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僕はイッチーに向き合えない


イッチーという2歳下のデザイナーがいた。
どことなく気に食わなくて。
どことなく憎めない。
僕と同じくらいホラ吹きで、
僕と同じくらい見栄っ張りで野心家だった。
その頃僕らはすごいメジャーな仕事がホイホイやって来て
僕はデザインを彼にやってもらったし
彼はCGを僕に頼んできた。

今思えば少しは認め合ってたのかな

イッチーが事故で壊滅的な障害を負った。
生きてるとのニュースを聞いて退院した彼と電話した。

僕は話しているうちに涙が止まらなくなって
もういっしょに渋谷を歩いたり
もういっしょに麻雀したり
もういっしょにハワイで馬鹿笑いしたり

そんな日はもう二度と来ない

なぁイッチーごめんな
俺はイッチーが困ってたり、
孤独だったりするのもわかるんだ

でもイッチーごめんな
あれから何年もたったけど
俺は現実を見れないよ
ほんとごめんな

ほんとは駆けつけて、励ましたり
話し相手になったりしなきゃいけないのかもしれないけど

ごめんな
俺はたぶんイッチーの事を自分の事のように感じてしまって
まっすぐ見れないんだ

人は必ず死ぬ。人は必ず壊れていく
そんな事はわかっている。
でもきっとイッチーの気持ちを想像すると
涙で何も行動できなくなるんだ

イッチーという2歳下のデザイナーがいた。
たぶん僕は彼と過ごした日々が好きだった

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