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井の頭公園の散歩(7)井の頭弁財天周辺は江戸の香りがする

 江戸時代に井の頭が人気スポットになったのは、風光明媚はもちろんだが、井の頭池が神田上水の水源であることと、その水源を守る井の頭弁財天があったからだ。
 弁財天は水の神様であり、芸術や学問の全般の神様であり、「農業や穀物の神様である宇賀神と集合して五穀豊穣の神様」でもあり、財産を授ける神様である(天台宗 井の頭弁財天HP)という実に多方面にわたる神様なのだ。そのため、江戸時代に建立された灯篭や道しるべなどには、御利益をあずかりたい方々や感謝のしるしとして、寄進者の名が残されている。
 井の頭弁財天の参道入口の黒門にある道しるべには歌舞伎役者や芝居小屋の名があり、弁天堂に下る階段手前の灯篭には江戸紫の関係者の名がある。武蔵野周辺に紫草が多く栽培されていたことと神田川の水を使っていることへの感謝なのでしょう。ということでこの灯篭は『紫灯篭』と呼ばれている。
 階段(両国講中寄進)を降りると、弁財天入口前に大きく日本橋と彫られた灯篭が出迎えるが、この灯篭には日本橋の大店の店主の名が並ぶ。今も存続している鰹節問屋「にんべん」の伊勢屋伊兵衛の名もある。弁天堂手前の石橋は、湯屋講中の寄進なので、お風呂屋さんの組合からの寄付となる。
 というわけで、井の頭弁財天とその周辺は、江戸の香りがする場所になっている。井の頭池は東京都の管理だが、池の中に突き出た井の頭弁財天は別当寺(管理する寺)の大盛寺の所有。なお、弁天堂は2022年(令和4年)の2月までの屋根の補修工事で、その間蚊帳の中に入っている状態になっている。


メールマガジン『ぶんしん出版+ことこと舎便り』Vol.7 2021/12/15

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