【映画】「蒲田前奏曲」感想・レビュー・解説

内容に入ろうと思います。
この映画は、「蒲田マチ子」という女優を主人公としつつ、4人の監督がそれぞれ撮った4つの映画を合わせて1つの長編作品として打ち出している作品です。

「蒲田哀歌」
弟と同居し、町の中華料理屋で働きながらオーディションに通う蒲田マチ子。オーディションでちょっと変わった監督から気に入られたり、弟が家でカメラを回しながら自分のことを撮ったりしながら、彼女はいつもの日常を過ごす。弟に彼女が出来たとかで、その彼女と一緒にバイト先までやってきた。看護師で、明るい感じの女の子だが…

「呑川ラプソディ」
大学時代の友人5人と久々の女子会。みんな変わってるようで変わってない。帆奈はキャリアウーマンとしてバリバリ働き、琴子も残業ばかりで彼氏もいない。静は結婚し専業主婦。遅れてやってきた麻里に人生初の彼氏が出来たかどうか聞こうと盛り上がっている。
しかし、そんな麻里が来月結婚するという報告をしたことで、不穏な空気が流れる。麻里が、既婚者である静には相談していて、独身の3人には付き合っていることさえ話をしていなかったからだ。空気を変えようと、マチ子は近くにある蒲田銭湯にみんなで行こうと提案するが…。

「行き止まりの人々」
マチ子は、主演が決まったが、そのプロデューサーからレイプされそうになる。MeTooを題材にした映画のオーディションで、そのエピソードを話した。同じオーディションにいた黒川は、クラブで声を掛けてきた男がタクシーの中で身体を触ってきたというエピソードを話すが、そのエピソードはなんと…。そのまま、黒川を男役にして演技が始まるが、監督の間島の演出に苛立ちを隠せなくなり…。

「シーラカンスはどこへ行く」
これはちょっとよく分からなかった。

というような話です。

全体的には、なかなか面白かったなぁ、という感じでした。

冒頭の「蒲田哀歌」は、正直なところ意味はよく分かんなかったんだけど、でも好きな雰囲気でした。弟の彼女役の女優さんが結構良い雰囲気の人で、こういう雰囲気の人がこういう振る舞いをするなら成立するなぁ、という感じの映画でした。マチ子とその彼女の取り合わせがなかなか良かったです。弟役の役者さんも、結構良い雰囲気で、ストーリーというよりは全体の感じが好きな映画でした。

「呑川ラプソディ」は逆に、ストーリーや展開的な部分が面白いと思いました。何よりもやっぱり、伊藤沙莉が絶妙な役どころで、5人の女子会の空気を常に帆奈(伊藤沙莉)が変えている、という感じでした。ホントに、「絶妙!」って感じの立ち居振る舞いで、正直帆奈は、近くにいたら遠ざかりたくなるようなタイプの女性ではあるんだけど(笑)、遠目で見ている分にはいくらでも見ていられる感じの女性です。

短い物語なのに、冒頭の女子会から、後の銭湯の場面で、関係性に大分大きな落差があって、女性の「見せている部分」と「本当の部分」の差みたいなものを上手く描いている感じがします。外から見ているだけなのに、なんだか自分までザワザワしてくるみたいな、凄く上手い描き方をしている気がしました。

「行き止まりの人々」は、設定の妙という感じがしました。上記の内容紹介では伏せたけど、こっちでは書いてしまいます。ネタバレになりますけど、「MeTooの映画を撮ろうと思っている監督自身がバリバリセクハラをしてる」っていう状況下で、「そのセクハラをバリバリしてる人間が、セクハラをするプロデューサー役の黒川(黒川は女性だけど、役柄としてはプロデューサーは男性)にセクハラする男性に関する指導をする」っていう、なんだか色んなものが捻じ曲がっている設定が絶妙で、その世界観の中で、マチ子と黒川が良い味を出している感じがしました。カメラを回していた人も、良い雰囲気出てました。

最後の「シーラカンスはどこへ行く」は正直、途中ちょっと寝ちゃったくらいよく分かんなくて、ちょっとなんとも言えません。面白いな、という瞬間はあるんだけど、全体としてはちょっとどうもなぁ。

という感じです。全体としては、結構満足な映画でした。

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