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【今日コレ受けvol.067】幸せのハイライト上映

朝7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。

昔、好きだった人が、「雨の日曜日っていいよね」と言った。それは、細い糸のような雨がさらさらと降る日だった。窓の外を眺めながら、ぽつりとつぶやいたときの、その横顔の輪郭を今でも覚えている。以来、日曜日に降る雨が好きになった。日曜日に降る雨のことを、私はそれ以外の曜日の雨より愛しいと感じる。

ピアノと雨と電線と【さとゆみの今日もコレカラ/第76回】|CORECOLOR


子供の頃見たTVアニメの主題歌には、「楽しい」が閉じ込められている。

きょうだい3人、アニメがはじまる5分前には、テレビの前に体育座りをした。誰が一番見やすい場所に座るか、という肘での押し合い。引き戸の向こうからは、お母さんがごはんを作っている音と匂いがする。

おばあちゃんが奥の部屋で時代劇を見ている音や、犬のハナコが、銀色の大きな器に首輪をカチカチ当てながらごはんを食べる音も。遠くで。


もうすぐ、前回の物語の続きが見られる。
「悪者に捕まった主人公はどうなったんかな」
「突然の嵐にあったあの船は、無事島にたどり着けたんやろうか」
1週間溜めに溜めたハラハラを、ドキドキを、兄と姉と熱く語り合った。

そして、主題歌が流れる。そのとき、期待は最高潮を迎えていたのかもしれない。思い切り歌った。大合唱だ。
だから今でも、当時見ていたアニメの主題歌はほとんど歌える。


好きだった人が、好きだと言ったものが好きになる。

そう読んで頭にふと流れた、TVアニメの主題歌。
どうしてだろう、と思った。
それはきっと、そのどちらもが、幸せな記憶のトリガーだからではないか。その歌は私のなかの、「家族だんらん」のトリガーだったのだ。


それにしても不思議なのは、思い出すシーンが、私の視点ではないこと。
3人きょうだいの背後から、小さくまあるい背中と、その前に映るTVを見ている。つまりこれは記憶ではなく、脳内で生成された映像なのだろう。

いわば、自分で編集した、人生のハイライトムービー?
好きだった人が、好きだと言ったものに出会ったら。アニメの主題歌が流れたら。

パッと客電が消え、頭の中のスクリーンいっぱいに、『幸せの記憶』という名のミニムービーが映し出される。

監督は自分、観客も自分。
どんな傑作映画よりも、楽しい上映会の幕開けだ。


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