【今日コレ受けvol.054】誰も知らないアップデート
朝7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。
「昔はみんな大晦日に美容室へ行って、髪をセットしてもらってたの。それから、服も下着もまるごと新調して、新しい年を迎えたものよ」
先日さとゆみゼミクラスの忘年会で、憧れのマダム、峰子さんが言った言葉だ。
それを聞いてわたしの頭に浮かんだのは、6月に神社で行われる神事「夏越の祓(なごしのはらえ)」に使われる「茅の輪(ちのわ)」だった。
そうか、と合点がいった。
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「夏越の祓」は、お正月から半年分の罪や穢れを祓って、「残りの半年も健やかに、清らかに過ごせますように」と祈る行事だ。茅の輪はその際に、参道や鳥居に取り付けられる、茅(ちがや)という草で編んだ直径2mほどの輪。
参拝者はこの輪を、「はらへたまへ きよめたまへ まもりたまへ さきはえたまへ」と唱えながら8の字に3回くぐり抜け、罪や穢れを祓う。
(※地域や神社によってやり方はいろいろあるようです)
常々、「自分が神社に行くのって、神様に祈るためだけじゃない気がする」と思っていたのだけど、茅の輪と峰子さんのお話。その2つが頭の中で重なって初めて、ハッとしたのだ。
「区切り」をつけにいくのだと思う。
なんの区切りを? 「ここからは違う自分になる」という区切りだ。
この輪をくぐったら、罪や穢れがなくなった自分になる。古い服を脱ぎ捨て、髪を整えたら、新しい年にふさわしい自分になる。
そう自分に思い込ませ、望む未来を引き寄せる。
日常の延長線にあっては、そうはなれない。
だから演出するのだ、非日常を。儀式を。
神社にいくための長い階段も、手水舎で手を洗うのも、鈴を鳴らして手を合わせるのも。
すべて儀式、と言ってもいいのかもしれない。
そして、そうであれば、自分でもつくれるのではないか。
玄関で靴を左から履いたら、長距離を颯爽と歩ける自分。パソコンのキーボードの隙間をピカピカにしたら、もっとうまく書ける自分。
1日のはじめに香りのいいハーブティを飲んだら、もっと健康な…などなど。
2024年は自分のなかで、そんなルールをたくさんつくってみたい。誰も知らない儀式で区切り、こっそり己をアップデートする。
そんな毎日、ちょっと楽しそうだ。