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ジベレリン いちごシロップの かき氷

ぶどう農家さんのお手伝いにいったときのこと。
私は作業をしながら、小さい頃に行った夏祭りを思い出した。

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山梨市では6月頃になると、ほとんどの農家さんはぶどうを赤い薬液に浸す「ジベレリン処理」というものを行う。

これによって粒が大きくなったり、種無しぶどうになったりする。ジベレリン自体は植物ホルモンの1種で、使用回数も定められており、しっかり守れば人間に害はないとされている。(参考:厚生労働省の資料

やり方は人それぞれだけれども、ジベレリンをつけた後すぐに傘かけをするところがある。これは雨傘・日傘両方の役目を果たす。
雨に当たるとその分病気になりやすくなるみたいだし、だんだん強くなってくる直射日光を浴びれば、ぶどうも日焼けしてしまう。

私はジベレリンをつける農家さんのあとを追い、どんどん傘をかけていく役割を担っていた。

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キラキラと赤い液体を輝かせ、静かにたたずむ房を探し歩く。
軸にくるりと傘をまわし、ホッチキスでカチャっと止めていく。

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このとき、傘に赤い液体がピャッとはねる。
傘は液体をはじき、しずくがしたたってくる。

「あ、いちごシロップだ」

その様子を見て、白い容器にはじかれるかき氷シロップを思い出した。
最初は不気味な色の液体としか思っていなかったけれど、一度そう思ってからはいちごシロップにしか見えなくなって、あの独特な甘さが舌によみがえってきた。

もしかしたらこの液体もちょっとベタベタしていて、ぺろっとなめたらいちごの香りがするのかもしれない……

そんなことは決してないとわかっていながら、頭の中は地元の夏祭りの、かき氷屋さんの前にタイムスリップしていた。

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何種類ものシロップがずらりと並ぶ色とりどりの光景に胸が踊る。
「何にする?」と気さくに話しかけてくれるおっちゃん。
「いちご」というと、こんもりつもった氷の山に赤いシロップをかけてくれる。

白い容器のふちに、飛び出たシロップがぽつんとはじかれている。
触って手がベトベトになる前に、ぺろっとなめる。甘い……。

かき氷についてくるのは、片端がスプーンになったストローだった。
ざくざく音を立てながら、氷をちょびちょびすくって食べる。
キーンという音が、頭の中を響き渡る。

ハッと我に帰った。
そうか、ここはぶどう畑だった。

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それからぶどうの傘を見るたび、かき氷の白い容器を思い出す。
そして、シロップの甘さが口の中にじわじわと込み上げてくるのであった。

今日は、ブルーハワイの気分。

これでおいしいものを食べます🍴 ありがとうございます!