見出し画像

<無為フェス -Vol.2->#6 立川清志楼『即興よる映像インスタレーション「pre – 第二次三カ年計画」』

2023年11月14日(火)9時 - 14時30分


即興よる映像インスタレーション「pre – 第二次三カ年計画」

わたし立川清志楼は主に「動物園」を被写体にあらゆる映像的実験を作品及びインスタレーション上映により行っています。2020年より開始されたプロジェクト「第一次三カ年計画」が2023年6月に終了。結果として200本の作品が完成、16回に渡る上映会をBUoy他で行いました。

「第一次三カ年計画」とは、作品制作のためのマニフェストで

1.月間5本の映像作品生産(年間60作品、3年間180作品)を目標とする。
2.作品時間は自由とし、全ての作品に実験的要素(構造・思考・方法)を取り入れること。
3.作品内容に関して、過去の自己作品及び他作品に対する類似性は問題としない。
4.継続的に作品を生産・上映することを最優先とする。
5.安定的な生産体制の確保こそ最重要課題である。効率的な生産体系構築のため撮影及び編集方法を徹底的に合理化する。

というものです。今回、2024年1月より開始される新プロジェクト「第二次三カ年計画」へ向け、公開形式による実験インスタレーションを行いました。

・題名:即興よる映像インスタレーション「pre – 第二次三カ年計画」
・内容:「第一次三カ年計画」全作品からrimixした1時間40分の映像をプロジェクター2台で白紗幕(10m×3m)、黒紗幕(2.1m×1.9m)へ投影する。映像はメディアプレイヤーで再生、音声は音響ミキサー経由4本のスピーカーを使用。

実験①
プロジェクター①②を会場中央へ設置、風呂場シャワー前へ蚊帳状の四角形である黒紗幕(2.1m×1.9m)を設置。
プロジェクター①から黒紗幕越しに風呂場へ映像を投影。
結果
黒紗幕にいまひとつ映像がはっきり映らないので紗幕の効果薄。黒紗幕が光を吸収するのか透過した風呂壁の映像もいまひとつである。

実験①

実験②
白紗幕(10m×3m)を3重にして黒紗幕斜め前へ設置。
プロジェクター②から白紗幕越しに風呂場へ映像を投影。
結果
白紗幕の皺(しわ)がオブジェ感をかもしだし複雑な文様が浮かび上がる。3重にしたことで紗幕効果がより発揮された。この使い方は非常に効果的である。

実験②

実験③
プロジェクター①②から黒・白紗幕越しに風呂場へ映像を同時に投影。両プロジェクター同じ映像。
結果
白紗幕の映像は魅力的であるが、黒紗幕の効果はほとんど無い。両方の差は歴然。このインスタレーションなら両方白紗幕にするべき。風呂場壁は複雑な形象なので映像により見え方が変化し面白い。特にカラスの映像が影となりリアル。しかし全体的に映像は見ずらい。照明なら効果的な表現が出来そうだが映像は難しい。映像は投影する形状・材質・色に左右されやすいと再認識。ダーク調の壁への投影には何か工夫が必要。全体的に暗い印象なので、この複雑な場所を効果的に見せるにはさらにプロジェクターを増やす必要があると考察。

実験③

実験④
プロジェクター①から会場奥壁へ映像を投影。
結果
壁以外の梁や柱など様々な平面へ映像が分散。紗幕で得られる効果より具体的かつ強力に映像の分割を確認。単純に面白い映像がここにある。自分のやりたいことはまさにこれ。分割された映像がそれぞれ勝手に動き出している。一番解放感を感じた。

実験④

実験⑤
プロジェクター①から会場奥壁へ映像を投影。プロジェクター②の位置を変更し白紗幕越しに風呂場へ映像を投影。両プロジェクター同じ映像。
結果
会場の半分へ映像が分散。インスタレーションとしてはなかなか良い。位置により見え方が変化するが全体としては物足りない。この大きさの会場でプロジェクター2台はやはり厳しい。最低4台は欲しいところだ。会場全面へ投影できればより複雑な映像になると思う。他にプロジェクター自体を回転させる、鏡に反射させた映像を回転させるなど会場全体へ投影する方法はありそうだが現在自分のスキルでは難しい。今後への課題。

実験⑤

実験⑥
実験⑤の投影形態で会場奥壁の前へ黒紗幕を設置。プロジェクター①②から映像を投影。
結果
風呂場と同様、黒紗幕の効果はあまり確認できず。黒紗幕は投影距離が離れるほど光が弱くなるよう。近くからの投影が望ましいのかも。

実験⑥

以上で実験終了。
黒紗幕が思ったほど効果が発揮されなかったが、白紗幕は効果大。これが一番の収穫。複数の白紗幕をオブジェクトのように配置し映像を投影すればかなり面白くなりそう。この方法ならBUoy地下のような大きな会場でも魅力的なインスタレーションができそうである。今回、インスタレーションの作成経過を公開すること自体がパフォーマンスになることに気づいた。このような試みは初めてだったがイベントとしても魅力的になると実感。それは四方から鑑賞できるBUoy地下という広い空間があってこそだが、この方法をヒントに今後パフォーマンスとしてのインスタレーションも追求していきたい。
すべての実験を終え、あらためて映像インスタレーションは会場の形状に左右されることを再認識した。今回、紗幕を用意したことで紗幕の使用を意識し過ぎてしまった。そもそも紗幕を吊るしてから映像を投影したのが間違いだった。まず会場の形状をきちんと把握することが第一、紗幕無しですべての壁へ映像を投影してみるべきだった。デフォルトを理解せずいきなり効果を期待したのが混迷の要因。しかしこれも実際に色々と実験した結果分かったことであり、やはり経験は大切である。経験にもとづく知識は深く身につく。作家は情報だけでなく身体の感覚で覚えることが最も大切でインスタレーションはその典型である。インスタレーションは現場で試行してみなければ理解できないし進化しない。今回の経験をもとにこれからも身体感覚を基本とした作家活動を継続していこうと思う。それにはさらに多くの世界に対するインプット・アウトプットが必要である。来年から開始される「第二次三カ年計画」はこのことを肝に銘じて進めていきたい。

最期に平日の昼間に足を運んでくれた皆さまと、この素晴らしい場所と機材を提供して下さったBUoy、スタッフの皆さまに感謝申し上げます。ありがとうございました!

立川清志楼


BUoYスタッフより

無為フェスについてはこちらの記事をご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?