当事者と局外者の間でひっくり返る常識の物差し。それが身内に関する事なら尚の事。抑制の効いた演出で音と言葉が浮き上がるユニークでいつまでも残りそうな作品でした。
上映前に監督、出演者の舞台挨拶と上映後に監督のティーチイン付きで作品の理解が色々と深まった。そして終演後に主演をしたSPORTSMEN澤田栄一、音楽担当したSPORTSMEN中村太紀と収まる。小山作品であると同時に、SPORTSMENシネマ第一弾と言っても差し支えないだろう。また観たい。

画像30

画像31

画像32

その後は新宿に急いで移動。ケイズシネマにて宮崎大佑監督「VIDEOPHOBIA」鑑賞。
色々あってやっと2回目。予め2つの名前を持つ主人公の抱え続ける二重性。現実と映像と演技と別の人格は常にシームレス。ワークショップとヒールカウンセリングの類似。フィクスしたカメラとブレ続けるカメラ。天文学的数字で視聴される拡散された映像はもはや誰も観ていないことに等しいのではないか。様々な伏線を放り投げて安易な物語や良作に回収される事を拒む映画。いやつくづく変な作品だな。それでは皆さんで復唱しましょう。
「あなたは悪くない。あなた自身は何も変わらない。」

画像33

画像34

11 月7日
六本木でTIFF上映。TOHOシネマズ六本木にてラヴ・ディアス監督「チンパンジー属」鑑賞。
2018年のTIFFで上映されたオムニバス映画「それぞれの道のり」で発表された短編を基にした作品。ディアス版「ダウン・バイ・ロー」な展開から緩やかに緊張を増していつもの容赦ない世界観に引っ張り込む救いなきスローシネマ。
今回は2時間半位の短さなのでイメフォ辺りでロードショーしてもらいたい。ディアス入門にもうってつけの傑作だし、いい加減ディアスのレトロスペクティブもやってもらいたいし。そのタイミングでディアスに来日して貰いたい。そしてまた「悪魔の季節」を観て絶望に浸りたい。これだけの偉大な作家の作品がTIFFでしか観れないと言うのは本当にどうかしてると思う。

画像35

画像36

画像37

それでその後「メコン2030」を鑑賞。メコン川の10年後を舞台にした主に環境保護を促しオムニバスで面白そうだったが、ディアス観た後では何観ても気の抜けたサイダーみたいなもので、見事に爆睡。

画像38

画像39

11 月8日
目が覚めたらバイデンが大統領にほぼ確定のようで一安心。それより何より副大統領にカマラ・ハリスを任命した事は大きい。これだけでも功績に値する。私たちも能無しの国を破壊に導くだけの内閣にいい加減見切りをつけないといけない。いつまで奴隷根性で内向きで生きるつもりなのか。サルから脱却する時だ。

画像40

11月10日
品川から歩いて天王洲方面に向かいテレ東のスタジオの少し先にある児玉画廊にて伊藤隆介個展「Domestic Affairs」鑑賞。
ミニチュアと映像。DIYな剥き出しのパノラマで魅せる無限ループのディストピア。映画的なドラマチックと永遠に終わらないオートマティック。伊藤隆介の作品は哀しみと可笑しみが背中合わせで張り付いていながらいつも可笑しみが勝る。今回も切ない程に笑えた。

画像41

画像42

画像43

いったん帰宅してから109シネマズ二子玉川にて青山真治監督「空に住む」鑑賞。
全然観る気無かったが割と評判良さげだしサービスデイだから余り期待しないで観たら、その低い期待値を遥かに下回るつまらなさで呆然。話の内容が酷過ぎる。
タワーマンションに住んでる人間は皆んなワインしか飲まないのか。オレがなにか悪い事したのか、と最終的には自分を責め始めてしまうくらいで観ている間ずっと辛かった。キャストは好きな方ばかりだけど何も引き出せていないみんなどこかで観たことのある芝居で、良かったのは黒猫くらいだ。
監督の実績はさておき、これは失敗作だと認めるべきだろう。

画像44

続いて新宿に移動。富士そばでカレーカツ丼と言う腕白なメニューを衝動的に注文。コレがなんと美味い。気を取り直し、シネマート新宿にてケヴィン・カースレイク監督「ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション」鑑賞。
ロック好きの13歳の女の子がギターを手にしたその日から何一つブレる事なく荒地を切り開いた反骨と栄光のヒストリー。誰よりもアイラブR&Rなジョーンの生き様に2回目の鑑賞でまた号泣。最高にキュートでクール。もうリスペクトしかない。
この際ポール・シュレイダー監督「愛と栄光への日々」も再上映して欲しいと思った。

画像45

画像46

11月11日
歯医者に行ったあと渋谷に移動。エクセルシオールカフェで軽くランチを済ませ、シネクイントホワイトにて瀬田なつき監督「ジオラマボーイ・パノラマガール」鑑賞。
再開発に終わりは見えなく彗星が接近しデモは日常的に繰り返され女の子たちは相変わらず目をキョロキョロとさせて子供たちは閉塞した社会のど真ん中で平気で遊び場を見つけ出し秘密基地を作る。そして屋上から未来に向けて手を伸ばす。
ジオパノ32年目の更新は、全シーン全カットが瀬田監督にしか撮れない煌めきと可愛さに溢れた岡崎映画の決定版であり、オザケン映画でもあり、21世紀ベストに掲げたいレベルの最高傑作の紛れもない瀬田映画。やっぱり瀬田ちゃんは天才だ。もう皆んなで胴上げしたいくらい感謝感激。
そして本作はシネクイントホワイトで観るに限る。それは観れば分かる!

画像47

画像48

画像52

続いて池袋に移動。タワレコでスクーターズのレコードを購入。ベッカーズで一休みして、「ジオパノラマ」パンフレットを読了ご、シネマロサにて宮崎大佑監督「VIDEOPHOBIA」鑑賞。
やっと3回目。マイムベッサッソ、イド君の逆襲、メンフクロウ、フェイスパック、何故か大人気のウサギの着ぐるみ。あなたは悪くない。いや実はなにも起きてはいないのか。
全ての期待や予感をはぐらかし、失踪する様に飛翔する作品。まだまだ全然観れるな。
それで上映後は主演の廣田朋菜と友人・我妻三輪子によるトーク付き。「友達から友達に変わったぁ」と言う我妻の感想が結果的に作品を見事に言い当てていたなぁと思った。楽しかった。

画像50

画像51

画像52


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?