【映画】「Eggs 選ばれたい私たち」感想・レビュー・解説

全体的に感じたことは、テーマが全面的に表に出すぎていて、ちょっと違和感を覚えるシーンが多いと感じた。

映画のテーマ自体は、男の僕には興味深いものだった。「卵子提供」という言葉そのものはなんとなく知っていた気でいたけど、それがどういうものなのか具体的に知る機会はなかったので、卵子を提供したいと考える様々な動機も含め、興味深いなあと感じる部分は結構あった。

特に、「自分は結婚するつもりも子供を産むつもりもないけど、子供を産まないことで後悔するかもしれない。そういう時に、自分の血を分けた子供がこの世界のどこかにいるんだ、と思えることで、その後悔を薄れさせられるんじゃないか」という考え方は、「性別・女性として生きることの呪縛」みたいなものを端的に言い表している感じがして、なるほどなぁと感じさせられた。

ただ、「性別・女性として生きることの呪縛」みたいなものを、短い時間(この映画は70分)の中に詰め込んだために、ちょっと現実味から遊離してしまうような感覚もあった。

特に、同性愛者として生きることの難しさを描く描写は、ちょっとあからさま過ぎるというか、リアリティを感じにくい気がしました。もちろん僕は、同性愛者の実情を何か知っているわけでもないし、僕の頭の中にしかないそのイメージこそがリアリティを欠いているだけなのかもしれないけど、実際に同性愛者として生活している人がこの映画を見て、「そうそう!」と共感できるものに仕上がっているのか、というのは疑問ではないかと感じました。

同性愛や30歳という年齢、結婚・出産する友人などなど、「女性として選ばれるかどうか」を中心にテーマが盛り込まれるのだけど、それらがあまり上手く調和しているとは僕には感じられず、素材だけ大皿にボンボンボンと並べられているような、そんな印象でした。

また、「卵子提供ドナー」への登録者がどの程度いるのか分からないけど、ドナー登録に年齢制限があること(20歳~30歳)や、実際に卵子提供するとなればマレーシアかハワイに2~3週間滞在しなければならないなどハードルが高いので、数としてはそこまで多くないと思う。

その場合、「たまたま従姉妹が卵子提供ドナーの現場ですれ違って久々に再会する」という冒頭も、ちょっと無理があるよなぁ、と感じてしまう。まあこれは設定上仕方ないのかもしれないけど、もう少しうまくやれるのではないかとも感じた。

全体的に、もうちょっと上手く作ってほしかったなぁ、と感じてしまう作品でした。

ただやっぱり、男には知り得ない話もちょいちょい出てきて、例えば「女性が生理用ナプキンを1日4回も替える」っていうのは正直この映画で初めて知りました(生涯で生理用ナプキンに幾らお金を使うのか、という計算をする場面がある)。そう考えるとホント、出産を考えていない女性にとっては、生理というのは「無駄」でしかないよなぁ、と改めて実感させられました。

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