【映画】「ブロークバック・マウンテン」感想・レビュー・解説

内容に入ろうと思います。
1963年、仕事を得に来たジャック・ツイストとイニス・デルマーの二人は、共に森林局が管理する野営地で放牧されている羊を管理する仕事に就いた。ずっと山で過ごし、羊と共に眠る。彼らは、豆ばかりの食事に不平を言い、時に凍えながら眠り、喧嘩することもありながら仕事を続けていく。
ある夜。ジャックがイニスの手を握ったのをきっかけに、二人はセックスをする。お互いに惹かれ合っていることに気づいていながらも、男同士の恋愛など認められない時代、気づかないフリでやり過ごすしかなかった二人の関係が、そのことで一歩前進してしまった。
二人は時折体を重ねながらも、山での生活を終えた。山を降りる少し前殴り合いの喧嘩をしてしまった二人は、このまま二度と会わない可能性もあった。
イニスは予定通り、付き合っていたアルマと結婚、子どもをもうけた。ジャックは、ロデオで賞金稼ぎをしながら、バーで出会った女とセックスをし、子どもが出来て結婚した。
二人の人生はその後、4年間も交わらなかった。お互い、それぞれの結婚生活を送り、それなりに不満を抱えながら、それでもこの人生しかないのだと納得しながら日々を過ごしていた。
ある日、ジャックから手紙が届くまでは…。
というような話です。

全体的に静かに展開していく映画で、ここ!というような盛り上がりがあるわけではありません。淡々と、熾火のように静かに燃え続ける恋情みたいなものをベースにしながら、ままならない人生を描いていく映画です。

この映画は、ある程度時代背景的なものを抑えておかないと受け取るのが難しいかな、と思ったりしました。

1960年代のアメリカにおいて、同性愛というのがどういう扱いだったのか、という漠然とした知識は要るような気がします。映画の中での描写としても、まあ普通には認められない、あり得ないことだという受け取られ方をしているんだろうという感じはしたんだけど、映画全体はジャックとイニスの描写がメインだったので、社会的に同性愛がどう扱われていたのかということはハッキリとは分かりませんでした。

日本においては、同性愛っていうのは、またちょっと違う歴史があると思うんです。衆道と呼ばれている時代もあったし、明治時代とかに同性愛が当たり前に存在していたみたいな本も読んだことがあります。もちろん、昭和に入ってから一転嫌悪されるようになったんでしょうけど、またBLというような形で同性愛が(現実的なものとしてではないだろうけど)受け入れられつつあるでしょう。アメリカでは、同性愛というのがどんな歴史を辿っているのか、そういう方面の知識には明るくないので、その辺りのことをちょっとでも知ってる方が、見方は変わって来るんだろうなと思いました。


ジャックとイニスは、言葉でのやり取りがあまり多くないので、彼らの言動や感情の変化が捉えにくいなと感じる部分もありました。そもそも、何故セックスに至ったのかも唐突だなと思ったし(まあそういうものなのかもしれないし、それがリアルっぽさを生み出しているということもあるでしょうが)、何故殴り合いの喧嘩に至ったのかもよく分かりませんでした。

僕らは人生を一つしか選べないから、選ばなかった人生がどうなっていたのかは、永遠に想像の内側に閉じ込められることになります。ジャックにしてもイニスにしても、一つ一つの決断が正しかったのか、どこかで別の決断をしていたらどうなっていたのか、様々に考えただろうと思います。静かに展開されていく物語の中で、そういう葛藤が時々ポンと浮かび上がってくるところは、良かったなと思います。

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