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綱渡り 黄金バランスの ナボナかな

ぶどうの摘粒は頭を使う。きれいな房の形をつくるために、ゴツゴツしている粒を抜く作業だ。
上の方を多めに、下の方を少なめに残して、粒が張った時のバランスを考えながら抜いていくのでまあまあ頭を使う。空間認識力が試される作業ともいえる。

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摘粒 Before→After

農家さんはだいたい、10時と15時に休憩をとる。そんな摘粒作業で頭を使った私はずらっと並んだお菓子を眺め、糖分を摂取しようとした。その中に、見慣れたパッケージを発見したのだった。
まるで宝物を見つけたかのように、すぐさま私が手にしたのは、「ナボナ チーズクリーム」。

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地元・横浜に住んでいた頃の、思い出の味と再会した。

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我が家ではなぜか、ナボナをもらったりあげたりすることが多かった。
どこからもらってきたのか、学校から帰ると「ナボナもらったよ」と用意されていたり。親戚の家に遊びに行くときはナボナをお土産として持って行ったり。
だからずっと横浜の名物なのかと思っていたけれど、「亀屋万年堂」の本店は自由が丘だし、そういうわけではないらしい。もらって食べておいしかったから、どこかに行くときも「お土産はナボナにしよう!」と言っていただけだった。

1963年に産声をあげたナボナ。
50年以上もの間多くの人に愛されているのは、計算し尽くされたバランスの良さがあるからに違いない。

カステラ生地は、ふわっとしていて「噛む」という表現が適切ではないように思えてくる。
メレンゲクリームは、泡のようにシュワっととけていく。脳内にはシャボン玉が飛んでは弾けていく映像が浮かぶ。
カステラの周りについた粉砂糖は、口の中で溶けるにつれて、だんだんと甘みを感じる仕組みになっている。

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季節によっていろんな味があるけれど、私の1番のお気に入りは「チーズクリーム」。そこまでチーズチーズした濃い味ではないから、クリームの軽さと合う。
たまに入っているダイス状のチーズを噛む瞬間がこれまたたまらない。これがあることでようやく「噛む」という行為が出現し、ちょっとしたしょっぱさを感じるのだ。

子供の頃は何も考えずに食べていたけれど、久々に食べたら食感・味・量……本当にすべてのバランスがとれているなあとしみじみしてしまった。そのバランスは、命綱なしの綱渡りができちゃうくらいだと思う。

少し間違えば落下する。
でも、絶妙なバランスを保っていれば、ゴールまで行き着くことができる。
ナボナにはきっと明確に定まったゴールはないけれど、少なくとも私が生きている間はずっと、綱の上にいてほしいものだ。



これでおいしいものを食べます🍴 ありがとうございます!