【今日コレ受けvol.022】そこにいるだけで
朝7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。
息子と初めて映画館で見た映画は、ジム・キャリー氏主演の『トゥルーマン・ショー』だ。
彼が2歳のとき、「パパママ向けに、子どもが泣いてもウロウロしてもOK」な上映会が近くの映画館で始まったから。エンタメに飢えていた私は、辛抱たまらず参加したのだ。
案の定というかなんというか、彼は上映中ほとんどの時間を階段の登り降りに熱中していて、私もずっと彼の手を引いて登り降りした。
だから半分くらい、いや1/4くらいしかストーリーが分からなかった。
でも、何故か満足だった。
思うに、私にとって映画館は作品を見るだけの場所ではなく、非日常な空間にいけたら、日常と違うことで脳内を満たせたら、それで半分満足なのかもしれない。
特に当時は、仕事と育児以外の世界にいるだけで満たされるくらい、切羽詰まっていた。
だからほかにも、田植え、収穫、しいたけ狩り、マトリョーシカ作り、レキシの子供歓迎コンサートで稲穂をふる…など、実にさまざまなイベントによく参加した。
10歳になった今、彼はほとんど覚えていないだろう。親の自己満足に子供を付き合わせた、とも言えなくはない。
でも、私はリフレッシュできるし、たとえ5秒でも彼が楽しめた瞬間があったなら、それでいいんじゃないかなと思う。
そして、もしも再び同じ体験をする機会があったなら、そのときに、「昔一緒にきたんだよ。そのときのキミはね、、」と語らうのが、もしかしたら最も幸せな瞬間なのかも、と。
少し前、『トゥルーマン・ショー』をテレビ放映していたときに、彼の初めての映画体験であった階段の登り降りを、はにかんだ笑顔で聞いている息子を見てそう思った。
なにもかも、親子が同じレベルで楽しめなくてもいい。でも、舞台も、映画も、おいしいものも、やっぱり彼にも味わってほしい。
というか、一緒に楽しみたい。
最近は息子のほうが母よりも詳しくて、手を引いて、教えてもらうことのほうが増えている気もするが……。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?