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<無為フェス -Vol.2->#17 生命の躍動「あやとりー影響を与える〇〇ー」

2023年11月18日(土)15時30分 - 17時30分

初めまして。
【生命の躍動】です。
音楽アーティストmidorimと身体表現・マルチアーティスト ふくいさほによる、音楽と身体表現を組み合わせた実験的ユニットです。
主に即興性、実験性をテーマに活動しております。
私たちは高校の同級生で、ふくいさほより依頼を受けてmidorimが舞踏のための楽曲制作を行ったことがきっかけで2023年9月より活動をスタートしました。

◆初の共同作品『ウくノー』

ユニットとして初めてのイベント開催となる無為フェスvol.2 芸術のアブ では、『あやとり-影響を与える○○-』と題し、2種類の実験的企画を行いました。
「あやとり」というタイトルの意図については、実験企画の説明以降に記載します。
素晴らしい企画と場所を創っていただいた北千住BUoYの方々に感謝申し上げます。

実験企画
『あやとり-影響を与える○○-』
音と身体とで起こることの実験パフォーマンスを行いました。
今回は、音と身体に、色、空間、オブジェクト、ヒト等の要素を加え、お互いにどんな影響を与え合うのか与え合わないのか、何が起こるのか起こらないのかを試しました。
《実験①》と《実験②》から構成されます。

《実験①》
〇準備物
・オブジェクト15種類
(植物、リンゴ、ペットボトル、コップ、本、石、入れ歯、カラーボール、ぬいぐるみ、霧吹き、帽子、靴、虫かご、時計、扇子)
・オブジェクト15種類各々にインスピレーションを受けた音
・身体部位15箇所のワード音声
(小腸、足首、脚、手、腰、目、首、腕、胸、頭、足の裏、背骨、鼻、肩、膝)
・赤いテープ
・赤い毛糸
・音楽
・ヒトの身体

〇実験方法
①赤いテープを用いて、15箇所の座標をもった交差し合う赤い線を床に引く。
②床の線の各座標15箇所に、ご来場頂いた方に自由にオブジェクトを配置して頂く。
③音楽と身体表現を用いて、空間内に存在するものの影響を試す。
●影響を受け合う可能性があるもの
・オブジェクト
・床の線
・色
・空間
・音
・身体表現
・観測者の身体
・時間
・身体部位のワード

〇実験風景

《実験②》
〇準備物
・赤色ペンキ500ml
・模造紙(約6m×6m)
・大きいレジャーシート
・トレー
・音源(3つのシーン)
・ヒトの身体

〇実験方法
①レジャーシートを床に引き、その上に模造紙を貼る。
②身体にペンキをつけ、即興的に身体表現をする。
 あらかじめ用意した音源をダンサーの動きを見て繋ぐ。
 身体の動きの軌跡を模造紙に残す。

〇実験風景

◆使用した音源(当日のセットを元に再編集)

▶「あやとり」のタイトル意図
《実験①》では、音、身体、色、空間、オブジェクト、ヒト等の要素が登場し、それらの関わり合いを調べました。それらの要素の関わり合いを図式化しようとした時、以下の図Aのようになりました。

図A

この図のように、幾つもの線が絡まりあっている様子が「あやとり」のように見えました。
日本で「あやとり」といえば、紐ひとつであらゆるモノを表現する手遊びのひとつです。
例えば、橋や東京タワーなどがありますが、正直なところ、表現しているものが何なのか、教えてもらわないと分からないってこと、ないですか?
橋を作ったつもりでも、見る人によっては、橋に見えるかもしれないし、東京タワーに見えるかもしれないし、もしかしてヘビに見えるかもしれない。
このように、1つのモノに対する解釈が見る人によって異なるということに着目すると、私たちが創ろうとしているアート作品と似ていることに気づきました。

《実験①》では、図Aを実際に表現した。すると、それぞれの要素が絡み合って複雑化した状態が出来上がった。その複雑化した状態が、「あやとり」の絡み合う糸の様子に見立てられた。
《実験②》では、各々の要素の相互作用を感じる、というプロセスは明確であっても、その結果の産物としての模造紙は、一体何を表現しているのか分からない。その判断は観測者の感覚と解釈に委ねられる。この状態が「あやとり」と重なった。

●後日調べ
ラパヌイ(イースター島)ではあやとりを言語として用いる伝統があるようである。
ここでは深く触れないが、今後の考察課題である。
「ラパヌイではあやとりはメッセージを伝える手段であり、”kaikai”と呼ばれている。本稿では「あやとり言語」と呼ぶ。あやとり言語は歌や伝説を伝える、今も生きた文化であり、言語である。」(※1)

〇結果と考察
《実験①》
・身体表現の最中は、オブジェクト、音楽に主に反応したように感じた。
 聴覚と視覚に左右されやすい身体であることがうかがえる。
・交差する床の線と、空中のあやとり紐により、動きが制限される感覚があった。
 それにより生まれる新しい動きを見つけた。
・赤という印象的なカラーは、緊迫感を感じさせた。
・BUoYの暗めの地下空間が、感覚をニュートラルにしてくれた。
・BUoYの地下空間の静観な雰囲気によって赤の存在感が如実に現れた。
・観測者の存在が、動きを豊かにした。
・身体部位のワードの影響を受けた動きの方が、オブジェクトの影響を受けた動きよりも強く感じた。
・身体全体を使った動きはより引き込まれるものがある。

《実験②》
・ペンキのテクスチャ、温度が身体感覚を過敏にさせた。
 ペンキが付着した身体部位に感覚が集中した。
・興奮した気分になった。一方で床がペンキにより滑りやすく、模造紙は破れて不安定。
 感覚的な気分の高揚と危険を避けようとする理性的な脳による身体の制限のジレンマがあった。
・興奮した気分は、音と赤ペンキによるものかと考察する。
・音楽の高揚とともにパフォーマンスの動きも激しくなっていく。
・赤という色が広がるにつれて緊張感や逼迫した雰囲気をもたらす。

▶課題
・「あやとり」の文化としての側面について学習する。
・観測者よりの感想をぜひアンケートしたい。

▶まとめ
アート作品は、観測者の解釈によって、見え方が異なります。そのことに興味を持ち、「あやとり」と重ね合わせてこの実験を行いました。
《実験①》では、オブジェクトや空間などの条件と身体、音楽との関係性を探る実験を行い、観測者にもオブジェクト配置のために参加していただくことで、即興実験となるよう工夫しました。《実験②》では、模造紙の上で赤いペンキを身体につけて踊ることで、模造紙に身体の軌跡(と我々が認識しているもの)を残しました。赤いペンキがついた模造紙、という具体的な産物を用意することで、より「アート作品への観測者の解釈が異なること」を表現できると思い、試みました。

この実験の面白さは、科学実験とは異なり、準備物、空間等の条件を全く揃えて行ったとしても、同じ結果は生まれないことにあります。
各々のインスピレーションや小さな差異に加え、時間の概念が結果に関与するのが面白いところです。
その分、複雑化しますが、何回、誰が、試行しても無限の数の結果が得られると思います。こういった唯一無二性が私たちにとって魅力溢れるものだと感じています。

▶所感
(midorim)
パフォーマンスはリハ一切なしで行ったため、本当の意味で、座標やオブジェクトという制限のある中で、身体表現がどのようになされるのかということの実験に近かったように思う。《実験②》では音楽を大きく3つのシーン(アンビエント・民族音楽・テクノ)から構成、その境界での身体表現、場の雰囲気の変化が非常に興味深かった。今回は、オブジェクト、ペンキを使用したが、今後嗅覚や視覚など他の要素も加えて実験を行いたい。

(ふくいさほ)
初のイベント作品としては、行いたいと思っていた、現象の実験的企画ができたと思う。次回は、音楽、身体表現について、より即興的な表現にフォーカスして行い、そこに立ち上がる現象を試してみたい。

▶制作過程

BUoYの平面図上で長さを測り、大まかなあやとり図を描く。
(赤テープの拾い出しにも役立った。)
あやとり図の頂点を座標に見立てて、それぞれに対応する身体の部位を決めた。

各座標に置くオブジェクト15種類の選定を行い、それらを入手する。
自然物と人工物をバランスよく取り入れた。
特別な意図として、「オブジェクト:虫かご」は『芸術のアブ』というテーマより、虻から着想を得て選んだ。
動画は京都鴨川での「オブジェクト:石」の採取。

告知用フライヤー(design: midorim)

※1 引用文献:西本 希呼 , 頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム 2011 年度派遣報告書 ,2011,京都大学大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科 東南アジア地域研究専攻 特別研究員(PD) )

▶︎ギャラリー

▶アーティスト紹介
【生命の躍動】
音楽と身体表現の実験的ユニット。
Instagram:@yakudo_lives
YouTube:https://youtube.com/@seimeinoyakudo?si=RZ1F9YSGQ7NG518l
TikTok:@seimeinoyakudo

●midorim
音楽アーティスト。
シンセサイザーの魅力に惹かれて音楽制作を始める。オルタナ、テクノ、アンビエントなど様々なジャンルに挑戦していきたい。
Instagram:@sonosakana
SoundCloud:https://on.soundcloud.com/uqWmnBVecf8PUac7A
Music artist.
Attracted by the charm of synthesizers, she began producing music. she wants to try various genres such as alternative, techno, and ambient.

●ふくいさほ
身体表現者。マルチアーティスト。
クラシックバレエ、コンテンポラリーダンス、ジャズ、演劇、歌などを経験し、現在は、刹那的な衝動の発出に魅力を感じ、その瞬間の感覚を、身体で表現することを試みている。
・Instagram
   dance @mikazukimo2913
   art works @m0nad.0
・TikTok: @mikazukimo2913
Physical artist. Multi artist.
Experienced classical ballet, comtemporary dance, jazz,theater, singing, etc.
Currently she is fascinated by the momentary release of impulses, and attempts to express the sensations of that moment with her body.

▶ Infomation
Name:生命の躍動
Title:『あやとり-影響を与える○○-』
Date:2023年11月18日(土)15:30-17:30
Venue:北千住BUoY
music:midorim
body expression:ふくいさほ
Special thanks:BUoY
Hosted by:無為フェス/BUoY


BUoYスタッフより

無為フェスについてはこちらの記事をご覧ください。

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