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〈19〉葬式仏教からシフトを

※文化時報2021年10月25日号の掲載記事です。

 10月10日より「文化時報 福祉仏教入門講座」の第2期が始まった。多数の皆さんにご参加いただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいである。

 多くの寺院は、明治維新や先の大戦など社会の急激な変化にも柔軟に対応して、現代まで継承されてきたことと思う。現在、わが国ではかつて経験したことのない超高齢社会を迎えている。この社会情勢の変化にも柔軟に対応していくために、宗派の垣根を越えて知恵を出し合っていきたいと考えている。

 筆者は、そのヒントが福祉にあると訴えてきた。江戸時代以降、寺院は「先祖供養」を担うことで維持されてきた側面がある。それが「葬式仏教」と揶揄されるゆえんになっている。「先祖供養」は、これからも寺院の大事な仕事として残ってはいくだろう。

 しかし、人口ピラミッドが、富士山型(若い世代の人口が多く年齢が上がるごとに少なくなる形)から棺桶型(高齢者が膨らみ年齢が低くなるほどしぼんでいく形)へ移行していることを忘れてはならない。それは、「高齢者介護」に膨大なコストがかかるため、その次の「先祖供養」にまで回せるゆとりが家計になくなることを意味している。

 その現実を見ずに、昭和のままの布教スタイルでは、寺院は衰退する一方である。今こそ、葬式仏教から福祉仏教へのシフトを強くお勧めする。

 では、どうやって「福祉仏教」を実践していくのか。一律に「こうすればいい」という答えがあるわけではない。地域の事情や各寺院のキャパシティーによって答えは変わってくるだろう。

 文化時報は、前に進むための地図とコンパスを提供するのが使命だと考えている。しかし、主体はあくまで各寺院、各僧侶であることはご留意いただきたい。

 幸いにして、医療福祉の専門職から仏教への期待が高まってきている。それは本紙でもたくさん報道されている。小欄でも具体的な事例の紹介を続けていく。ご質問やご意見も大歓迎。活発な議論ができればと期待している。(三浦紀夫)

 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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