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夢の映画館

私は、気持ちがしんどい時によく思い出すことがある。

目の不自由な人たち、耳の不自由な人や車いすの人、子育て中の人ー。様々な理由で、映画館に行くことをためらってしまう人を迎えるための夢の映画館が田端にはある。

耳の不自由な人は映像や字幕で映画を楽しむ。じゃあ、目の不自由な人はどう楽しむ?実は、音声ガイドというものがあるようで、それをイヤホンできいて楽しむそう。音声ガイドは、映像を細かく説明してくれる。

そんな夢の映画館で、とある映画の監督のトークショーが行われた。私は、このトークショーでの監督の語りを時々思い出すのだ。

監督は、その音声ガイドというものの制作にも携わったそう。そこでの驚きを語っていた。

「映像の説明をするときに『悲しい顔をした』という言葉を使わない。『視線を落とした』という状況だけを説明する。」

どんなに監督が悲しい顔をするように、と意図して製作しても、受け取る私たちが必ず悲しい顔をしていると受け取るとは限らない。しかし、音声ガイドで「悲しい顔をした」と説明してしまうと受け取り方の自由を制限することになる。だから、例え監督であっても音声ガイドでは感情を提示しないのだそう。

その話を聞いた時、とても面白いと思った。
そっか、物事を受けてどんな感情になるのかは個人によって異なるものなのか…。自由なのか…。
文章にすると、「そんなの当たり前じゃん」と思ってしまう。
でも、しんどい時には忘れがちだ。

そこから、しんどい時には思い出す。
「あらら、感じ方は自由なのに貴方ったらわざわざ辛い受け取り方しちゃってません?」と考えなおす。

もちろん、ポジティブに考え続けるのも疲れるので用法用量は考えものである。落ち込む夜も人間には必要だ。ただ、私は落ち込みやすい「モヤモヤ姫」を心に飼っているので、時々姫に問いかけるのだ。
「お嬢さん、今日の出来事で落ち込んでいるのね。でも、こういう風に受け取り方を変えてみてはいかがかしら?」なんてね。


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