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尾道にて①

駅のベンチで本を読んでいた。古本屋 弍拾dBの開店時間、23時まで時間を潰すためである。チェーン店はなく(ファミレスもカラオケもない)、商店街の店のほとんどは18時で閉まる町。お酒を飲めないくせに居酒屋に入るわけにもいかず、やっと探し出した駅前のミスタードーナツは20時閉店。その後は目的地の近く、渡し舟の港のベンチにいたのだが、11月下旬の寒さにあっさり負けを認め、10分歩いて屋根と壁のある駅まで戻ってきたのだ。


行き交う列車や平日のサラリーマンの往来に合わせるかのように、さくさくと読書も進む。23時が近付いて来たので、駅を出発。オープンと同時に入店する前のめりな姿勢が恥ずかしい気がしたので、開店10分後に到着するように歩く。暗く長いアーケード街の奥の奥、元診療所の古い建物にオレンジ色の灯りが灯っていた。恐る恐るドアを開け店内に入ると、所狭しと並べられた本棚と積まれた古本と共に紙(古本独特の)の匂いが押し寄せる。23時にも関わらず、奥には既に2人連れと3人連れが入店しており、店主は客と談笑していた。そそくさと古本を眺めつつ、店内の数少ない新刊コーナーの中から世田谷ピンポンズの小冊子とカセットテープ、店主の著作を購入する。ずっと話してしまっていてすいませんね、という店主と軽く雑和。常連化や馴れ合いは希望しないが、こういうタイミングで軽妙洒脱で小気味良い語りが出来たらと常々思う。古本の森から24時のアーケード街に漕ぎ出でて、足早に宿に戻った。

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