見出し画像

【今日コレ受けvol.044】言葉で安全圏をつくる

にゃんわんぴょんだけじゃなく、恋人同士の間では、二人にしか通じない言葉がたくさん発明される。過去にどれほどクリエイティブな隠語を聞いたことか。
二人の間でしか使わない言葉が発明されると、その世界は無二のものになる。

恋人たちの秘密の会話【さとゆみの今日もコレカラ/049】|CORECOLOR

県守、下筱見、栗柄。
唐突だが、これらの漢字を読めるだろうか。
私は読めなかった。

答えは、アガタモリ、シモササミ、クリカラ。
すべて兵庫県、丹波篠山地域の地名だ。

「実はこの界隈は、源氏が平氏から逃げのびた際に『隠れ里』となった地域で、あえて地名を読みづらくして、よそ者が来たらすぐ分かるようにしていたんです」
丹波篠山の黒豆畑の育成・収穫体験で、年に数回通っていた頃に教えてもらった。

つまりは地名が、「よそ者センサー」となり、村の人の安全を担保していたということだろう。

お互いしか知らない言葉で安全圏をつくる。
方言も、広い意味ではそうなのかもしれない。
特定の業界でのみ語られる専門用語も。

でも、だからこそ隠語は、それを知らない人を傷つけることもあるのでは? 意味が分からない人に、疎外感を感じさせてしまうのではないか。
と、ふと。


先日、「いかにして子供に言葉を育むか」がテーマの取材があった。
さまざまなテクニックを聞いたが、最も大切なのは、家族がたくさん話しかけることだった。
スマホを置いて、目を合わせて。

液晶画面を見ながらの生返事は、近くにいるのに、相手に疎外感を感じさせてしまう。いや、近くにいるから余計かも。

もっと息子とたくさん話をしたい。そして、私たち家族の隠語もつくろうと思った。
「その意味を知らない人の前で使うときは、きちんと説明するんだよ」という言葉も添えて。そうなると「隠語」ではないという話もあるが、そうすれば少なくとも、無意識に相手をはじかなくて済む。加えて、彼の安全圏を広げることにもつながるのではないか。

息子はこれからどんどん広い世界に出て、いつか社会に出る。
そのときに備えて、絶対に安全であり、「いつでも帰って来れる場所」だと思える家を、家族をつくることが、親の役割だと思ってきた。

そこに言葉が果たす役割は、小さくないのかもしれない、と改めて。息子に、言葉に、大切に向き合っていきたい。

いつの日か息子が、彼の「大好きにゃー」に囲まれた、安全な場所をつくれるように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?