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ダダダイアリー、主に映画。2024/1/17ー1/31

1月17日
BSTBS「八代亜紀 歌手人生44年絶唱!2時間スペシャル」録画鑑賞。 
2014年の追悼再放送。ライブ映像を中心にキャリアを包括した構成。往年のヒット曲、昭和歌謡、ジャズにクラシックなど凡ゆるジャンルを全部の自分の世界に取り込む引き込み力。もう日本のニーナ・シモンと言っても差し支えないのじゃないか。前田憲男とのライブシーンは2人とももういなくて泣けた。

1月18日
フランク・ザッパ、トニー、パーマー監督「200モーテルズ」DVD鑑賞。
狂気と幻の作品遂にソフト化。マザー・オブ・インヴェンションとロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラがお届けするビザールでシュールでフールな悪夢よりストレンジな寸劇。ザッパを演じるリンゴ・スターの奇妙なハマり具合。今夜の俺は明日のオレに何をもたらすのだろうか。これスクリーンの大画面と爆音で観てウンザリしたい。

映像の世紀バタフライエフェクト「ふたつの超大国米中の100年」録画鑑賞。
アメリカでロケット開発に貢献した銭学森の運命の翻弄を中心に構成。文革で酷い目にあった習近平の策略。交渉の切り札として政治利用されるパンダ。精華大学の成果。捻れた米中の歴史からアンナ・メイ・ウォンへの見事な着地。

目黒シネマでウルリケ・オッティンガーベルリン3部作のうち2本鑑賞。

「タブロイド紙が写したドリアン・グレイ」
美しきドリアン・グレイを巡る退廃的なパノラマ。ゴシップとキッチュなガジェットとデルフィーヌ・セイリグ。全てがマンガ的過ぎな過剰なオペラにグッタリ。見どころ満載だけどちょっと長かった。

「アル中女の肖像」
飲むために生き、生きるために飲む。ベルリンの都市ごと劇場に見立てた素晴らしいロケーションを飲み歩く。3人の観光客と小さなおじさん、カートを引く女性。喋らないタベア・ブルーメンシャインの飲みっぷりと暴れっぷりと七変化。全てがイカすパンクな大傑作。

1月20日
足立区小台のBRUCKEにて開催の清原惟監督「わたしたちの家」上映会へ。
1つの家の2つの物語。並行する世界に投げ込まれる花、移動するクリスマスツリー、中身のわからないプレゼント、建築そのものが立ち上げるサスペンス。何度観ても回収不可能な素晴らしい作品。2018年以来の4回目。もう手の内は分かっているつもりで観たのに初めて観る様な驚きとトキメキに包まれた。

併映作品として短編の「波」も上映。
逃げる女、追う男、波打ち際に追い詰められた時に初めて聴こえるサウンド。運動が物語に変わる瞬間の様な騒めき。コレも超久々に観たけど良かった。

上映後のティーチインでは「波」が卒業旅行の最終日に即興的に撮影されたものであることや「わたしたちの家」が撮影した家そのものから着想を得たことやお客として来場してた出演者の菊沢将憲さんの演技プランなどについて伺えた。会場にはバストリオの橋本和加子さんも来てたので集合写真撮って来た。待望の新作「すべての夜を思い出す」楽しみだ。

菊沢夫妻、清原監督、橋本和加子さん

1月21日
ポレポレ東中野にて、草野なつか監督「王国(あるいはその家について)」鑑賞。本読みとリハーサルの反復の中でそれぞれの頭の中に立ち上がる王国の片鱗。グロッケン叩きのマッキー、暗号回線、荒城の月、俳優たちの視線とトーン、映画の構造そのものが生み出すサスペンス。久々に観たけどずっと台風の目の中にいる様な緊張感の途切れない150分だった。実景のショットがあんなに沢山有った事はすっかり忘れてたけど。

でその後は南青山の3Eスタジオで開催してた「HAIR STYLISTICS for SALE」を覗いて来て、中原昌也の私物からシェリリン・フェン表紙の「PLAYBOY」をサルベージして来た。会場では空族の相澤虎之助氏とも久々に再会。中原昌也氏も元気そうでなにより。

で「王国(あるいはその家について)」は台風の日の話だったよな、台風と言えば「台風クラブ」って事で急遽、目黒シネマに駆け込む。

目黒シネマにて、相米慎二監督「台風クラブ4Kレストア版」鑑賞。
思春期の説明のつかない迸りと台風の蠢きを相米とスタッフとキャスト全員が横並びで一丸となって掴み取った一体感。4Kレストアにより映像と音がクリアになってその凄みと希少さが金閣寺の様に鮮やかに浮き上がる。改めて伝説的な作品だと騒めいた。

1月22日
ポレポレ東中野にて、草野なつか監督作品2本鑑賞。
「螺旋銀河」
antonymな2人が過ごす夜のコインランドリー。私たちはもしかしたら反対側から同じ穴を開けていたのかもしれない。
webで観て以来ずっとスクリーンで観直したかった作品やっと観れた嬉しさでずっとウルウルしてた。全部のシーンでキュンとしてしまう。
上映後の草野監督の舞台挨拶で本作のラジオドラマの構成にはboid樋口さんの貢献があった事が知れた。そのエピソード聞いて更に好き度が増した。

草野なつか監督

「王国(あるいはその家について)64分版」通称「グロッケン叩きのマッキーが居ないバージョン」。物語の骨格が凝縮されている分筋は追い易いが語り口としては150分版へ向けた習作の印象。それでも独立した作品として楽しめた。新文芸坐で観た時に次は「螺旋銀河」と一緒に観たいと呟いたが、本日ポレポレで願いが叶った。嬉しい。

1月24日
世田谷美術館にて開催中の「倉俣史郎のデザインー記憶の中の小宇宙」へ。
名作「ミス・ブランチ」を中心とした倉俣デザインの全貌。ガラスの椅子を見た子供が「見えない椅子だ!」と表現したその言葉に象徴される物体を認識しているのにその理解を超える夢見感。デザインとアートの狭間を浮遊した作品の数々にこちらも夢心地になった。

で、その後はクリエイティブディレクターで写真家でArtistの奈須一葉が1日店長をやると言うので駒場にあるバーのテルチへ。
殆ど宅飲み状態で平日に関わらず久々にブチ上がって来た。
せっかくだからお店の窓にボードを立てさせてもらった。

1月28日
下北沢の小劇場B1にて、コンプソンズ#12「岸部のベストアルバム‼︎」観劇。サブカルが食い潰してダメにして来た頭打ちでヘルな現代。表層を消費しまくる様に描きながら表層を消費して来た猛省と批評に満ちた現在の視座。サブカルのケツはサブカルが拭く。こんな時代に演劇と物語にいったい何が出来るのかを真剣に向き合った作り手の意気込みに泣く。これはホントに観て良かった。

新宿に移動。
シネマート新宿にてブライアン・デ・パルマ監督「悪魔のシスターデジタルリマスター版」鑑賞。
見事なまでのヒッチコックマナーと土曜ワイド劇場の雛形の様なコミカルさと分かりやすさ。そして呆然とさせる放り投げ。昔観た事ある気がしたけどこんな結末だったのか。スッカリ忘れてた。この丸く収まらない感じ素敵だ。

そして新宿のSPACETOKYOにて開催の「SOI48VOL.58阿美SPECIAL」へ。
台湾・阿美族DJ、Dungi Saporとタイのローカル・ダンス・ミュージック"サイヨー"黎明期のトラック「7K」を生み出したEMMのダブルゲスト。世界がどんどんヘルになってもここには争う様にブチ上がる連中が居る。最高のパーティだった。
実は一緒に誘った連れから直前に「事故った」との連絡が入り会話やメールは出来るもののそこそこの怪我なので、1人でぶち上がる事なんか出来なかったけど、とりあえず無事でホッとしたので久々に会える人たちに顔出してきた感じ。
それで空族の富田克也監督と久々に会えた。遂に始動した台湾潜入記の展開に期待大だが、パレスチナ問題に関しても烈しく同意を得た。きっと声を上げてくれるだろう。って事で映画ファンは時に直接行動したりする。

soi48
EMM
DUNGI SAPOR

1月29日
新美の巨人立ち「立原道造ヒヤシンスハウス」録画鑑賞。
夭折した詩人・建築家立原が残した5坪の夢。その想い。これをナビするのに内田有紀ほど適切な人はいない。毎回楽しみな内田有紀建築回。今回もしみじみ良かった。

日曜美術館「戦後新宿・渋谷をつくった建築家 坂倉準三」録画鑑賞。
東京から次々と坂倉の風景が消えていく中でこの特集は有難い。羽島市庁舎とかも解体される中で旧上野市庁舎を図書館とホテルに再改修するというプロジェクトが素晴らしかった。モダニズム建築ファンとしては嬉しい。これからは再開発じゃなくて再改修にシフトしていくべきだと思った。

菊川の映画館Strangerにて、古澤健監督「STALKERS」鑑賞。
トンネルという装置の活用の実践。走りすぎる自転車とランナーのアクションとただ通り過ぎる者が産み落とすサスペンス。拾われた音のバイオレンス。そしてカメラが捉える映画的な瞬間。シンプルで大胆で画期的。驚きの56分。これはまた観たいやつ。面白かった。

1月31日
アラスター・グレイ「哀れなるものたち」読了。
饒舌に過ぎる哀れなるものたちの競演による疾風怒涛の展開が荒唐無稽を凌駕する。そして終わったと思ったらそこから更に長い展開。人間のリセットによるフェミニズムとヒューマニズムの獲得。人類はもう一度生き直す事が出来るのか。映画への期待値が跳ね上がった。

ホワイトシネクイントにて、ヨルゴス・ランティモス監督「哀れなるものたち」鑑賞。
饒舌な原作の語り口を独特の色彩による映像と美術で簡潔にオレ色に染め上げたランティモス劇場。その分綺麗に纏まりすぎてる感は否めないが、エマ・ストーンのあのダンスには釘付けになった。これはヨルゴス版「Barbie」という解釈も出来るな。

で、PARCOの3階で「哀れなるものたち」公開記念のパネル展もやってたのでついでに覗いて来た。何気にサーチライトピクチャーズの作品をたくさん観てるなという事に気が付いた。

更にその後は渋谷の無機質カフェのカフェモノクロームにて、期間限定メニュー「哀れなるものたち」コラボセットを注文。プリンとグレープジュースとコースター付き。店員さん未見なのでネタバレしない程度にお勧め。あとはベルリン映画祭の捉え方や今後の期待作やこれからの映画の選択の仕方についてなど喋り倒すPOOR THINGSぶりで過ごす。

それで最後はイメフォにてタイラー・タオルミーラ監督「ハム・オン・ライ」鑑賞。
サンドイッチ屋に集まる若者たちの通過儀礼めいたパーティ。選択を迫られたそれぞれは何を誰を選び取るのか。「アメリカンスリープオーバー」的な爽やかさに「ツインピークス」的な不穏さを通底させ、凡庸な青春に迫った非凡な作品。なんだこの斬新な切り口。とりあえずサントラが欲しい。


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