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〈12〉初心に返る勤行

 ※文化時報2021年6月28日号の掲載記事です。

 今月15~16日、京都・東本願寺同朋会館にて「ビハーラネットワーク奉仕団」が開催された。年に1度、真宗大谷派に有縁の「福祉仏教実践者」らが集まり情報交換をする。京都府には緊急事態宣言が発令中であったが、今年も開催できたことに心より感謝している。

 筆者がこの集まりに初めて参加したのは、2007年のことである。「ビハーラ」という言葉をその時初めて聞いた。すぐに意味は分からなかったが、何となく「光」が見えた。自分が進んでいく道が開けたように思ったのだ。

 同朋会館は、全国から集まる真宗大谷派のご門徒さんのための研修会館である。また、大谷派教師資格を得るための修練でも使われている。

 3階の講堂で夕事勤行がある。勤行の調声(全員の前に座り最初の一句を発声する人)は、僧侶が勤めるとは限らない。筆者が初めて参加した時は、地方から出てきた高齢女性だった。

 その高齢女性の発声を合図に、100人以上の僧侶と一般の人が正信偈を唱和する。度肝を抜かれた。勤行本は手にあるが、独特の節がつく正信偈を口にするのは難しい。「唱和できるようになりたい」と強く思った。

 もう一つ驚いたことがある。僧侶と一般の人が区別なく座っていたことだ。しかもバラバラ。整列など関係なしであった。今となっては見慣れた光景だが、その時は大変な衝撃だった。筆者が「福祉仏教」を実践する最初の一歩はこの日だったと認識している。

 今年の「ビハーラネットワーク奉仕団」は、他のグループが全くいない状態であった。緊急事態宣言中だったので当然だろう。講堂に帰ってくるたびに、最初の一歩を思い出す。年に1度ここに座り原点を振り返る。

 廊下にこんな言葉が張られていた。「地獄を嫌う心が 地獄を造っていたのです 安田理深」

 福祉現場には「老病死」を「嫌う心」がいっぱいある。その心が「老病死」をつくっているのかもしれない。そんな言葉を伝えるために聞法を続けようと思う。その言葉を待っている人が、福祉の現場にはたくさんいるのだ。(三浦紀夫)

 三浦紀夫(みうら・のりお) 1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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