6.トリセツ読まずに旅客機飛ばします?演技の創作方法を学ばないと始まらないの。
やっと専門的な事です、と書きましたが、この第6項目「技術の習得」については山ほど素晴らしい本があります。私が言う事は彼ら以上の事があるわけありません。では何を伝えたいか。この地味な作業を乗り越えられない人がほとんどだよ、という事です。読めないのはなぜなんでしょう。気持ちは少し分かります。考えてみます。
演技の長い歴史の間で様々な技術が開発されています。海外の素晴らしい書籍がたくさん翻訳されています。今から勉強しようとする人達は本当に運がいいと思います。日本では演技の勉強ができないから、とすぐに留学したがる人もいますが、良質の翻訳本をきっちり理解できるようになってからの方が時間を無駄にしないと思います。それくらい質のいい本がたくさんあります。一通り勉強し自分に合うものを選ぶという事までできます。本の選び方は外国人であれ、日本人であれ、その人が成し遂げた事で選べば間違いありません。自身の演技といより、誰を育てたか、の方が探しやすいです。
丸1カ月も丁寧に読み込めば概要は見えると思います。
それなのに、みぃんな、読まない。演技と「本」の結びつきにくさもありますが。それにしても、たとえある程度私を信頼してくれている役者さんに「頼んでも」読みません笑。それよりハードルが高そうな事に挑戦する割に。読めない、ようです。
少し理由を考えてみます。最後に向かって強敵になります。
1 お金がないのさ
「俳優の卵は貧乏」で有名ですね。貧乏だからって本が読めませんか。確かに、書籍は安くはありません。ならば、無料で、図書館で借りて読めばいいだけです。『“役を生きる”演技レッスン』2,750円を読みたかったのですが、近くの図書館に置いていないので、国会図書館(日本で出版された全ての本が読めます。貸出はできません)の近くを通る時に読むことにしました。役者にとって本当に大切な事がたくさん書かれていて、感銘を受けました。そして当時出版から4年も経っているのに、私が初めて表紙に折り目を付ける事実に同じくらい驚きました。新品だったのです。誰も、読んでいません。素晴らしい本で、他の図書館にはほとんど置いていません。「貧乏な」俳優の卵はいったいどこで何をしているんだろう、と思いをはせました。
本気で求めれば、たどり着く場所です。ちなみに新宿区の図書館に置いてある役者の本にはそれなりに使用感がありました。ターミナル駅で手軽であれば、借りにこれるんでしょうか。なんだか不思議で、ちょっとダサいね、と感じるのは私だけですか。
2 学がないから本の勉強は自分に向いてないのさ、と触らない
そもそも本を読む習慣のない人が本を読むのはつらいものです。
ただ、本当に何かを成し遂げる人はとにかくしつこい。ひくくらいしつこい。
英語が分からないのに、英語のyoutubeを見続けて事を成し遂げた人を知っています。恐縮ですが夫です。ちなみに彼は当時、ギャンブラーで消費者金融と親に借金をしているような人で、27歳で婚姻届けを書く時、自分の名前の漢字を間違って書いたので、訂正をうながした所、え? 違うの? とぽかんとされました。いつも気になってはいたものの、字が汚いだけだと思っていました。まさかアラサーで己の名前の漢字をガチで書けないとは誰が想像しますか。
そんな彼が貧乏だけどwindowsもmacも欲しいよう、と借金を抱えてるくせに野望を抱えました。借金がない人だってあんまり抱かなそうなやつを。ちょうどお金がないので自作Windowsを作ったばかりでした。
そして、3か月ほどの間、仕事以外、昼夜youtubeでどこかの国の解説を聞きながら、秋葉原に通いながら、windowsとmacが二頭乗っかっているパソコンを作ったのです。その1年前は強制終了ってどうやるのって言っていた人が、です。あっぱれ。
何が言いたいか。本当に知りたいと思ったら、頭が悪かろうが、お金がなかろうが、しつこくなれるのです。
必要だと言っているのにできないのは、あなたの意欲がそこまででもないのです。言いますよ。こんな事が乗り越えられないなら他で夢中になれる道を探したほうが絶対楽しい。
3 実力不足で内容が響かなすぎる、開いてみたけど
ある程度力がないと読みこなすのは難しいかもしれません。1回読んで理解できなくとも決して諦めないでください。達人が書いている本を初心者がすぐに理解するのも無理があります。
私自分、こんな恥ずかしい話があります。演出の難しさを実感してから図書館のある本を読んだ時、なんだこれは!!と目を開かれる思いでした。貸し出し期限内に読むため、メモを取りながら必死に読みました。間に合わず、2回借りました。しばらくして、その本が自分の本棚にある事に気が付き、愕然としました。初めて演出する時(その4年ほど前)に試しに買って一通り読んでいたのに実感なく読んでいるのでほとんど頭に入らなかったのです。恥ずかしー!!
易しい本から始める事も大事です。初心者でも鴻上尚史さんの本は分かりやすいと思います。素敵です。
読み継がれている本は実力がついてくれば、自分にとっての価値を変えていきます。これはこういう事か! と分かる時が来るかもしれません。どうぞ、手元に置いてください。本は誰かの「頭脳」です。
4 不適切な自己評価、近しい人と比べての相対的な評価で必要がないと思いこんでいる。
3と似ていますが激しく残念な例1です。
こんな人がいました。キャリアは長くとも、演技の基礎的な部分を誤解されているのではないか感じる演技をする人に、作り方について本を読んで勉強したことはありますか、と聞きました。「もちろん読みました、でもあまりにも当たりまえの事ばかり書いてあって。既にやっていることばかりで。こんな事をいちいち活字にするんだ、と感じました」と。もう、何も伝えられないと思いました。本人が学ぶためのドアをぴしゃりと閉めている事に気づいてません
もう、こうなれば、役者に本当の意味では興味がないんですね、というしかありません。
5 周りの役者も読んでいないもん。
激しく残念な例2です。
プロ(演技でお金を稼いでる)の子達が上のような事を言います。
大手事務所の役者の友人の演技は平均点で上手くなく、本気で勉強する気もない、色々他に上手な事もありそうなので、転職すれば、と20代だった頃勧めましたが結局辞めませんた。励まし、煽る為に辞めろと言いません。真剣に、今なら間に合うでしょう、と。でも辞めませんでした。
なぜか。「皆、上手くないし、努力もしてないから、もうちょっとやれば少し上に行けそうな気がする」というのです。とても残念な話です。
ちなみに私がCGの世界に足を突っ込んで、ゲーム会社で働かせてもらったものの、とっとと引き返してきた過去があります。自分より技術も意欲もはるかにすごい人がたくさんいてくれたからです。こりゃ無理だわ、と。思わせてくれました。
日本の役者界隈で、ものすごく上手い人=演技本を読んでいる、ではない現実が読む気を起させないのかもしれません。でも書籍はスタンダードで教科書です。飛行機の操縦をするのに、トリセツ読みませんか、くらいの事だと私は感じてます。複雑な自分の身体を操縦するのにトリセツなしで突っ込みますか。
その師の言う事が自分に合っていてもいなくても、その時間はその後の勉強時間の大幅な短縮になります。意味なく長い時間読み継がれてる本なんてありません。
上記の5つを確認して、それでもどうしても耐えられない、できない、という人は誰かを探して励まし合って読んでください。それもいや、という人は演技にそれほど興味がない事を自覚して、では、なぜ、自分は役者になりたいのか自分に聞いてみてください。上記の理由以外で読まない理由がある人は私に教えて下さい。学びたいです。
また、余力があれば、脚本の書き方の本に目を通しておくとさらに理解が深まると思います。実際、役者の為の本より、脚本の書き方についての本のほうが役に立った、とおっしゃっていた役者さんもいました。私も脚本の為に演技の本を読み始めたのですが、脚本の本よりもしっくりくるものがありました。
演技の作り方は自分に合うものを選んでほしいですが、好き嫌いだけで判断するのは避けて下さい。映像については特に、一つの方法では対処しにくい事もあるかと思います。なぜならほとんどの場合、予算の都合で天候や場所の都合を優先させるため、順番をバラバラに撮影する事も珍しくないからです。「ここでこう言われた時の顔ください」なんてひどいオーダーも受け付ける必要が出てきます。いつもは使わない瞬発的な方法を使う必要があるかもしれませ。どんな場面、どんな方法が自分に何があっているのか発見していく必要があります。実力によっても最適な方法は変っていくものかもしれません。
そうして、知恵がついたところで、やっと、自分という楽器の練習ができるようになります。
次回は練習時、どんな演技方法を選ぶとしても私が欠かせないと思っている事をお話したいと思います。楽器の練習であれば自分の耳、バッティングであれば鏡のように、自分のパフォーマンスを確認するために、演技は特別に必要なものがあります。
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