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遺伝子操作は果たして福音なのか -遺伝子操作における倫理についての文献レビュー-

デザイナーベビーの発表 

2018年11月28日、衝撃的な事実が香港大学で発表された。中国の生物物理学者、賀建奎(フー・ジェンクイ)は、ゲノム編集を行った受精卵から双子の女児が誕生したと明言した。
その内容はHIV耐性をもつ子どもを誕生させることを目的とした遺伝子操作であると発表。
しかし、彼は後に懲役3年の実刑の判決を下され、一連の出来事は社会に大きな問いを投げかけることとなった。(※下記、画像はイメージ)

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遺伝子操作の倫理について文献調査

今回、文献データベース「J Dream」より遺伝子操作の倫理について述べられた文献を検索し、ヒットした文献より受精卵や胚などに対する遺伝操作の倫理について文献レビューを行った。
検索キーワードは「遺伝子操作 and 受精卵 and 倫理」とし、検索しヒット73件より2005年以降に限定し、さらに会議録を除いた20件を対象とした。

否定的な文献、または展望を示した文献が散見

受精卵や胚などに対し遺伝子操について主に否定的な内容を示した文献は6件、現状について提示した文献は8件、可能性や展望を示した文献は6件であった。


筑波大学の高橋智は

「ヒト胚に対するゲノム編集の臨床応用を実施することは,多くの科学的・医学的問題点が残されていると同時に,倫理的および社会的な議論は十分なされておらず,現在はヒト胚に対するゲノム編集の臨床応用を実施できる状況にない」(注1)

と述べており、臨床領域での遺伝子操作は禁忌であることを示す内容であった。

東京大学の内山氏はゲノム編集対する日本人の態度を明らかにし、「日本人が一般的に疾患関連遺伝子に対するゲノム編集の使用を受け入れていることを示したが,多くがリスクについて関心を示した」(注2)としている。

このことは国内において遺伝子操作をより深く認識するために、技術についての説明の機会が必要であると考えられる。
また、現在日本においてはゲノム編集に対する議論は乏しいとされており、大きな倫理的課題があるとともに、日本特有の倫理制度の課題が浮き彫りとなった。

引用

注1 :高橋智, 血液フロンティア, 「ゲノム編集技術の基礎と応用 3.胚のゲノム編集とヒトにおける倫理的課題」
注2 :UCHIYAMA, Masato Journal of Human Genetics, 「日本の一般大衆における生殖系列ゲノム編集の認識に関する調査」



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