ホシザキ(6465)
こんにちは。
このペンギンマーク、見覚えありませんか?
私の場合、昔スーパーでバイトしてた時によく目にしました。
さて、なぜ今回この会社を取り上げたのかということなんですが、私の大切な情報源(笑)であるNewspicksでこんな記事があったからなんですね。
(ちなみに私は無課金ユーザーなので記事は読めません)
これ見て気になった、ただそれだけです。笑
「外国人が買ってる」らしいのでまずは株主構成を見てみましょうか。
3割です。まあまあ占めていますね。
ついでに企業概要も見て会社の概要をざっくり掴みましょう。
冷蔵庫というより、業務用厨房機器の大手です。
製氷機世界シェア3割ってなかなかすごい。
また、M&Aに積極的なようで、イタリアの製氷機メーカーを買収したそう。
コロナ禍からの正常化局面で伸びそうな会社ですね。
とはいえこの会社を海外ファンドがなぜ買うのか。
そのあたりも考えながら見ていきたいと思います。
それではいきましょう。
(以下に示す資料は、断りなき場合、同社HPからの引用です。)
まずは事業概要を理解することからですね。
何をつくっているのか?
製氷機、冷蔵・冷凍庫は有名ですが、製パン機器や、味噌汁などのドリンクサービス機器などいろいろとつくってます。
統合報告書2022ではこのあたりの数字を出してくれています。
ホシザキってグローバル企業なんですね(素人か)
日本がほとんどかと思っていましたが違うようです。
具体的に数字を見てみます。
左のグラフ。
製品別売上高構成比では製氷機、冷蔵庫で44.2%を占めています。
ここが主力ですね。
また、保守や修理事業で18.4%(全体の約5分の1)を占めています。
BtoBにおける高シェアの工業製品を作る会社や、システムを提供する会社にとって、収益源は販売だけではありません。
保守や修理も収益源となります。
(キーエンス(6861)やファナック(6954)も同様かと思います)
次に中央のグラフ。
地域別の売上高構成比では日本が64%、米国が22%、欧州・アジアで14%です。
まだまだ国内売上高比率が高いですが、今後は海外シフトを加速させるんじゃなかろうかと。
ちなみに海外拠点はこんな感じです。
統合報告書にもこのような記述があります。
次に、それぞれの製品群に関する数字を見ていきます。
(字が小さいですね。すみません)
製氷機は国内シェア約6割。
海外売上高比率は約7割に達します。
同様に、冷蔵庫の国内シェアは約5割、海外売上高は約4割。
食洗機は国内シェア約5割。海外売上高比率は約3割です。
この他、特に目を引くのが、お茶や生ビールなどのディスペンサーで、国内シェアは約7割、海外売上高比率にいたっては約8割と高いです。
先程ご覧いただいたとおり、全体的な売上高構成比は7%ですから、この商品は海外が主であることがわかります。
次に事業戦略についてです。
国内から。
国内においては、飲食向けだけでなく、「飲食外4領域の攻略強化」として、
飲食外向け事業の拡充を目指しています。
飲食向けだけだと成長余地があまりないと思われますのでいい戦略だと思います。
ちなみに飲食外市場は、
・コンビニ、スーパーなどの流通販売業
・飲料、酒類製造業
・加工販売業に係る施設
・農業、漁業、運輸業などの基幹産業に係る冷蔵倉庫、保管庫
・病院、福祉施設などの調理室
とのことです。
そう考えると国内もまだまだ成長余地がありそうですね。賢いなー。
次に海外。
こちらは、M&Aや地域別で適切な戦略を採りながら成長機会を追求する方針のようです。
高品質という、日本の製造業の良さと、M&Aによるシナジー創出により今後も成長しそうです。
M&Aについてはこんな記述があります。
ホシザキグループの「M&A5原則」とあります。
①営業利益率10%以上
②優秀な経営者のいる企業
③シナジー効果の見込める企業
④売上高数十億円以上の規模の企業
⑤上昇志向のある企業
簡単に言うと、“現状において、既に”いい企業を買う方針です。
ニデック(旧日本電産(6594))のM&Aにおけるそれとは対象的ですね。
あと、ホシザキと言えば営業です。
私の住んでる田舎でも営業車をよく目にしますね。
営業支援システムを2020年に導入し、効率化を図っているそうです。
加えて、サポート体制について。
丁寧なアフターフォローに留まらず、なんと厨房も設計しているそうです。すげぇ。
しかも同社の製品と他社仕入商品を組み合わせて付加価値の高い厨房をプランニングしているようです。
「ホシザキに訊いたら解決する」という流れが定着したら強みになりますね。
「需要を新たに創り出す」という手法はキッコーマン(2801)の時にもありましたね。
(醤油を知らない米国において、現地でレシピを作成し、自社商品を提案する)
イケてる企業は需要を創り出すのが上手いです。
(これ、個人でビジネスする時のヒントになりそう…)
こんな記事がありました。
私は非会員なのでこの先はわかりませんが、要するに「厨房をDXする」ということかと思われます。
この会社、やはりただの冷蔵庫屋さんではないです。
また、同社はESGにも力を入れています。
海外ファンドが株を買うということは、このあたりの取組みにもキラリと光るものがあるのではないかと思われます。
次は財務・資本戦略について見てみましょう。
まず、同社の状況ですが、売上高は増加傾向ですが、2016年から販管費増により成長率は鈍化しています。
コロナ禍での需要減、また、それに伴う設備投資やM&Aなどの資金支出減少により売上高、売上高営業利益率は顕著に低下し、
バランスシートは拡大、預金残高が増加したため、資本効率を示すROEも低下しています。
そして、今後の5年間においては、成長投資への充当することが書かれており、既に海外においては、CCCを意識した経営による効果が出ているそうです。
ROE12%というはっきりした目標を設定しているところに同社の気合いが感じられます。
(キャッシュリッチよりも資本効率。米国企業みたいです。)
ところで、業務用厨房機器の世界市場シェアってどんな感じなんでしょう?
コロナ前の2019年のデータを拾ってきました。
ホシザキは世界市場シェア2位につけてます。
1位から3位までは僅差ですね。
とりあえず、一社のとんでもないモンスター企業が支配しているという構図ではなさそう。
1位のミドルビー(MIDD)は米国株クラスタではそれなりに名が知れていますね。
長期投資家として有名な奥野一成氏が率いるNVIC(農林中金バリューインベストメンツ)の2022年6月末のマンスリーレポートにはこのような記述があります。
(以下12枚の出典 ja-asset.co.jp )
要点をまとめます。
業務用厨房機器の業界において、
冷=守、熱=攻であると規定した場合、
・ホシザキは「守」であり、“守りを高める”ため、営業、サービス部門の人員が多く、その守りの高さ(ネットワーク)による信頼性が競争優位の立場を築いている。
・「守」と「攻」では、提供する付加価値が違うため、研究開発費は「攻」の方が高くなり、営業利益率も同様である。
(「守」のホシザキの営業利益率は相対的に低い)←それが悪いわけではありません。「守」の企業として、そういう特徴があるということです。
・業務用厨房機器は、業務の性質上、安全性・安心感が重要であるから、寡占化しやすい業界構造である。(構造上の強み)
業務用厨房機器について、「守」と「攻」という発想で捉えることは新鮮でした。
やっぱりプロの長期投資家は違いますね。
いい勉強になりました。
さて、ここからは直近の四半期決算資料を見ていきます。
決算概要です。
国内→売上高・営業利益ともにコロナ前の2019年を上回る。
海外→米州の業績改善により、増収増益。
前四半期で為替差益は43億あり、当四半期は2億。
しかし経常利益は前四半期比10.9%の増益。
地域別売上高の前四半期比は以下のとおり。
割合はそこまで大きくは変わりません。
規模が大きくなっています。
連結売上高増減要因を見てみます。
主力の製氷機、冷蔵庫が大きく寄与しています。
次は連結営業利益の増減要因。
為替影響が小さくなりました。
販管費が大きく感じますが、このグラフだけでは比較できないので何とも言えません。
次に先ほどのものを国内と海外に分解します。
国内の増加分が海外のそれを上回っています。
以下は参考資料です。
大手チェーン店における店舗数の減少は、コロナ前からのトレンドであったことがわかります。
一方、売上高は、コロナ前は横ばい、以降は増加傾向です。
つまり、コロナ禍で、力のない個人経営や小規模店舗の力が削がれ、大手チェーン店が強くなっている状況であると想像できます。
コロナ真っ只中の2020年、ファストフード一人勝ちの状況がよくわかります。
翌年は多くの業態で回復していますが、お酒を悪者にしたコロナ対策(皮肉です)により回復は遅れています。
売上高↑、営業利益↑、経常利益↓、当期純利益↓の予測。
売上高も営業利益も増加予想なのに、なぜ経常利益は減少予想なのかと思いましたが、前期で外貨預金の為替差益が大きく計上されていたことの反動のようです。
本業に係る部分ではないので問題視する必要はありません。
ここからは直近決算のPLとBSを見てみましょう。
まずはPL。
前四半期比で
売上高営業利益率は10%→13%にアップ。
売上高経常利益率は16%→14%にダウン。
為替差益が原因です。
とはいえ利益率は二桁ですから悪くはありません。
サービスや保守のネットワークを全国で展開させていますから、人員がそれなりに必要なのにも拘らずです。
次、BS。
安全性分析をします。
流動比率は322%です。高っ!
短期的には問題なし。
固定比率は35%です。
製造業ですから工場、研究施設、営業所や営業車などの固定資産が多そうな感じですが低値です。
となると考えられるのは、自己資本(株主資本)が多いというパターンです。
続けてみていきましょう。
固定長期適合率は32%です。
低い方です。
長期的な安全性もしっかりしています。
負債比率は47%です。
こちらも問題なし。
自己資本比率は65%です。
高い方です。問題ありません。
…やはり自己資本が多かったパティーンでしたね。
次にCFの推移です。
営業CFを見ると2022年12月期に大きく減少しています。
原材料費の高騰などでの費用増です。
ここ2年は投資CFがプラスに振れていますから投資にお金を出していないことがわかります。
財務CFはここ5年間マイナスに振れていますので借入金の返済を実施していると考えられます。
また、現金及びその等価物の増加がすごいですね。
自己資本は多いですがフリーCF(自由に使えるお金)はあまり多くはありません。
営業CFの改善が望まれます。
ここからはこの企業の財務面について、irbank様のお力をお借りして(笑)長期で見てみます。
まずは利益率から。
リーマンとコロナの時は下がってはいますが、基本的に利益率は大きな波はなくだいたい一定だなという印象です。
次に効率性。
統合報告書にてROE12%以上を目標とすることが記述されていましたが、コロナ前の水準を上回る値であることがわかります。
現状、まだまだ遠いですね。
次、回転期間です。
統合報告書によると2021年から海外事業のCCCを見直した的な記述がありましたが、
その年から一気に改善されています。
しかし、その他の回転期間が増加傾向ですから、各種の資産や債務の、収益までの期間が長くなっていることが読み取れます。
ここが今後改善されたら利益率も上がるでしょう。
次、短期的安全性。
流動比率、当座比率とも増加傾向ですので短期的な安全性は年を経るごとに高くなっています。
次は長期です。
表中、全てにおいて増加傾向です。
長期的安全性も年々高くなっています。
短期的安全性と同等の傾向が見られます。
安全性が高まっているので、“守備力”は高いのですが、その代わり、“攻撃力”が伸びていない。(ROEの低さ等に表れる)
そこをリスク取って“ガンガンいこうぜ”にしようと現経営陣は考えているわけです。
(雑な言い方をすると、日本的経営から米国的経営へのシフトです)
米国株クラスタで有名な企業の多くはROEが高いですよね。
次、価値算定
ここ5年くらいは株価は割高水準ですね。
過去10年で見ると、割安になったら株が買われるという流れが繰り返されています。
つまり、そういう企業だということです。
次は株式指標です。
PERもPBRも日本のよくある大企業の感じはなく、割安とは言えません。
株が買われています。
最後にEPS(一株当たり当期純利益)とBPS(一株当たり純資産)です。
EPSはコロナで大やられしていますが、長期的には両者ともしっかり伸びてきています。
株式の価値は年々上がっていますから、買いが入るのも頷けます。
次、配当推移です。
確認できる限り、減配はありません。
据え置きか増配です。
配当利回りは高くはありません。
配当性向はここ数年は高いですがまだ余力はありそうです。
総還元額は増加傾向です。
株主還元に対する姿勢はポジティブですね。
結論
私なりにこの会社の特徴を列挙してみました。
①「冷」の分野で世界シェア上位
→世界中に拠点→リスク分散
②きめ細やかな営業ネットワーク・保守
→CS向上、それによる寡占化。
→他社の機器を含めた厨房機器レイアウトの提案がもたらす信頼感。
③飲食外市場への進出
→コロナで露呈した飲食リスクの低減を目指す。
④良好な財務
→守備力高め。今後は資本効率の向上が望まれる。
⑤ESGへの注力
→自社製品等に関連した気候変動への取組み。
株価的にはどうでしょう。
2023年6月1日終値です。
長期で見ると高値圏です。
上に抜けるか、三角保ち合いの中に収まるか…面白い位置ですね。
過去5年で見てみます。
高値で一旦跳ね返されています。
私が買うとしたら、もう少し返されるのを待って押し目を狙いたいですね。
(投資はあくまで自己責任で)
ではでは、今回はこのへんで。
あざした。
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