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【能登半島地震】珠洲の現状知って 名古屋で「語る会」

※文化時報2024年4月26日号の掲載記事です。

 浄土宗西山禅林寺派想念寺(渡辺観永住職、名古屋市熱田区)と常福寺(秋田雄源住職、愛知県一宮市)でつくる「愛知寺院防災を考える有志の会」は13日、想念寺とオンラインで「令和6年能登半島地震を語る会」を開いた。石川県珠洲市青年団協議会に所属する3人が本音を語り、住職らとつながりのある宗内外の僧侶や檀家など約40人が耳を傾けた。(松井里歩)

 語る会は、常福寺の秋田住職が災害について各寺院で考える必要があると思ったのがきっかけで開催した。同じ一宮市出身で珠洲市に移住した中島弘人さんに相談したところ、青年団協議会の仲間たちと名古屋まで来ることを引き受けてくれたという。

 青年団協議会の副会長を務める前田能利さんは「悲観的な報道が多い印象だが、住民らは意外と気楽に過ごしている。一方で、珠洲市はまだ全体の4~5%程度しか水が使えておらず、復旧は進んでいない」と現状を報告した。

 また、震災によって人と人との結び付きが強くなり、新たなつながりも増えたという実感を伝えた。避難所であまりトラブルを聞かないのは「名前や顔の分かる関係性が、いい方に作用したのではないか」と語った。

 そのほか、地震発生直後の1月と4月に3人が撮影した写真を比べながら、被害状況の説明も行った。液状化などによって大きく隆起したり陥没したりした土地の様子に、参加者らは息をのんでいた。

葛藤「本当は出たい」

 それでも20~30代である3人は「本当は珠洲を出たい」と話す。

 神奈川県で育った前田さんは、珠洲の自然を大切に思い、どうにか復興させたいと思いながら、転職を考える気持ちもあるという。「珠洲を離れたら『あいつは裏切り者だ』と言われてしまうから、出るなら二度と戻ってはこられない」と胸の内を吐露した。

珠洲の被害について報告する青年たち

 橋本純さんは現在金沢市へ2次避難をしているが、出たい気持ちの方が強いという。「ここ数年で何回地震が起きているんだとも思うし、もしまたあれば、次は国も会社も面倒を見てくれるはずがない。親も珠洲で育ち、墓を守ってきたとはいえ、珠洲を捨てる勢いで出た方が自分は助かる。僕らの世代はみんな悩んでいるさなかだと思う」と打ち明けた。

 中島さんは、仕事の関係でしばらく珠洲に残る選択をした。「被災しても、自分たちで工夫しながら生活していく強い人の多い珠洲が、どう復興していくのかは気になる。青年団が開催してきたのど自慢大会などの行事を通して、地域に貢献したい」と前を向いた。

 終了後、秋田住職は「必要な物資を提供するだけでいいのかと改めて強く感じた」と話した。

 今後は支援だけでなく、防災・減災などの活動に取り組む。

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