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〈7〉地域共生社会に僧侶も参加しよう

※文化時報2021年4月5日号の掲載記事です。

 2017年2月、厚生労働省は「『地域共生社会』の実現に向けて」というビジョンを発表した。「縦割り行政」や「支援する側・される側」の垣根を低くして、共に支え合う社会を目指そうというものである。高齢者の人口がピークに達すると予想される「2040年問題」を見据えてのことだ。

 「介護保険制度で地域コミュニティーを壊しておいて、今さら何だ」と憤る自治会関係者も少なくない。デイサービスの拡大に伴い、高齢者の社交場が町内から消えたことを指しているようだ。筆者の祖母は90歳を超えても町内を散歩していたが、晩年は「近所から縁側が消えた」と嘆いていた。おしゃべりを兼ねた休憩の場所がなくなったという意味だった。

 そんな社会構造の変化に危機感を持ち、「地域力」を取り戻そうとしている取り組みがある。地域共生ケア生野推進委員会(大阪市生野区、隅田耕史委員長)もその一つである。

 当時の大阪市では認められていなかった共生型(高齢や障害などの区別を低くした複合型)福祉サービスを実現するため、09年に結成された任意団体。現在は法改正がなされ、全国どの自治体でも認められるようになったが、同委員会は新たな課題に向けてますます活力が出てきた。20年度最後の会合で「死者の尊厳が軽んじられているのでは」という問題が議論されたのだ。

 身寄りがない人や親族が遠方に暮らす人の葬儀や納骨をどうするか。現場ではいろいろなケースに遭遇する。そこへコロナ禍がやってきたことで、行政職員や福祉関係者には心を痛めている人が多い。

 「地域共生ケアに、お坊さんなど宗教者にも、もっと参加してほしい」。そんな声も出た。筆者も同委員会のメンバーである。福祉現場に僧侶がいると役立つことがあると積極的に発言している。ほとんどのメンバーはうなずいてくれる。

 「共に生きる」ことを話し合う場に、僧侶などの宗教者がいないほうが不自然ではないだろうか? 歓迎されることはあっても、拒まれることはないはずだ。(三浦紀夫)

210405三浦さんコラム写真

地域共生ケア生野推進委員会の会合に出席した筆者(左から3人目)
 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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