文徒インフォメーション Vol.38

Index------------------------------------------------------
1)【Book】大藪春彦賞は武内涼「阿修羅草紙」、辻堂ゆめ「トリカゴ」
2)【Publisher】「マガジンハウス新書」が1月27日に創刊された
3)【Advertising】世界の2022年広告費、デジタルはテレビ(26.9%)の2倍以上
4)【Digital】講談社、集英社、小学館、KADOKAWAが米クラウドフレアに損害賠償請求へ
5)【Magazine】文藝春秋がnoteに「WEB別冊文藝春秋」を月額800円で立ち上げ
6)【Marketing】読売大阪と大阪府の協定はジャーナリズムよりビジネス優先の判断だろう
7)【Comic】「Based on a true story.」の漫画をウェブトゥーンでできないか
8)【TV, Radio, Movie, Music & More】Netflix「今、私たちの学校は…」はウェブトゥーンが原作
9)【Journalism】西日本新聞「あなたの特命取材班」はオンデマンド・ジャーナリズム
10)【Person】朝井リョウ、李琴峰、和田靜香、安田菜津紀の言葉
11)【Bookstore】東京都書店商業組合がYouTubeチャンネルを開設している
----------------------------------------2022.1.31-2.04 Shuppanjin

1)【Book】大藪春彦賞は武内涼「阿修羅草紙」、辻堂ゆめ「トリカゴ」

◎朝井まかてが祥伝社から刊行した「ボタ二カ」は日本植物学の父と言われた牧野富太郎の波乱の生涯を描き出す。
https://www.shodensha.co.jp/botanica/
1月26日付朝日新聞「とれたて!この3冊」で末國善己は「ボタ二カ」について次のように書いている。
《デビュー作『実さえ花さえ』以来、植物への思い入れが強い朝井まかての『ボタニカ』は、満を持して植物学の大家・牧野富太郎に挑んだといえる。》
《富太郎が資金難と戦いながら研究を続けたところは現代の研究者の苦労と重なり、研究に実利的な成果を求める風潮に抗ったところは、経済効率を優先する日本の現状への批判に思えた。》
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15185084.html
1月25日には重版も決まった。祥伝社 文芸出版部の公式アカウントがツイートしている。
《朝井まかてさん最新刊『ボタニカ』の重版が決まりました!
植物学者・牧野富太郎の、一途すぎる(ともすれば異常な?)植物愛が引き起こすトンデモ事件の数々。規格外の天才の生涯をお楽しみください!》
https://twitter.com/shodensha_novel/status/1485779081769947137

◎大藪春彦賞は武内 涼 「阿修羅草紙」(新潮社)、辻堂 ゆめ「トリカゴ」(東京創元社)に決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000406.000016935.html
産経新聞は1月26日付で「大藪春彦賞に産経連載小説の作家、武内涼さんら」を掲載している。武内は現在、戦国時代の厳島の戦いを舞台にした「厳島 ITSUKUSHIMA」を産経新聞に連載している。
《武内さんの受賞作「阿修羅草紙」は室町時代の京に生きた忍者たちの物語。
武内さんは受賞について「作家デビューして10年余り、こだわり続けてきた忍者物の集大成となる作品でこのような歴史ある賞をいただけて望外の喜びです。新聞連載小説『厳島 ITSUKUSHIMA』を書く励みにもなります」とコメントした。》
https://www.sankei.com/article/20220126-NYJE5RZCJNIKXP63FCC2V662S4/
辻堂ゆめがツイートしている。
《一夜明けまして、改めて大藪春彦賞受賞の何が嬉しかったかというと、初めて「一番」の賞をいただけたことです。デビュー時は二番手にあたる優秀賞でしたので。なんだかひとつ階段をのぼれた気がしました。》
《昨夜は帰宅した時点で1歳の娘は爆睡でしたが、生後2ヶ月の息子はいつも21時くらいに寝るはずがなぜか零時近くまで一緒に起きていて、いつもと違う感じをなんとなく察しているのかな、と思いました(疲れた……)》
https://twitter.com/YumeTsujido/status/1486501457293881345
https://twitter.com/YumeTsujido/status/1486500377935900674

◎1月29日付朝日新聞の書評面で柚木麻子が小学館から刊行した「らんたん」が取り上げられた。評者は小学館の「CanCam」「AneCan」をモデルとして支えた押切もえだ。
《本書は、著者の出身校である恵泉女学園の創始者・河井道と、彼女とシスターフッド(姉妹のような絆)の契りを結んだゆりと〈姉妹〉たちの人生を描いた大河小説。》
《題名の「らんたん」は、道が学んだ米国のブリンマー女子大の伝統で、上級生から下級生に知識の象徴として継承されるランターンの火のことだ。その灯をはじめ、アーク灯やツリーの光、戦後の日の光など、様々な光の描写が印象的だった。》
https://book.asahi.com/article/14534421
柚木麻子がツイートしている。
《今朝の朝日新聞さん、新刊「らんたん」押切もえさんに大きく書評していただきました!ありがとうございます。
もう新刊ではないかもしれないが、
私は押し切ろうと思う!!》
https://twitter.com/W7u8NXx595mJBux/status/1487247138887467009
「アエラドット」は1月22日付で「柚木麻子の新刊は『女子大河小説』 “インフルエンサー的な能力”もつ河井道の魅力を描き出す」を発表している。
《「河井道(かわい・みち)は普通の人でした。津田梅子のような天才でも、平塚らいてうのように教科書に載るスターでもないけれど、多くの人に好かれました。類いまれな“人たらし”だったんでしょうね」
『らんたん』の主人公、恵泉女学園の創立者である河井道について、柚木麻子さん(40)はこう語る。ちなみに同校は柚木さんの母校でもある。》
https://dot.asahi.com/aera/2022012100016.html?page=1
三刷が決まり、売れ行きも順調だ。柚木のツイート。
《らんたん重版3刷決まりました!!》
https://twitter.com/W7u8NXx595mJBux/status/1485777264310915076
河合道の「光はシェアしなければ。光を独り占めしていては、社会は暗いままですわ」という台詞が印象に残る。どうでも良いことだが、私の長女も恵泉女学園大学の出身である。

◎竹内祐一がツイートしている。
《新潮文庫5月新刊(4月末発売)で、ジャン=リュック・ゴダール監督『気狂いピエロ』のノンクレジットだった本当の原作小説を刊行します。
さらに4月半ばにはタイミングよく、4Kレストア版が劇場公開されます。
ライオネル・ホワイトによるノワール小説の傑作である原作に、ぜひともご期待ください。》
《ちなみに訳者は、早川書房版に先駆けていちはやく扶桑社ミステリー文庫版で、ギレルモ・デル・トロ監督の最新作『ナイトメア・アリー』のウィリアム・リンゼイ・グリシャムによる原作小説を手がけた矢口誠氏ですっ!。》
https://twitter.com/jXJt8KFJRey3WVg/status/1487054807860867073
https://twitter.com/jXJt8KFJRey3WVg/status/1487058684110798864
「Obsession」が翻訳されることになったのだ。ライオネル・ホワイトはスタンリー・キューブリックの映画「現金に体を張れ」の原作となった「逃走と死と」ぐらいしか翻訳されていない。これは楽しみだ。

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