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十万倍速の男 完結編

仮想現実

藤堂は時間があれば、リラックスできる音楽を聴き体感を重ねていった。

そうだ、あの時間が制止したかのような状況だ。

回数を重ねるごとに新たな発見がある。

時間のスピードをコントロール出来るようになったのである。

次に彼が体感した事は、藤堂自身も自分自身の頭がおかしくなったのではないかと思った出来事だ。

いつものように音楽を聴き、いつものように自分が時間の流れをコントロール出来る状況に入った瞬間、部屋の様子がガラリと変わつた。

どこかの会議室のようだ。

藤堂はその会議室を上から俯瞰している感じなのである。

「な、な、何だぁ!

こ、こ、これは‥?

いったい、俺の身体はどうなってるんだぁ?‥」

「俺は、浮いているのか?」


会議室にいる数人の人々は、藤堂の存在に全く気付いていないようだ。

しかも、藤堂は結構大きな声で叫んでいる。

藤堂は何とか気を取り直し、その情況を受け入れようと頑張る。


すると会話が聞こえるようになった。


内調第一会議室である。


「うーむ‥

映像を見る限り、認めざるを得ないな‥

米国のヘンリーに連絡を取ってくれ」

「はい、前回と同じ処理手順で宜しいですか?」


「ああ、・・・またか‥

現代科学では理解不能事案か‥」


日本には、現代科学で理解不能な事案に関して、それを徹底的に研究する機関は無い。

また、米国のCIAに該当する機関も無い。

内調、警視庁公安部など、それらしいものはあるが、比較にならない。

予算が無いから‥というより、そのような事に多額な予算は割けないということであろう。

しかし、世界警察、世界のリーダーを自認する米国は、そのような呑気なことは言ってられない。

知りえた情報を共有すると言う事を条件に同盟国から資金的協力を得ているのである。

当然、その援助額に応じた情報しか提供されない。

その為、高度な能力を持った者、その能力に関する情報に関しては殆ど米国を出る事はない。つまり独占である。


共有される、あるいは問い合わせが多いのはC国、R国、その他独裁国家のスパイ活動に関する情報に終始している。


藤堂は、教授の手配により米国へ渡り、VIP待遇で、その能力の完全解放に向けて、ありとあらゆるアプローチが為される。

そして、藤堂は国際的テロリストの殲滅、

R国、C国の謀略を未然に防いでいるのである。


ある日、藤堂は請われるままにニューヨークからサンフランシスコ行きの航空機に乗った。

多忙を極めていた藤堂は離陸してすぐに眠りに落ちた。

自分の能力に過信したのか何の違和感も感じる事は無かった。


しかし、離陸直前に副操縦士が心不全を起こし急遽交代要員がその任を務める事になった。


藤堂が違和感を感じ目を覚ました時、藤堂の心象風景には目の前にニューヨークの高層ビルがあった‥

距離は10〜20mくらいだろうか・・・


「いくら、俺でも間に合わない・・・」


「ゆかりー!

夕食よー!ゲームはそのくらいにして、

早く降りてらっしゃい」


「はーい、

あーあ、藤堂も死んじゃったか・・・

やっぱり、おじいちゃんキャラはダメなのかなぁ・・・

次は、子供キャラを主人公にしようかな・・・

PCをシャットダウンしてと・・・」


すると、パソコンの画面が再起動する・・・


「えっ?!なに?・・・」


パソコンの真っ暗な画面に

「私は死んでいませんよ。

私には人類を守ると言う責務があります。

私は戻ってきます・・・」


ゆかり

「うそ!?・・・」


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