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メタバースの勉強会しました。メタバースとマーケティングとの関係について。

分析屋の下滝です。

3月にメタバースの社内勉強会ということで、「メタバースとマーケティング」という内容で発表しました。作った資料の一部を共有したいと思います(社内に関係のある箇所だけ除いています)。

時間があればさらにもうちょっと整理して記事にしたいと思います。

メタバースの事例

まずは、メタバースの事例をもとに、どのようなものが事例とされているのかを話しました。

クロストレンドの記事を参考にしました。

この記事では次のようにメタバースが特徴づけられています(太字は著者による)。

インターネット上の仮想空間「メタバース」が、消費の場として成立するか注目を集めている。ユーザーの分身であるアバターがバーチャルの街を歩き回り、買い物人との交流を楽しみ、創作物の販売や仕事でお金を稼ぐ。近い将来、こんな過ごし方が広がるかもしれない。マーケティング上も重要になる可能性があるとして企業も付き合い方を探り始めている。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00577/00007/?i_cid=nbpnxr_top_new_T

この特徴をもとに、次のようにキーワードを抜き出しました。

続いて、この記事で紹介されている5つの事例を要約しました。

この事例の要約にあたり、マーケティングの視点に関係付けるために、各事例がマーケティングにおける4PのフレームワークでのどのPに対応するのかも考えました。
・製品(Product)
・価格(Price)
・プロモーション(Promotion)
・流通(Place)

『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』より

まずは、大丸松坂屋百貨店の事例です。4Pの「流通」にあたると考えました。

どこの企業?:大丸松坂屋百貨店
どんな仮想空間?:仮想空間に「バーチャル大丸・松坂屋」を期間限定オープン。仮想空間のイベント「バーチャルマーケット」で出店。
何をした?:通信販売する商品の3Dモデルを用意し、立体的に伝える。15種類の食品の3Dモデル。バーチャルでカタログを表示する。2700点以上のグルメを取りそろえている。
何ができる?:
来店客の分身であるアバターは、3Dで表示される食品を手に取って見ることができる。
・そのまま電子商取引(EC)サイトに移行して購入できる。
どんな顧客体験が新しい?:平面的な画像しか使えないECと違って、肉の質感やボリュームを立体的に伝えることができる。

次に凸版印刷です。同じく「流通」であると捉えました。

どこの企業?:凸版印刷
どんな仮想空間?:スマホアプリ「メタパ」を提供。仮想空間上のショッピングモール。デジタル機器や雑貨などをそろえる体験型店舗「b8ta(ベータ)」を仮想空間に再現。
何をした?:異なるカラーの商品をメタパで販売し、売れ行きに応じて実店舗向けの生産量を調整するといったテストマーケティングの場としての使い方も想定する。
何ができる?:
消費者はアバターとして各店舗を見て回れる。
・商品を選択すると拡張現実(AR)で大きさなどを確認できる。
・気に入った商品はECで購入できる。
どんな顧客体験が新しい?:担当者によると「ECでは味わえない買い物の楽しさ」がメタバースにはあるという。「仮想空間ではアバター同士で会話ができ、友人と待ち合わせて一緒に買い物を楽しめる。」

次は、ユニバーサルミュージックです。4Pのプロモーションにあたります。

どこの企業?:ユニバーサルミュージック
どんな仮想空間?:仮想空間のイベント「バーチャルマーケット」の「渋谷空間」
何をした?:仮想空間の渋谷にアーティスト「東京事変」のベスト盤の広告を出した。
何ができる?:
広告が見れる。
どんな顧客体験が新しい?:
・担当者によると「現実では実現できない没入感を味わってもらうことができた」とのこと。

次は、視点によりますが、個人の歌手です。4Pの流通と製品・サービスにあたると捉えました。

どこの企業?:個人の歌手
どんな仮想空間?:バーチャルライブプラットフォームでの「ドーム」と呼ばれり仮想のライブ会場。4時間で8000円ほどのライブが多い。
何をした?:歌を披露
何ができる?:
客席のアバターはリアルな世界の動きに対応し、ペンライトを振ってライブを盛り上げる。
・任意で「投げ銭」で支払うこともできる。額に応じてステージ上に花火を打ち上げたり、花束を投げ入れたりしてライブに演出を加えることができる。
どんな顧客体験が新しい?:なさそうです。

最後に、こちらも視点によりますが、三井物産の米子会社のムーンクリエイティブラボです。4Pの製品・サービスにあたると捉えました。

どこの企業?:三井物産の米子会社のムーンクリエイティブラボ。
どんな仮想空間?:「バーチャル渋谷」。ハロウィーンイベント。KDDIが開発。
何をした?:アバター姿で会場の人流をスムーズにする仕事を募集。
何ができる?:
仕事して、金を稼いだ。
どんな顧客体験が新しい?:仮想空間での現実世界でもありそうな金稼ぎ?
記事によると「今後は秩序を保つための『警察官』や、メタバース内の事象を取材する『記者』も出てくるかもしれない」と予想されています。

あらためてメタバースとは

ここまでを踏まえて、メタバースという言葉を取り上げました(Wikipedia等を参考に)。

  • メタバースは「メタ(超越、高次)」と、「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた言葉。

  • もともとはSF作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表したサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』に登場する架空の仮想空間サービスの名称とのこと。

  • 世界で最初にメタバースが注目されたのは2000年代中盤かららしく、2006年頃に起こった「メタバース的」な仮想世界サービスの先駆けと言えるSecond Lifeのブームがきっかけ。

  • Facebookが社名を「メタ」に変えると発表してから再び良く聞くようになったとされる。

メタバースの枠組みをマーケティングの視点で考える

続いて、メタバースの枠組みをマーケティングの視点で考えました。

4の階層で考えました。
・新しいコンセプト
・新しい機会
・新しい取り組み
・4Pの新しい選択肢
の4つです。

まず、メタバースという新しいコンセプトが、新しい機会を生み出すと考えました。新しい機会とは、新しい顧客体験を提供できる機会、新しい顧客価値を提供できる提供、新しい顧客ニーズに対応できる機会などです。体験、価値、ニーズは同じような意味合いです。

企業としては、この機会に対し、新しい取り組みを行うビジネス上の動機が生まれるとしました。以下の二つに分けました。
1.新しいビジネス、製品、サービスを提供する取り組み
2.既存製品、サービスのさらなる最適化する取り組み

それぞれで、4Pの新しい選択肢に対応すると考えます。
1つ目は、メタバースの中と外での新たな製品やサービスの追加です。
 ・4Pの製品(Product):顧客への新しい問題解決
2つ目は、既存のPにおける選択肢の追加です。
 ・4Pの流通(Place):顧客との新しい接点
 ・4Pのプロモーション(Promotion):顧客への新しい宣伝場所
 ・4Pの価格(Price):なし

参考として、各Pでの考慮要素を紹介しておきます。

『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』より

以下では、流通、プロモーション、製品とサービスについて順番に議論します。価格については思い浮かびませんでした。

流通の視点

スライドをそのまま載せます。もう少し厳密性は必要かもしれません。

ここでは、これまでの販売場所の拡張と考えました。顧客との新しい接点の追加です。新しい接点が顧客にとって価値ある体験となるのかどうかが決め手かもしれません。
<これまで>
・実店舗:例として、大丸・松坂屋
・ECサイト:例として、大丸・松坂屋のオンラインショッピング
<追加>
・仮想空間:前述の事例として、バーチャル大丸・松坂屋

プロモーション

スライドをそのまま載せます。もう少し厳密性は必要かもしれません。

これまでの宣伝場所(コミュニケーションチャネル)の拡張と考えました。
<これまで>
・ネット:サイト上の広告
・物理空間:紙媒体やTVなどその他の媒体の広告
<追加>
・仮想空間:仮想空間上の広告。前述の事例として、仮想空間の渋谷にアーティスト「東京事変」のベスト盤の広告。

製品とサービス

スライドをそのまま載せます。もう少し厳密性は必要かもしれません。

メタバース内と外での新たな製品やサービスの出現です。
<これまで>
・物理空間:ライブ、バイト求人情報誌、人流をスムーズにする仕事、Python技術者育成サービス
・ネット:ライブ配信(?)、バイト検索サイト
<追加(外)>
・物理空間:メタバース技術者育成サービス
・ネット:ライブ配信(?)、メタバース内で行うバイトを検索できるサイト
<追加(内)>
・仮想空間:前述の事例として、バーチャルライブ
・仮想空間:前述の事例として、アバター姿で会場の人流をスムーズにする仕事

メタバースを取り巻くプレイヤーたち

続いて、少し視点を変えて、メタバースを取り巻くプレイヤーとして何が考えれるのかを紹介しました。どのような事業が可能なのかどうです。思いつくものを列挙しました。

  • プラットフォームとしてのメタバース(仮想空間)を提供する企業。

  • メタバースのためのデバイスを提供する企業。

  • メタバースを活用してマーケティングを行う企業。

  • メタバースを活用したマーケティング支援(コンサル、代行)を行う企業。

  • メタバースを活用したマーケティングのためのツールを販売する企業。アクセス解析、行動解析、条件ベースのプロモーション。

  • メタバースを活用して業務効率化を行う企業。デジタルツイン。

  • メタバース内の経済活動を仲介する企業。

  • プラットフォームとしてのメタバースでの拡張機能(プラグイン等)を提供する企業。

  • メタバース自体の構築代行をする企業。

  • メタバース構築を容易にするノーコード・ローコードツールを提供する企業

  • メタバース内の部品となる3Dのモデルや音楽、エフェクト等の構築を代行する企業。

  • メタバース内の部品(素材)を売買、検索できるようにするサイトを提供する企業

  • メタバースの空間設計のデザインやUXを専門に支援する企業。

  • 特定の用途のためのメタバースを個々のユーザーに提供するサイトを提供する企業。メタバース as a Service。

  • 構築済みのメタバース自体を販売する企業、探しやすいように検索機能を提供する企業。

  • メタバース間の移動(連携)を可能にする企業、APIや標準を決める企業。

  • メタバースを運営し、販売場所を提供する企業。

  • メタバースを他のコンセプトと関係させて価値を出していく企業。DX、AI、データ分析、UX、ブロックチェーン、NFT。

  • メタバースに参加する個々のユーザー

少しだけ整理して図にまとめました。

メタバースの分類とパターン

さらに話は少し飛んで、メタバースの分類とパターンとして次のようなものが考えられるのでは、と紹介しました。

ここでは4つのパターンがあると考えました。分類基準はもう少し考える必要があります。
・オーダーメイドのメタバース(個々の企業が構築)
・特定用途のメタバース(機能が限定されている)
・特定の機能に特化したプラットフォームとしてのメタバース
・プラットフォームとしてのメタバース

・オーダーメイドのメタバース(個々の企業が構築):メタバースでの自社製品の販売や販売促進のために使う。
 ・事例では、凸版印刷の「メタパ」
 ・ECで言えば自社のオーダーメイドECサイト

・特定用途のメタバース(機能が限定されている):メタバースの利用を販売する(メタバース as a サービス?)
 ・事例では、バーチャルライブプラットフォームでの「ドーム」。
 ・ECで言えばBaseなど。

・特定の機能に特化したプラットフォームとしてのメタバース:メタバースへの参加権利を販売する。
 ・事例では、バーチャル大丸・松坂屋。
 ・ECで言えば、楽天市場と楽天市場に出店する企業
 ・物理空間で言えば、デパートとデパートに出店する企業

・プラットフォームとしてのメタバース:メインは広告を販売する? メタバース内の素材の販売や手数料?
 ・MetaのHorizon Worldsや、Decentraland、The Sandbox、ZEPETO。
 ・SNSで言えばインスタやツイッター。

おわりに

3月に行ったメタバースの勉強会の内容を共有しました。マーケティングに関わりそうな視点からメタバースを議論しました。

また、メタバースを取り巻く事業として何がありそうなのかも紹介しました。

最後に、メタバースの分類とパターンとしてこういうものがあるのではということを紹介しました。

資料を書いていて、厳密さが足りない点、深堀りしたい点など、色々出てきましたので、機会があれば続き(今回の内容のさらに深堀りも)を書きたいと思います。スキを押してもらえるとモチベーションになるかも。。。