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【今日コレ受けvol.019】愛のぶつかり稽古

毎朝7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。


おそらく地球上でいちばんの好きぴ、子供に親が愛情を伝える方法の正解はなんだろう。


ライターの仕事をはじめた時、しばらく父に内緒にしていた。教師だった父が、言葉に並々ならぬこだわりがある、と知っていたからだ。

父は、学校で配布する国語プリントも、できあいを使わず、自分でイチから作っていた。漢字の成り立ちから、辞書で調べて図解していた。
筆圧の強い字で書かれた原稿を、母は今も大切に保管している。

だから「違う仕事に就いていた私が、ライターという言葉を扱う仕事をはじめるなんて、怒られるんじゃないか」と少し怖かったのだ。


そもそも、家庭に事情があったり、「落ちこぼれ」と言われる生徒さんの面倒を徹底してみる父は、一部の人から神聖視されていた。
「お父さんはすごいね」と、周りの大人にしょっちゅう言われて育った。

だからなのか、「人としてちゃんとしていないと、そして勉強もできないと、父に愛されない」と、心のどこかでずっと思っていた気がする。


それゆえに息子が生まれたとき、「愛情の伝え方」に迷った。この子には、「どんな自分でも親に愛されている」と感じて育って欲しい、と切に思ったからだ。

考えた末に私がとったのは、「衝動的に愛を伝える」作戦。

とにかく、息子を「好きだ」「かわいい」と思った瞬間に、「大好きじゃーーーーーーー!」とか叫びながら突進して抱きしめる。思いきり。

ちょっと、変態的かもしれない。
でも、特に理由がなくても愛を感じていることを、態度で、言葉で、伝えたかった。


そんなぶつかり稽古のような愛情表現が効いたのかどうかは分からないが、10才になった息子は今、間違いなく、「ぼくは親に愛されまくっている」と感じていると思う。

とにかく、自信満々だ。

時々、「今ぼくをギューしていいよ? チャンスだよ?」と腕を広げて来たりもする。

「これは辛抱たまらぬ!」といった感じで抱きしめると、「うんうん、よしよし」と、私の頭をなでて満足気な顔をしている。


私の「愛情の伝え方」が正解だったかは分からない。ただ少なくとも、自信を持って「今ぼくをギューしていいよ?」と言える彼に育ってくれて良かった。

しかしこれ、同じ感覚でもし将来のパートナーにやったら、相当ウザがられるのではないだろうか…。

そこはごめん、と詫びるしかない。

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