文徒ジャーナル Vol.44

Index------------------------------------------------------
1)チェック機能が働かない重厚長大メディア テレビ朝日と毎日放送
2)ユニクロがロシアから撤退 在日米大使からお褒めのツイート!
3)「性暴力」は映画業界に蔓延するのか?!
4)広河隆一が国際女性デーに公開した「『文春砲』の性暴力報道」の評判
5)「ロッキング・オン」創刊メンバーの松村雄策が亡くなった
6)文化庁メディア芸術祭 マンガ部門大賞は持田あき「ゴールデンラズベリー」(祥伝社)
7)幻冬舎新書「内閣情報調査室」が絶版回収を決定!著者・今井良の盗用が発覚
8)在日ウクライナ人に説教する人々 テリー伊藤が炎上
9)ウクライナでジャーナリストの犠牲相次ぐ!A・クルコフ もツイート
10)“うそ本”呼ばわりされ閲覧禁止されたことで杉本裕明「テロと産廃」を知る
----------------------------------------2022.3.14-3.18 Shuppanjin

1)チェック機能が働かない重厚長大メディア テレビ朝日と毎日放送

産経新聞は3月9日付で「テレ朝情報番組『放送倫理違反あった』 BPO」を掲載している。
《放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は9日、視聴者からの質問コーナーで不適切な演出があったテレビ朝日の情報番組「大下容子ワイド!スクランブル」について、「放送倫理違反があった」と認定する意見を公表した。》
https://www.sankei.com/article/20220309-GUFBYSVHQRM25EKUXXY2AW3XIE/
讀賣新聞オンラインは3月9日付で「テレ朝『ワイド!スクランブル』、BPOが放送倫理違反認定…視聴者の質問半数近く捏造」を掲載している。
《制作会社に所属する総合演出の男性は、20年10月から質問の投稿者の居住地や年代の書き換えを開始。さらに担当ディレクターに、良い質問がないか問いただすようになり、20年末頃に「これしか質問がないなら質問を作って持ってくるように」と指示。21年2月頃からは、総合演出が自ら質問を作るようになり、質問作りが常態化した。》
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220309-OYT1T50219/
BPOが3月9日付で発表した「テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見」である。
それによると、制作会社に所属する総合演出の男性は過去にテレビ朝日の他の看板報道番組にも長く在籍し、重要なポジションで手腕を発揮していたこともあってチェック機能が全く働かなかったという。現場に総合演出の男性にものを言える雰囲気はなく、この男性の言うことは絶対であり、現場は指示をこなすだけだったようだ。三人いたテレビ朝日のプロデューサーも総合演出の男性に頼り切っていた。BPOは次のように書いている。
《質問パート開始後も、テレビ朝日側には関与の余地があった。先述したように本番組には、テレビ朝日はプロデューサーなど3人を配置していたにもかかわらず、局側幹部は本番組の視聴率や内外での評判が良かったことなどから、内容や進行に意見することはほとんどなく、実質的にはA総合演出にすべてを委ねていた。そこまで頼り切った背景には、A総合演出が過去にテレビ朝日の他の看板報道番組にも長く在籍し、重要なポジションで手腕を発揮していたという事情があるようだ。
仮に本件放送において局の幹部たちが、例えば、番組の最大の拠り所である「視聴者に寄り添う」ことを重視し、投稿の生データにもっと関心を寄せていれば、番組でMCが読み上げる質問の内容が“良すぎる”ことに気づいた可能性は十分にあったと思われる。しかし、実際にはそのような目配りはなされず、A総合演出に権限が過度に集中していた現実を修正できなかった。放送責任を持つ立場であることを踏まえれば、テレビ朝日は番組制作の実態を見極め、制作部門のトップに対するチェックを機能させる必要があった。》
https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2021/42/dec/0.pdf
「NHK NEWS WEB」は3月9日付で「“テレビ朝日の情報番組で放送倫理違反” BPOが意見書を公表」を公開している。
《BPOは、「複数の目でチェックする仕組みがなかった」などと指摘したうえで「質問は視聴者の関心事や、その傾向を示す重要な事実情報であり、制作者がゆがめることがあってはならない」として、放送倫理違反があったと結論づけました。
テレビ朝日は、「番組への信頼を大きく損ねる許されない事案であり、視聴者、関係者の皆様に深くおわびします。見解を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしていきたい」とコメントしています。》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220309/k10013522901000.html
果たしてテレビ朝日に報道番組を制作する資格があるのだろうか。同じことは関西のMBS=毎日放送にも問わねばなるまい。朝日新聞デジタルは3月11日付で「MBSが調査報告を公表 維新代表ら3人出演の元日特番で」を掲載している。
MBSこと毎日放送の今年元日のトークバラエティー番組に、日本維新の会代表の大阪市長・松井一郎、副代表の大阪府知事・吉村洋文、元代表の橋下徹をそろって出演させたことについて、同社は11日、社内調査の概要を公表した。
《松井氏と吉村氏への出演交渉を担い、ニュースの視点から番組内容に意見する役割を期待されていた報道情報局は「制作・編成が視聴率を狙いにいった番組であり、報道情報局としては問題と思うものの、収録したものを放送しないのは難しいと感じていた」(報道情報局長)。
結局、制作側にはこうした懸念が伝わっておらず、制作スポーツ局長らは「報道が関与しているなら内容的にも理解してもらっている、編成と状況が共有されているということは、会社としてオーソライズされている、と理解した」と話したという。》
https://digital.asahi.com/articles/ASQ3C5JTVQ3CPTFC002.html
毎日新聞は3月11日付で「維新代表ら3氏出演 毎日放送が『政治的公平性』の不備認める」(倉田陶子)を掲載している。
《報告書の概要などによると、バラエティー番組を担当する制作スポーツ局で、番組の内容を決める総合演出が「松井氏と吉村氏が出演した回は明らかに高視聴率で、(橋下氏を含めた)3人に出てもらえたら面白いと思った」と判断。12月上旬に収録した。同局に設けた番組アドバイザリーは表現や用語の点検にとどまり、制作過程など全体の問題点のチェックが働かなかった。
番組のタイムテーブルを作る総合編成局の担当者らも収録に立ち会ったが、番組担当は「橋下氏が維新と距離を保つ発言をして偏らない配慮をしていたのが感じられた」と考えた。しかし、編集には関与せず、本来の調整機能が働かなかった。検証のまとめとして「内容の多角的な精査や組織的な検討が圧倒的に不足し、組織の課題として率直に反省する」とした。》
https://mainichi.jp/articles/20220311/k00/00m/040/152000c
MBSが公開した「1 月 1 日放送『東野&吉田のほっとけない人』について 番組審議会への調査報告概要 」は、これだ。
《番組内容をチェックする役割を担うアドバイザリー制度が、実態としては表現や用語のチェックに留まり、制作過程など番組全体の問題点まで網羅する機能を果たしていなかったことも認められた。》
《総合編成部の調査では、管理職やチーフは政治的公平性についての意識は十分あったものの、現場に途中経過の報告を求めるなどの注意喚起が足りていなかったこと、番組担当者も、収録には立ち会ったものの、編集には関与せず、内容について本来の調整機能を十分に果たせていなかったことがわかった。》
(報道情報局は)《番組の内容に疑問は感じたものの、当事者意識が持てず、制作・編成現場が期待する、ニュースの視点から番組を見る、という役割に応えられていなかったことが、調査からうかがえる。》
https://www.mbs.jp/kouhou/log/bd71b00a8bd84283236af50f8d33b26e70113f15.pdf
結局、テレビ朝日も毎日放送も似たり寄ったりであることがわかる。チェック機能の働かない組織なのである。恐らく、テレビ朝日や毎日放送に限らず、他のテレビ局も同じだろう。

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