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ネット中傷 出家し克服

天台宗心月院・髙橋美清住職

 その女性は、インターネット上の誹謗中傷やいわれのないデマによって、それまで築いてきた仕事や人間関係をことごとく失った。死のうと思ったが、全てを断ち切り、比叡山へ向かった。60日間の修行を耐え抜き、今は髙橋美清住職(56)として、人生に悩む人々の声を聴き続けている。(山根陽一)

自宅を改修、お寺に

 天台宗心月院(群馬県伊勢崎市)。髙橋住職が自宅を改修し、昨年の成道会(じょうどうえ)=用語解説=に開創した。静かな住宅街にあるこのお寺に、さまざまな悩みを持つ人々がやって来る。

 夕方の5時半に来て夜中の11時まで「死にたい」と言い続けた女性。離婚して裕福な家から追い出され「中古車に乗っている自分が許せない」と泣き叫んだ女性。髙橋住職は、そうした人々の話を聴くところから始める。

 「言いたいことは吐き出して、ここに置いて行って。ご本尊の薬師如来が全て持ち帰ってくれるから」。そう告げると、大抵すっきりした顔になって帰る。

 誰でも勝手に行ける寺ではない。まず、心月院のホームページ「諦めず生きる」からメールでやり取りする。そこで髙橋住職が個人情報を把握し、実際に対面しても大丈夫と判断してから招かれる。住所は公表していない。

 ネットで知り合うことに、慎重の上にも慎重を期すのは、髙橋住職自身がネットの誹謗中傷で苦しんだ被害者だからだ。

「世の中が、私を陥れようとしている」

 20代の頃から「高橋しげみ」と名乗り、主に競輪関連番組のフリーアナウンサーとして活躍していた。30代後半に1度、仕事関係で知り合った男性の妻から、身に覚えのない叱責や脅迫を受けて自殺を図ったことがある。この時はなんとか立ち直って仕事を続け、「北原朱夏」の名前で歌手デビューもした。

 しかし、今度は仕事関係の別の男性につきまとわれた。

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