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【今日コレ受けvol.015】追憶の5%

毎朝7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書く「遊び」を集めたマガジン【今日コレ受け】に参加しています。


「えーっと、あの先生、誰だっけ? ほら、年長さんのときの」
「●●先生!?」
「あーっ!そうそう」

週末、保育園時代のママ3人で集まった。
卒園して4年。すっかり記憶が薄れていて、先生や同級生の名前が出てこない。

でも、話は大いに盛り上がり、1次会、2次会、さらに「せっかくだから歩いて帰ろう」と、本来ならバスに乗る道を、おしゃべりしながらのんびり帰った。
視力検査の記号くらい弧を描いた、三日月がきれいな夜だった。


人間の記憶って、どれぐらい保てるものなんだろう。
そう思って、過去に調べたことがある。

諸説あるが、ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウス氏の実験によると、「起きたことの79%を、1ヶ月後には忘れている」という結果が出たそうだ。

卒園して4年経った今は、もう保育園であったアレコレの、5%くらいしか覚えていないのかもしれない。でもその5%のなかに、「共感」がくっきりと残っている。

だからこそ、子供はもちろん、推しや趣味、仕事の話でも盛り上がれた気がする。

友達って、そういうものなのかもしれない。
ヒリヒリなのか、ワクワクなのか、ドキドキなのかは分からないけれど。「同じときに、同じことを感じた」記憶があると、絆は強いのではないだろうか。


二人と別れた帰り道、夏目漱石が「アイラブユー」を「月が綺麗ですね」と翻訳したという有名なデマを思い出した。ほんの一瞬、そのデマを考えた誰かさんと、感情が重なった気がした。

三日月を見上げながら、千鳥足で歩いたあの夜の5%も、また語り合う日が来て欲しいと願う。

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