見出し画像

〈24〉弱点を隠さない管理者

※文化時報2022年1月11号の掲載記事です。

 ちょうど1年前「今年を福祉仏教元年に」と願ってこのコラムが始まった。文化時報社は「福祉仏教入門講座」を開講し「一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室」を設立した。後に元年と呼ばれる下地はできたと思う。これからもっともっと活性化するように啓蒙を続けていきたい。

 昨年の最終号となった本紙12月20日号に、筆者が代表理事に就任した聞法道場「安住荘」(大阪市平野区)の記事が掲載された。50年前に篤信の門徒が建設した会館を、福祉仏教の拠点として再活用しようと考えている。毎月開催される聞法会はそのまま継続し、同じ建物内で障害者作業所を運営しようという試みだ。

 経緯やビジョンはすでに報じられている。このコラムの読者諸氏には、もう少し突っ込んだ話を紹介したい。

 作業所の管理者・田仲智香子さんは、自らも障害者手帳を持っている。外部の団体から「障害者手帳を持っている人が管理者なんておかしいのでは」という疑問を投げ掛けられたこともある。しかし、「苦手な部分を誰かが補うことで長所が生かされる。田仲さんの持つ長所は、利用者を笑顔にする。他に代わりがいない優秀な管理者である」と、運営するビハーラ21の杉野恵代表理事は断言する。

 障害福祉サービスである以上、職員と利用者という区分はある。でも、その区分は他の事業所に比べてはるかに緩やかであろう。一方的に誰かが誰かを支援するのではなく、お互いに助け合い、支え合う姿勢が強い。「地域共生社会」を具現化するとこうなるのではないだろうか。

 田仲さんは同僚から誤解を受けることもしばしばあった。それが、管理者になったことでみるみる成長した。自分の弱点を隠さず助けを求めることで周りの人が動く。周りの人の中には、中程度の知的障害者らも含まれる。そんな場を、田仲さんは見事につくり上げた。当人にそんな意識はないかもしれないが。

 手前みそで申し訳ないが、「世間の物差し」に合わない管理者が他にもいるので、次回以降も紹介したいと思う。今年もお付き合いのほど、よろしくお願いします。(三浦紀夫)

220111福祉仏教の現場から

作業所の管理者を務める田仲さん(右端)。自身も障害者手帳を持っている
 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。21年には一般財団法人安住荘の代表理事に就任した。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
【サポートのお願い✨】
 いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 私たちは宗教専門紙「文化時報」を週2回発行する新聞社です。なるべく多くの方々に記事を読んでもらえるよう、どんどんnoteにアップしていきたいと考えています。

 新聞には「十取材して一書く」という金言があります。いかに良質な情報を多く集められるかで、記事の良しあしが決まる、という意味です。コストがそれなりにかかるのです。

 しかし、「インターネットの記事は無料だ」という風習が根付いた結果、手間暇をかけない質の悪い記事やフェイクニュースがはびこっている、という悲しい実態があります。

 無理のない範囲で結構です。サポートしていただけないでしょうか。いただければいただいた分、良質な記事をお届けいたします。

 よろしくお願いいたします。

サポートをいただければ、より充実した新聞記事をお届けできます。よろしくお願いいたします<m(__)m>