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【能登半島地震】〈社説〉災害時の放送 再考を

※文化時報2024年1月12日の掲載記事です。

 まさか元日に、と不意を突かれた出来事だった。石川県能登地方で最大震度7観測した地震だ。

 石川県内では202人の死亡が確認された。避難者は一時、富山、新潟の両県を含め約3万4千人に上った。犠牲になった方々に哀悼の意をささげるとともに、被災した全員に心からお見舞い申し上げる。

 沿岸部が津波に襲われた石川県珠洲市や大規模な火災が発生した同県輪島市などで、家屋や建物が相当数、倒壊・損壊した。被害の全容が判明していない上に、余震が繰り返し起きており、冬の天候が追い打ちをかけている。被災地で救援や復旧に当たる方々は、くれぐれも気を付けてほしい。

 1日午後4時10分ごろに発生した今回の地震は、規模を示すマグニチュード(M)が7.6で、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災や2016年の熊本地震の7.3を上回った。加えて11年の東日本大震災以来となる大津波警報が発表され、緊急地震速報は何度も鳴り響いた。

 言うまでもなく、迅速かつ正確な災害報道は、人命を守るために必要不可欠である。また信仰の違いや有無にかかわらず、全国の人々が被災地の現状を知り、支援に役立て、思いをはせる上でも欠かせない。

 それでも、地震発生直後のテレビ番組が、NHKのみならず民放も各局横並びで内容を変更し、地震一色となったことは、果たして本当に良かったのか―という検証はなされるべきだ。

 番組変更によって相当な苦痛を受けた方々がいることを、忘れてはならない。特に高齢者や知的障害・精神障害のある人には、環境が変わることが苦手だったり、自分の周囲で何が起きているのか理解できなかったりする場合がある。強いこだわりがあって、予定通りの行動ができなくなるとパニックを起こす人もいる。

 自宅でくつろいでいて機敏に動けない人が多いことを念頭に、アナウンサーが「今すぐ逃げて」と声高に叫んだことは、たしかに理にかなっている。公共の福祉に資することが法律で定められている放送局が、それぞれの観点で災害情報を伝えたことは、健全な報道の証しと見ることもできる。

 だが、結果として高齢者や障害のある人々が平静さを失い、周囲が対応に追われたのであれば、二次災害ともいえる状況を公共の電波が引き起こしたことにはならないだろうか。

 被災地からそうした声が届くのは少し先になるかもしれないが、高齢の親がいる人たちや障害のある子の親たちの中には、すでに会員制交流サイト(SNS)を通じて「本人が怖くて落ち着けないでいる」などと訴えた人もいる。しっかり耳を傾けたい。

 さて、地震に伴う民放の特別番組は元日夜から2日未明にかけて順次、終わっていった。2日朝には各局が通常の編成で正月番組を放送し、画面は何事もなかったかのように落ち着きを取り戻した。

 それはそれで、節操がないといわれても仕方ないだろう。これを含めて、災害時の放送の在り方を再考する時期が来ているのではないだろうか。

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