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井の頭公園の散歩(22)「オオタカがいる井の頭公園」

さて、井の頭公園の散歩もそろそろ終わりに近づいてきましたが、先日オオタカの気になる研究報告がありましたのでお知らせします。オオタカは井の頭公園にも姿を見せるだけに、興味ある研究テーマでした。
 研究報告のタイトルは、「営巣林への立入制限は都市近郊に生息するオオタカの繁殖成功を促進する」 (日本鳥学会誌, 71巻 2号 p.185-191. 板谷 浩男, 夏川 遼生, 守屋 年史)です。

 「従来、オオタカは人による攪乱に敏感で、人の活動が少ない地域で繁殖する種と考えられてきました(Kenward 2006)。しかし、近年、日本や欧州では都市部で繁殖を行うようになり(Kenward 2006; Natsukawa et al. 2017)、バードウォッチャーやカメラマンには、ストレスに強い鳥?と誤解を生じさせるような状況が発生しています。東京都でも都市部のオオタカ繁殖地の多くが観察者や撮影者によく知られており、立入制限のない巣付近には多数の観察者や撮影者が常に集まる状況があります。
 そのため、今回の研究では東京都で繁殖するオオタカを対象として、人の接近が難しい巣と容易な巣の繁殖成功率を比較することにより、このような人の接近がオオタカの繁殖に影響を与えているかを確認するとともに、繁殖の成否に関する原因について報告しましたので紹介します」

日本鳥学会誌, 71巻 2号 p.185-191. 板谷 浩男, 夏川 遼生, 守屋 年史

 人の接近制限がある場所とない場所で繁殖率が違うのかという調査です。三鷹市・武蔵野市を含む多摩エリアの18ヵ所の巣のサンプルでの結果は、「人の接近が制限された巣は繁殖成功度が高い」、接近制限のない場所と比較して約3倍の差が出たことを伝えています。
 研究報告の最後「人と野鳥の正しい距離感とは」という見出しの本文に、

「(前略)近年の技術の進歩によりデジタルカメラの性能が向上し、誰でも手軽に野鳥の撮影ができるようになってきました。しかし、一方で、野鳥を撮影するということは、対象となる野鳥に対して、大きなプレッシャーを与えている可能性があります。特にオオタカなどの猛禽類は些細なことで繁殖を放棄してしまうことがあります。カッコイイ猛禽類や美しい野鳥を撮影することは、野鳥と関わる中でとても楽しいことですが、何気なく双眼鏡やカメラをむけるだけでも、対象となる種は警戒し緊張してしまいます。撮影する際、観察する際に、頭の片隅で対象としている野鳥のことを考えて、一歩だけでも身を引いてみてください。それが、その種を保全することに繋がるかもしれません」

日本鳥学会誌, 71巻 2号 p.185-191. 板谷 浩男, 夏川 遼生, 守屋 年史

と記されています。

バードリサーチニュース



ぶんしん出版+ことこと舎便りVol.22 2023/3/17」掲載

このコラムは、(株)文伸 が運営する自費出版専門工房「ことこと舎」が毎月発行しているメールマガジン「ぶんしん出版+ことこと舎便り」からの転載です。メールマガジンをご希望の方は、ことこと舎のお問い合わせフォームから、メルマガ希望とお知らせください。


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